魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica9-Aザンクト・ヒルデ魔法学院・学院祭~Festival~
†††Sideヴィヴィオ†††
9月も半ばに入った今日この頃。わたしの通うザンクト・ヒルデ魔法学院は、年に1度の学院祭を開催中です。開催される日は日曜日だから、一般の方も多く来てくれる。なのはママやフェイトママ、それにはやてさん達もわざわざ予定を空けて来てくれるから、もう張り切っちゃうのです。
「B組女子の皆さん。A組の着替えが終わりましたので、着替えの方よろしくでーす!」
「判りました。ありがとうございます!」
A組のクラス委員が知らせに来てくれて、B組のクラス委員の1人であるコロナがお礼を言った後、「じゃあ女子は更衣室に移動してください!」ってわたし達に指示を出した。
「えっと、男子は女子が全員出てから着替えてください」
「すごいわくわくするね♪」
「はい! 初めての学院祭、とっても楽しみです♪」
イクスと笑顔を浮かべ合う。1学年と2学年の時は合唱と演劇だったから、喫茶店をやるの憧れだったんだよね。それぞれ着替える衣装を手にして、わたしたち女の子だけ教室を後にしようとするんだけど・・・。教室の奥から、「はぁぁぁ~~~~」って長い溜息が聞こえてきた。
「あの、フォルセティ君・・・大丈夫?」
コロナが声をかけたのは、もう1人のクラス委員であるフォルセティだ。フォルセティも自分が担当するコスプレの衣装を手に・・・取ることなくデスクの上に置いたまま。そしてまた「はぁぁ~~~」って大きな溜息を吐いた後、「もう・・・帰っていい?」なんて言ってきた。
「始まってもいないのに帰ったらダメだよ?」
「フォルセティ。ここは男の子らしく、堂々と着ればいいのです」
「堂々って・・・。僕の衣装、女物なんだけど・・・」
「「「・・・」」」
最初はやる気を見せてたフォルセティだったけど、衣装が決まった途端にやる気が完全に消失しちゃった。
・―・―・回想♪・―・―・
「――それじゃあ・・・多数決の結果、3年B組の出し物は喫茶店ということで」
クラスメイトの意見をまとめた結果、フォルセティの言うように喫茶店になった。この学院は割と生徒の自主性を尊重していて、喫茶店の出店はわたしたち第3学年から可能になる。だからみんな、「服はどうしよう?」とか、「クッキーくらいなら作れるよ」とか、「わたしの家、喫茶店だからパフェとかいけるよ」って、わいわい騒ぎだす。
「あの、ちょっといいかな~・・・?」
「みんな、ちょっと静かに~! シスター・カヤからお話しがあるみたいだから!」
事の成り行きをずっと見守ってくれてたシスターがここに来て話に入ってきた。しかもなんだろう、なんか困ったような顔してる。みんなは一斉に口を閉じて、教壇に立ったシスターからの話を待つ。
「あの~、本当に申し訳ないんだけど、同じ学年内で同じ内容の店は2店までなんです。すでにA組、D組、E組が出店を申し出ているの」
シスターから告げられたのは、わたし達の希望を潰すものだった。第3学年の全クラスが出店するものを決めるのは、このロングホームルームになってたはず。それより早く決まってるなんて、ちょっとおかしいというか・・・。
そこからは早い者勝ちだと、不公平だ、ルール違反だ、って非難が続出。シスターは「まだ確定じゃないので、これからクラス委員の話し合いで決めようと思います」ってフォルセティとコロナの肩に手を置いた。
「「え・・・?」」
「どのクラスが何を出店するのかは、全てのクラスからの申請が揃ってからです。複数被っていた場合は、申請が揃った後での話し合いで決まる事になります。自主性を重んじる校風ですので、クラス委員の話し合いで決めてもらいます」
ということで、B組の出展内容はフォルセティとコロナの肩に託された。その後のロングホームルームは、もし喫茶店がダメだった時のために代替案を考える時間になった。そしてお昼休みに、クラス委員が集まる会議が行われた。イクスと2人でお昼ご飯を摂りながら、フォルセティとコロナは頑張ってくれてるかな~、ってお話しながら待っていると・・・
「ただいま~」
「ただいまです」
2人がお弁当箱を持って帰ってきた。談笑してたみんなが一斉に2人に注目して、「どうだった!?」って聞いた。
「結論から言うと、喫茶店は・・・」
フォルセティが溜めた後、コロナが「開けます!」って言った瞬間、「やったー!」って教室に歓声が上がって、わたしとイクスも「やったー!」ってハイタッチ。
「でも!」
フォルセティのその言葉にまた教室内がシーンとなる。わたし達の視線を一手に受けたフォルセティが「A~E組が共同で、1つの喫茶店を出すことになった」って妙なことを言い出して、そうなった経緯をわたし達に伝えた。他のクラスの喫茶店のコンセプトはチャリティバザー、目隠しテイスティング、ペナルティルーレット。ちなみにB組は何かしらのコスプレにしようかって話だった。
「コンセプトはバラバラ。でも喫茶店は同じ。それで論議しあった結果、共同で開催しようという事になったんだ」
「具体的な内容は、これからこのクラスでまとめた上で、各クラスの委員と私たちが話し合って決めます」
・―・―・終わりで~す・―・―・
他のクラス委員と話し合った結果、第3学年は教室2,5部屋分の広さを持つ特別教室を貸し切って、協同で喫茶店を切り盛りすることになった。お菓子作りが得意な子は準備室でお菓子作り。10~15人でフロア回し。残りは学院の全エリアを歩き回って宣伝だ。
「ねえ、フォルセティ。衣装はくじ引きで決まったんだし、嫌かもだけどやらないと・・・」
「フォルセティも頑張りましょう?」
わたしとイクスでフォルセティを勇気付けると、「そうだよね。女装は僕だけじゃないんだから・・・!」ってフォルセティは自分の両頬をパチンと叩いて気合を入れた。着替えを嫌がる理由がそれ。フォルセティは女の子の格好になるのが嫌で、あんなに落ち込んでた。
「じゃあまた後でね~」
フォルセティに手を振って、わたしとコロナとイクスは教室を後にして更衣室へ。空いてるロッカーに脱いだ制服を掛けて、わたしの担当するコスプレ衣装に袖を通す。胸から上の部分の無いビスチェワンピース。背中に半透明な羽を4枚。花冠を被って、髪型をなのはママみたくサイドポニーにする。
「よし、これOK♪」
「私も着替え完了です、わんわん♪」
イクスが着替えたのは狼男ならぬ狼女。ふっさふさな狼の耳の付いたカチューシャと尻尾、それに肉球の付いた手袋とブーツ。モコモコな毛皮の着いたキャミソール、丈の短いホットパンツを履いてる所為かな、ちょっと足をもじもじしてる。
「コロナは着替え終わりましたか?」
後ろのロッカーに振り向きながら、同じように着替えてるはずのコロナに尋ねる。小さなシルクハット、長いウサギ耳、お尻の方にはふわふわな丸い尻尾。モノクルと一抱えある懐中時計っていう小道具も完備。童話の白兎をモチーフにしたコスプレだ。
「おお! コロナも似合ってる!」
「そ、そうかな? ありがとう♪ ヴィヴィオもイクスも可愛いよ♪」
3人でえへへ♪って笑い合いながら更衣室を出て、他のクラスメイトと一緒にお喋りしながら教室へ。男の子がまだ着替えてる中に女の子が入らないようにドアが閉められているはずだったけど、もう開いてるっていうことは男子の着替えももう終わったってことだし、何よりクラスの男の子もいろんな衣装に着替えて廊下でお喋りしてる。
「男子の着替えはもう全員が終わったの?」
「フォルセティの着替えがまだだよ。あの衣装じゃ仕方ないと思うけど・・・」
「着るにも脱ぐにも面倒くさそうな服だったよね~」
そう言って教室の中を見た2人の男子に、「だったら手伝ってほしかったよ」って呆れた風に言いながらフォルセティが出て来た。着替え終えたその姿に「可愛い!」って歓声が上がった。
「お父さんも昔は女装させられてたって言ってたけど・・・。今ならその屈辱がよく解るよ・・・」
フォルセティが着てるのはプリンセスタイプのドレス。ティアラとかお化粧もしっかりされてる。他のクラスの子たちも、「わぁ♪」って見惚れちゃってる。
「~~~っ!・・・もう・・・やったらぁぁーーーっ! せいぜい見世物になってくるよ、こんちくしょ~!」
若干自棄気味なフォルセティはいろいろ諦めて、「はぁ~。コホン。参りましょう。祭りの始まりです」って声色や口調まで女の子っぽくして、特別教室へと続く廊下を見据えた。外回りメンバーは、来てくれた一般の方たちに渡すポイントカードやパンフレットを取りに行かないと。先に行ってるだろうクラスメイトを追って、わたし達も特別教室へ。
「あ、ヴィヴィオ! それにフォルセティ達も! おっはよ~!」
「おはよう~、リオ!」
D組のリオも自分のクラスメイトと一緒に来ていた。リオの衣装はライオンの着ぐるみ。頭の部分は被り物じゃないフード。側に居る友達らしい子たちも、頭がフードタイプの動物の着ぐるみだ。
「ヴィヴィオもイクスもコロナも可愛いー! でも一番可愛いのフォルセティだ~!」
「・・・ええ、そうよ! 可愛いでしょ!? もっと可愛いと敬え~!」
「おお! 可愛い、フォルセティ、可愛いぃ~~~!」
変にキャラ作ってるところ悪いけど、女装したからといって女の子になりきろうとしなくてもいいんだけど・・・。って言ったら、フォルセティどうしちゃうだろう。
「フォルセティの勇気に水を差すのは気が引けますので、あのままで良いのでは?」
「それはそれで後で怒られないかな~・・・?」
「まぁフォルセティは自分のした責任はしっかり自分で背負うから、笑って許してくれる・・・と思う」
それからわたし達は特別教室に入ってそれぞれの準備を始める。わたしとコロナとイクス、それにリオや友達は喫茶店で使うためのポイントカードやパンフレットを、そしてフォルセティは、係の子から「はい、スペシャルキャラのスタンプです!」って、小指サイズのスタンプを1個受け取った。
「それじゃ、気合を入れて頑張ってこう!」
「「「「おおー!」」」」
外回り組だけで校舎のエントランスへ向かおうところで、フォルセティが「じゃあ僕も行くよ」ってわたし達に手を振ってくれたから、「お互い頑張ろうね♪」ってわたし達も手を振り返した。フォルセティを見送った後は他のクラス、他の学年の生徒たちと一緒に学院前動線の両脇に待機。そしていつもは授業の始まりと終わりを告げる鐘が、学院祭の始まりを知らせるために鳴った。
「「「「いらっしゃいませ~!」」」」
†††Sideヴィヴィオ⇒フェイト†††
私たちチーム海鳴は、ヴィヴィオ達から招待されてSt.ヒルデ魔法学院の学院祭へとやって来ていた。飾りが施された正門を潜ると、吸血鬼?のコスプレをした男の子が「パンフレットです!」って差し出してくれた。
「悪いのだけど、4冊ほど貰えるかしら?」
「あ、はい、どうぞ!」
アリサが男の子からパンフレットを受け取って、私となのはに1冊、八神家に2冊、アリさとすずかとシャルに1冊と手渡してくれた。それにお礼を述べて受け取って、他のお客さんや生徒の子たちの邪魔にならないように気を付けながらパンフレットを見る。
「ヴィヴィオ達の出し物って、3年生全クラス協同で開く喫茶店だよね」
「うん。えっと、パンフレットに詳しく載ってるはず・・・」
3年生の協同喫茶は、ちょっとしたゲームを催してる。学園の敷地内に散開してる特別な衣装を着た生徒を見つけて、スタンプを押してもらう。押してもらった数だけ喫茶店でサービスを受けられる、とのこみたい。
「そのスタンプを押してもらうカードって、どこで貰えるのかな・・・?」
「3年生からなら貰えるんじゃね?」
なのはにヴィータがそう答えて、「ちょっと聞いてみっか」って仮装してる子に話し掛けようとした時、「あー!」って聞き覚えのある声が離れたところからした。そっちを見れば、オレンジ色のビスチェワンピース、半透明な羽、花冠といった妖精のような格好をしたヴィヴィオが「ママ~!」って駆け寄って来てくれた。
「「ヴィヴィオ~♪」」
「皆さんもいらっしゃーい♪」
笑顔全開のヴィヴィオがはやて達にお辞儀した後、「あ、ポイントカードです!」ってウェストポーチから2つ折された手の平サイズのカードを出した。ヴィヴィオの説明だと、1枚につき2人までサービスを受けられるとのこと。カップルのお客さんを考えての設定みたい。私となのは、アリサとすずか、はやてとルシル、シャルとシグナム、アインスとリイン、シャマルとヴィータ、アイリとアギトの7枚を受け取る。ちなみにザフィーラは子犬フォームだから必要ない。アルフやユーノも連れて来たかったけど、どっちも予定があって断念。
「それでは皆様、St.ヒルデ魔法学院学院祭を楽しんでいってください♪」
手を振ってくれるヴィヴィオに「ありがと~♪」と手を振り返して見送った後、まずはどこから行くかをみんなで話し合う。はやてが「フォルセティも今は喫茶店にはおらへんって話やし、喫茶店はお昼までお預けやな」って唸った。
「こう固まって回るより、おのおの気になったところから回るのも良いんじゃない?」
「はやてちゃん達は学院のお知り合いに挨拶に行きます?」
「そうやな~。シャマルの言うとおり先生方に挨拶でもしに行こか~」
「わたしも知り合いのシスターに顔を出しに行くよ。シグナムはどうする? 他の子に付いてく? 合流するまでカード預かろうか? シグナム、スタンプを押してもらいに行くキャラじゃないし」
「そうだな。お前に任せる」
シグナムからカードを受け取ったシャルは、「んじゃ、また後で~♪」って手を振りながら、中等科の校舎へ走って行った。そういうわけで、私たちもそれぞれ学院祭を見て回ることになった。
「じゃあ私とフェイトちゃん、はやてちゃんとルシル君で、先生方に挨拶回りに行こうか」
「「うん!」」「ああ」
「アイリ達は出店を回るね~♪」
「フォルセティ達の喫茶店でも何か頂くですから、食べすぎはダメですよ~」
私たちもシグナム達と別れて、初等科の校舎の中へと入る。活気溢れる校舎は、私たちの学生時代の事を思い起こさせる。小学校の頃の演劇や、中学校の頃の文化祭などなど。局の仕事で参加できない時もあったけど、それでも色褪せない思い出だ。
「挨拶回りついでに特別キャラを探してみようか?」
「そうやね~。先生方も仕事で校舎を回ってるやろうし、それがええやろ」
「えっと~、特別キャラの特徴は・・・」
パンフレットの第3学年の欄を見る。舞うドール。迫り来る石像。逃げ惑うミイラ。蠢くピブリオマニア。這い寄る混沌。燃えるわんこ。滑るにゃんこ。モコモコ兵隊長などなど、20人近くが学院の敷地内を歩き回ったり、特定の場所で待機してるみたい。
「本の虫っていうことは、居場所は図書館だよね」
「なんの催し物してるんだっけ?」
「作家志望の子が書いた小説の売り場があるみたい」
「へえ、面白そうだな。はやて、後で寄らせてもらっても良いか?」
「あはは、ええよ~♪」
ルシルも割と本の虫。子供の頃は仕事の合間に無限書庫に足を運んでいたし、ユーノと一緒に未整理区画の防衛機構やらトラップを潰して回っていたし。あの頃のルシルはいつも楽しそうだったな~。
「あっ! ねえ、あの子ってもしかして・・・!」
なのはの指差す方には、うろうろと走り回ってる包帯で全身を包んだ男の子が、「スタンプちょうだ~い!」って小さな子供たちに追われてた。そして「わあ! 捕まっちゃった~!」ってミイラ君は足を止めて、子供たちのカードに首から提げていたスタンプを押した。子供たちと手を振って別れると、すぐに役割に戻って辺りを走り回り始めた。
「止まらせては走らせるのはちょっと可哀想だけど・・・」
「休憩も入れてるみたいだから、そこは遠慮なくってゆうことで」
そう言ってはやてがミイラ君の元に駆け出して、「スタンプくださいな~♪」って追いかけ始めた。ミイラ君もそれに気付いて、はやてから逃げるように駆け出す。しかも割りと「走るの速くなった?」から、はやてがちょっと苦戦。
「どれ。俺も参加しようかな」
ルシルもはやてと一緒にミイラ君に挑んで、挟み撃ちにすることで「逮捕であーる♪」ってミイラ君に触れることが出来た。スタンプを押してもらって「やった~♪」って喜ぶはやてを優しい眼差しで見守るルシル。シャルには悪いけど、あの2人はお似合いだし、今もなんかカップルに見える。
「なのははスタンプ押してもらわないの?」
「ん? ん~、学院祭の売り上げっていろんなところに寄付されるっていうから、サービスもそこそこにお金を払おうかな~って」
「あ、うん、そうだね。それが良いかも」
というわけで、スタンプ集めもそこそこに、っていうことに。ヴィヴィオとフォルセティの担任であるシスター・カヤの姿を捜しつつ、校舎内を歩き回る。そんな中、「おお!」っていう歓声と一緒に盛大な拍手が耳に入った。
「あ、なのはさん、フェイトさん! はやてさんにルシルさんも! いらっしゃいです!」
声を掛けて来てくれたのは「リオちゃん!」だった。動物の着ぐるみを着ていて、とっても可愛らしかった。お友達も似たような着ぐるみを着ている。
「フォルセティなら、そこの3-B組の教室で踊ってますよ!」
「あ、リオちゃん! それは言っちゃダメなやつです!」
「ハッ! ごめんなさい、今のなしで! スペシャルキャラなんで!」
慌てて口を両手で覆ったリオだったけど、はやてが「おおきにな~♪」ってニヤッと笑った。居場所どころかスタンプを持ってる特別なキャラクターだってことまで話しちゃったリオは「あぅ~」って肩を落とした。そんなリオやお友達と別れて、私たちはヴィヴィオやフォルセティ、コロナやリオやイクスのクラスである3年B組の教室へ入る。
「フォルセティは・・・お、発見や♪」
教室の中央で踊るドレスの衣装を着たフォルセティ。相手は同じ身長くらいある二足歩行のライオン着ぐるみ?かな。衣装もバッチリ決まってるから、その光景はまさしく美女と野獣。フォルセティと着ぐるみの両手から天井に向かって糸が伸びていて、天井付近で浮遊している十字に組まれた木の棒に繋がってる。アレでフォルセティ達が人形だっていう設定を表しているんだね。周りにも小さなぬいぐるみがペアを組んで踊っているし、人形の舞踏会って感じだ。
「操作魔法かな。上手いね」
「うん。教室の壁際に何人か衣装着た子が居るから、たぶんあの子たちが操っているんだろうね」
視線をその子たちから主役らしいフォルセティに移す。ルシルが「なるほど。だからか」って何かに納得した風に頷いた。聞けば、フォルセティは学院祭の出し物が決まった頃から“ヴァルハラ”に入り浸る事があったみたい。その理由は、ダンスを教わりたい、とのことで、ルシルもダンスが得意な“エインヘリヤル”を用意していたって。
「そうなんだ~。道理でフォルセティもダンスが上手なんだ~」
「うん。本当に舞踏会みたい」
ドレスの裾やフォルセティの綺麗な銀色の髪がふわりと舞っていて、とても綺麗なダンスを魅せてくれた。そしてダンスが終わって、フォルセティ達には教室に居た私たちや他のお客さん、教室に入りきらなかった他のお客さん達から拍手が送られた。
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