| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

儚き想い、されど永遠の想い

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

335部分:第二十六話 育っていくものその一


第二十六話 育っていくものその一

               第二十六話  育っていくもの
 自らの病のことを家族に告白した真理は暫くの間平穏だった。しかし。
 その腹はだ。少しずつだった。
「大きくなってきているわね」
「そうね」
 彼女に顔を見せに来た姉達がだ。その腹を見て言うのだった。真理は今和服だ。しかしその上からだ。腹の膨らみが少しずつわかるようになってきていた。
 それを見てだ。彼女達は言うのである。
「本当に何か」
「不思議ね」
「ええ、私達はまだだけれど」
「真理さんは少しずつね」
 どうなってきているのか。二人はそのことも言った。
「お母さんになろうとしているのね」
「そうなっているのね」
「そうですね」
 真理もだ。二人の言葉に応えてだった。
 にこやかに微笑みだ。こう言った。
「私と義正さんの子供がこうして」
「育っていっている」
「真理さんのお腹の中で」
「そのことがとても嬉しくて」
 それに加えてだった。
「不思議です」
「不思議」
「そうだともいうのですね」
「はい」
 そうだとだ。真理はまた微笑んで答えた。今度は答えたのだ。
「私が。母親になるなんて」
「ですがそれはですね」
「女性なら誰でもです」
 母親になる。そういうものだというのだ。
 そのことを話してだ。そうして。 
 真理は姉達にだ。こうも言った。
「それではですけれど」
「それでは?」
「といいますと」
「お茶を」
 それをだ。どうかというのだ。
「如何でしょうか」
「そうですね。珈琲は妊娠にはよくないそうですが」
「あまり。そうですね」
「ですからお茶です」
 自分のことも考えてだ。茶にしたというのだ。
 そしてだ。その茶が何かというと。
「抹茶を」
「我が国のお茶をですか」
「それをなのですね」
「あのお茶が一番身体にいいです」
 それでその茶にするというのだ。
「ですから」
「では。真理さんの御好意に甘えて」
「私達も」
「お姉様達もですね」
 姉達にその抹茶を勧めてからだ。さらにだった。
 彼女はだ。その姉達にこうも話した。
「やがては」
「母親になる」
「私達も」
「女性は全てそうですね」
 姉達に言われたことをそのまま返した形になった。
 そうしてだ。二人に話したのだ。それを受けてだ。
 姉達も微笑みだ。こう言った。
「そうですね。それではです」
「私達もやがて」
「姉妹三人で」
 彼女自身も入れて。それでだというのだ。
「幸せになりましょう」
「母親になりですね」
「そのうえで」
「是非」
 こう姉達に話したのである。そしてそれは。
 姉の真美と真子だけでなくだ。友人である麻実子と喜久子にもだ。話すのだった。ただ話すことは子供のことだけでだ。病のことは。
 隠しそうしてだ。己の屋敷で話すのだった。
 それを聞いてだ。二人は祝福の言葉を述べたのだった。
「おめでとうございます」
「真理さんも遂にですね」
「はい、いよいよです」
 こう話すのである。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧