儚き想い、されど永遠の想い
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314部分:第二十四話 告げる真実その三
第二十四話 告げる真実その三
「苦しみもがかれたのだ」
「あの人はそうして生きられたのですが」
「だが」
「だが?」
「果たされた」
伊上の言葉がここで変わった。
「あの方は御自身の果たされるべきことを果たされた」
「そうされたのですか」
「あの人は」
「松陰先生の名前をあげられた」
奇兵隊を率いだ。戦ってだ。
「そうされたのだ」
「では僕達も」
「必ず」
「果たせる」
伊上はここでだ。この話の中で最も強い言葉を出した。
そしてだ。こうも述べたのだった。
「必ずだ」
「わかりました。それなら」
「私達も」
二人の顔があがった。こうしてだった。
二人の顔が変わった。明るくなった。その顔でだ。
伊上にだ。こう言った。
「じゃあ今から」
「真実を言ってそうして」
「二人で、何があっても」
「最後の最後まで言います」
「家族のことは気にすることはない」
伊上はこうも言った。
「信じているのだな」
「はい、それは」
「お父様もお母様も」
「兄上達もです」
「そうしたことは絶対にありません」
「人は信じていても。心から信じていても」
どうかというのだ。そうしていてもだ。
「不安になるものなのだ」
「その様ですね。どうやら」
「心の何処かで」
二人があらたにわかったことだった。これは。
「不思議なことですが」
「信頼の中でも」
「それが人間だ」
そういうものでもあるというのだ。伊上はこうしたことも話した。
「信頼と不安は隣り合わせなのだ」
「常にあるもの」
「そうですか」
「そうだ。だが信頼することは大事だ」
これはだというのだ。
「不安に打ち勝ちだ」
「それが人間というものですね」
「あくまで信頼できる相手に限るがな」
もう一つだ。人生論が出た。
「信頼できない相手もいる」
「それはどうしてもですね」
「それを見極めるのも大事だ」
「では私達の家族は」
「言うまでもない」
伊上の二人への言葉は。ここでさらに強くなった。
「二人共信じていい」
「そうですね。私達の家族には誰もそうした者はいません」
「一人も」
「わかっているがそれでも不安になる」
今度はこんなことを言う伊上だった。
「人間とは弱いものだからな」
「しかしその弱いものを知ってこそなのですね」
「人というものは強くなれますね」
「そして優しくもなれる」
二人の言葉にだ。伊上は付け加えた。
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