儚き想い、されど永遠の想い
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309部分:第二十三話 告白その十
第二十三話 告白その十
この屋敷でいることにしたのだった。その中でだ。
義正は幸せを感じながら仕事も進めていた。そうしてだ。
その中でだ。兄達にもだ。
仕事の合間に会いだ。彼女のことを笑顔で話すのだった。
「これが幸せなのですね」
「夫婦で共にいること」
「それがだな」
「はい、幸せです」
兄達に話してだった。それでだった。
兄達もだ。こう義正に述べた。
「それではその幸せをな」
「手放さないことだ」
「放さないですか」
「そうだ、絶対に放してはいけない」
「例え何があっても」
そうしろとだ。彼に言うのである。
今は三人でレストランで洋食を食べている。レタスからはじまりコーンポタージュ、それからメインでハンバーグだ。そうしたものを食べながらだ。
そのうえでだ。三人で同じテーブルにつき話しているのだ。
そのステーキを食べながらだった。義愛は義正に話した。
「幸せは手放せばそれで戻らなくなる」
「手放せばですか」
「そうだ。向こうから去っていくものだ」
それがだ。幸せだというのだ。
「人の絆の幸せはそういうものだ」
「左様ですか」
「そうだ。だからだ」
「妻とは」
「何があっても手放さないことだ」
義愛は確かな声で義正に話す。
「真理さんともだ」
「はい、そうですね」
その通りだとだ。義正もだ。
長兄の言葉に頷きだった。
そうしてだ。静かに述べたのだった。
彼はパンを食べている。丸いよく焼けたパンをだ。それと手で千切って自分の口の中に入れながらだ。そうして兄達と話をしていた。
そしてだ。今度はだ。
次兄の義智もだ。義正に話してきた。
「兄さんの言う通りだな」
「幸せはですか」
「手放したら終わりだ。しかしだ」
「しかしですか」
「持っていればそれは増えるものだ」
幸せはだ。そうしたものだというのだ。
「やがてな」
「増えますか」
「それもまた楽しみなのだ」
義智は微笑み肉を切りつつ弟に述べる。
「幸せのだ」
「幸せのですか」
「幸せは増える」
義智はまた言った。
「そういうものだということを覚えておいてくれ」
「では私達は」
「そうだな。これからは」
「幸せを増やすことだ」
兄達は共に弟に述べた。
「二人でな」
「そうするといい」
「そうですね」
義正は優しい笑みになってだ。そうしてだ。
兄達の言葉に頷きだ。彼もまた述べたのだった。
「幸せは手放すことなく増やしていくものですね」
「人は何時か絶対に死ぬ」
意識はしていないがそれでもだ。義愛は今の末弟の心に残る言葉を言った。
「だがそれでもだ」
「それでもですね」
「その限られた命の中で育んでいくものだ」
「だから義正」
またしてもだ。義智が話す。
「真理さんと楽しくな」
「そうします」
義正は兄達にも言われだ。
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