儚き想い、されど永遠の想い
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300部分:第二十三話 告白その一
第二十三話 告白その一
第二十三話 告白
真理は明るさを取り戻した。その彼女を見てだ。
婆やはまずは微笑みだ。彼女に言うのだった。
「御気持ちを取り戻されたのですね」
「はい」
真理自身もだ。微笑んでだ。
そのうえでだ。婆やにこう答えた。
「お蔭で」
「それは何よりです」
「二人でいますので」
義正とだ。そうするというのだ。
「これからも」
「そうですね。そうされて下さい」
「いられる限りは」
不意にだ。真理は。
こんなことも言った。その言葉にだ。
婆やは少し気付いてだ。こう彼女に問い返した。
「今何と仰いましたか?」
「何かとは?」
「いられる限りとは」
その言葉についてだ。問い返したのだ。
「それはどういう意味でしょうか」
「それは」
真理はここで失言に気付いた。それでだ。
戸惑いながらだ。こう婆やに答えた。
「ずっと。いたいと思いまして」
「そうした意味ですか」
「はい」
こういうことにしたのだった。咄嗟に。
「ですから」
「そうですか。そうなのですね」
「そうです。それで」
「それで?」
「今日ですが」
話を誤魔化す為にだ。また咄嗟にだ。別のことを話したのだった。
「旦那様は」
「今日は遅くなられるそうです」
「そうなのですか」
「御仕事で。大阪の政界の方々と会われるとのことで」
「だからですね」
「そうしたことも御仕事ですので」
ただ計画を立てたりそれを実行に移すだけが仕事でないというのだ。
「それで料亭に行かれるとのことです」
「神戸のですね」
「はい、八条家所縁のお店です」
その店で彼等と会ってだというのだ。
「お話をされるとのことで」
「わかりました。では今夜は」
「どうされますか?」
「待たせてもらいます」
微笑んでだ。真理は話した。
「そうします」
「ご夕食をですか」
「それで宜しいでしょうか」
「遅くなると思いますが」
婆やはこのことをだ。真理に注意して話した。
「それでも宜しいのですか?」
「はい、そうさせてもらいます」
やはりだ。そうするという真理だった。
「待たせてもらいます」
「左様ですか」
「そうします。では」
こうしてだった。真理はこの日は待つことにした。どんな状況でも義正と共の時間を過ごしたい、そう心から思ってのことだった。
そして義正は。この日の夜だ。
奥座敷にいた。そこで品のいい顔立ちの二人の老人と会っていた。
畳に掛け軸、そして見事な陶器に奇麗な花も飾られている。
その部屋でだ。彼はだ。
絹の見事な和服を着た二人の老人達にだ。こう言われていた。
「この店は確か」
「あの人も来たそうだね」
「幕末の志士のですね」
義正もだ。二人の言葉にだ。すぐに返した。
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