儚き想い、されど永遠の想い
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297部分:第二十二話 消える希望と灯る希望その十
第二十二話 消える希望と灯る希望その十
微笑みだ。そのうえでの言葉だった。
「やはり御風呂はです」
「和風ですか」
「あの檜の御風呂が」
そうなっているのだ。この屋敷の風呂は。
「とてもいいです」
「ではその檜の御風呂で」
「身体を癒してきます」
真理は答えた。
「心も」
「そうですね」
義正もだ。真理のその言葉をよしとした。
そうしてだ。彼女にまた話したのだった。その話すこととは。
「時間があれば」
「時間があれば?」
「それが零ではない限り」
哲学者を思わせる顔になってだ。そうして語る言葉だった。
「人はその時間が終わるまでです」
「それまで、ですか」
「何かをするべきです」
「では私達も」
「その時が終わるまでです」
こうだ。真理に話した。
「共にいましょう」
「そうですね。それでは」
「時間はまだあります」
二人にとってもだ。零ではなかった。義正は言うのだ。
「ではその時間がある限り」
「それまでの間」
「共にいましょう」
「はい。それでは」
「時間は。辛く過ごすものではなく」
さらにだった。義正は述べた。
「楽しく過ごすものですね」
「そうですね。それは決して」
「辛く過ごすものではありません」
今度言ったのはこのことだった。
そのことを言ってだ。義正は。
明るい笑顔になり、作ってだ。真理に顔を向けたまま。
その顔で。また言ったのだった。
「では私も後で」
「入られますか」
「そうさせてもらいます」
風呂にだ。そうするというのだ。
そうした話をしてだ。真理は。
気をそれなりに楽にさせて。そうして。
風呂に入りだ。湯舟に浸かる。その温かい湯の中で。
微笑みだ。こう呟いたのだった。
「私は一人ではない。何と有り難いことでしょうか」
義正のことを呟き。それでだった。
身体を清め心を癒してだ。風呂を楽しんだのだった。
それが終わってからだ。服を着てだ。
義正にだ。その微笑みで義正に告げた。
「次は」
「はい、それでは」
「そういえばお風呂は最初は殿方が入られるものですが」
「そうですね。そうした場合もありますね」
「それはいいのでしょうか」
「私はこだわらないです」
そうした考えはないというのだ。義正にはだ。
「特に」
「それはどうしてでしょうか」
「誰が入ろうがお風呂はお風呂だからです」
そうした考えだからだというのだ。
「ですから。誰が先に入ろうともです」
「変わりはないからですね」
「ですから」
「左様ですか」
「だからです」
義正はそれでだと話してだ。
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