FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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舞い降りた天馬
前書き
朝起きたら雪が凄すぎてビビった。
今年はこんなんばっかりだな・・・
カルディア大聖堂を目指して駆けていくグレイ、ジュビア、ラクサス。彼らは次第に大きくなってくる敵の魔力を感じていた。
「なんだ、このデケェ魔力は」
「まだカルディア大聖堂まで距離があるのに」
すでに敵はカルディア大聖堂に到着しているはず。雷神衆は戦闘こそしていなかったものの術式展開のために魔力を使用していたはず。そう考えるとかなり厳しい状況であることは言うまでもなかった。
「とにかく急ぐぞ、グレイ、ジュビ―――」
そこまで言いかけて、彼は足を止める。グレイとジュビアは突然立ち止まったラクサスを不審に思い同じく立ち止まった。
「どうした?ラクサス」
「何かありましたか?」
胸に手を当て額に大粒の汗を浮かべているラクサス。それはまるで病気にかかっているかのようだった。
「・・・なんでもねぇ、急ぐぞ」
しかし、彼は何も言わずに再び走り出す。この時グレイは彼を蝕むものに気が付いていたが、止めることはしなかった。
(1年前の・・・あれか)
そう思っただけに留め彼の後を追い掛ける。この瞬間にも、蝕む何かは確実に進行していた。
「人の世は欲に満ちている。共に食らいながら滅するがいい」
お互いを噛み合っているエルフマンとリサーナは血まみれになっていた。それを見た姉は心を痛ませる。
「ごめん、エルフマン、リサーナ」
そこで彼女はある決断を下した。2人を全力で殴って気絶させる。頭部を叩かれたエルフマンとリサーナはその場に倒れこんだ。
「これならしばらくは大丈夫なはず」
気を失っている限りそう簡単には空腹の衝動に犯されるのとはない。ミラは2人に背を向けると、いまだに力の入らない体で敵を睨む。
「優しい姉ですね。ですが、あなたの空腹はどうするのです?」
「簡単よ。あなたを倒せばいいんだわ」
目の前の術者を倒せばすぐにでも空腹から解き放たれる。仮に直らなくても、ギルドに戻り食事をすることも可能だ。
「サタンソウル・ミラジェーン・アレグリア!!」
黒のタイツのような服装、背中には羽根に見立てた触手が付いており、まるで冥府の門のキューブを思わせるような姿へと変身した。
「ほう、まだそんな力が出せますか」
冥府の門との戦いでミラジェーンはありとあらゆるものを吸収した。悪魔の力を接収できる彼女だからこそできる技。
(これは今の私の最高の力。でも、消費魔力が大きい。短時間で決めないと!!)
間髪入れずに攻撃へと移るミラ。その速度は凄まじく、一瞬のうちにラーケイドの懐に入り込んだ。
「早い!!」
「これで終わりよ」
渾身の力を込めた一撃。それはラーケイドの顔面を―――
バシッ
捉えることはできなかった。
「確かに君の力は認めよう。だが、我々を甘く見てはいけない」
休む間も無く攻撃し続けるミラ。しかしそれは全て無意味。ラーケイドの手によって完全に防がれてしまった。
「そんな・・・」
16に負けないほどの魔力を解放していたミラ。それなのに彼女は一切のダメージを与えることはできなかった。
空腹が限界に達した彼女はサタンソウルが解け、その場にへたり込むように崩れ落ちた。
「妖精機銃!!レブラホーン!!」
カルディア大聖堂では、エバーグリーンが無数の砲撃を放ち先制攻撃をお見舞いしていた。ワールはそれを避けることなく爆風の中に隠れる。
「決まったわ」
「なんだ、随分呆気・・・」
何もせずにやられたのかと思っていたが、煙が晴れて彼らはハッとした。ワールは全ての攻撃を受けたはずなのに、一切のダメージも受けていなかったからだ。
「もう終わり?」
「ナメるなよ!!」
余裕綽々の敵に腹が立ったビッグスローが追撃する。それまた完璧に決まったのだが、やはり傷1つ付けることができない。
「なんだこいつ!?」
「硬すぎるわ!!」
「眼の魔法を使うんだ!!」
2人の攻撃が一切通じない。フリードの指示により2人は目の魔法をそれぞれ解放したが、なぜか相手に一切の動きがない。
「なんで効かねーんだ!?」
通常彼らの魔法は眼鏡をかけているもの以外には全て通用することになっている。それなのに、今目の前の時を石化することも人形にすることもできない。
「アッヒャッヒャッヒャ!!機械族の俺にその程度の攻撃が通じるわけねぇだろうがよ!!」
それを聞いて3人は納得した。敵の中にいる機械族出身の魔導士。運の悪いことに、そいつがこの場にやって来てしまったのだ。
「下がれ、エバ、ビッグスロー」
前に立つ2人を掻き分け先頭に立つフリード。彼は長い髪によって隠れていた黒と白が反転した目を解放する。
「闇の文字・絶影!!」
鎧に身を包んだ姿へと変身し必殺技を繰り出したフリード。それは見事にワールを捉えたものの・・・
「ムダムダ、そんな魔力じゃ意味ねぇよ」
わずかな傷を付けただけで、倒すまでには至らなかった。
「ロックオン・・・ファイア!!」
3人を視界に捉え標準を絞る。打ち出された弾丸は雷神衆を命中した。
「「うわああああああ!!」」
「きゃあああああ!!」
たった一撃だったにも関わらず、3人はピクリとも動かなくなってしまう。それを見たワールは、退屈そうな表情を浮かべた。
「ありゃ、もう終わりかよ。つまんねぇ」
彼はまだ辛うじて息のある3人の前に立ち、片手を向ける。
「こんな奴等にやられるたぁアジィールもブランディッシュも情けねぇ。やっぱり人間はつまらねぇな」
手のひらに魔力を集中させトドメを刺そうとしたその時、カルディア大聖堂の中に落雷が落ちる。
「テメェ・・・俺の仲間に何してやがる」
顔に血管を浮かべワールを睨み付けるのは雷竜、ラクサス・ドレアー。他の者とは比べ物にならない魔力にワールは思わず笑みを浮かべた。
ドサッ
魔力を使いきったミラは、空腹と相まって視界がなくなっていた。そしてついに、エルフマン、リサーナ同様に意識を失い、その場に伏せた。
「最後の欲を刺激するまでもありませんでしたね。つまらない」
彼は妖精の心臓目指してギルドに向かおうとした。その時、後ろから熱が迫ってきていることを察知し、体を反転させる。
「火竜の翼撃!!」
「くっ!!」
不意を突かれたことで攻撃を受けたラーケイド。そこにいたのは西の艦隊を殲滅した飛竜隊の4人。
「あれ?この人の匂い・・・」
「ナツさんに似てる・・・」
向かい合った敵の匂いにシリルとウェンディが顔を見合わせる。するとガジルが「いや」と呟いた。
「似てるんじゃねぇ、全く同じだ」
そう、ラーケイドの匂いはナツと全く一緒だった。すると、ラーケイドはナツの顔を見てほくそ笑む。
「やっと会えましたね、ナツ・ドラグニル」
「誰だおめぇ」
見覚えのない相手。さらには彼の仲間たちを傷つけたこの男にナツが優しく話しかけるわけがない。
だが、次のラーケイドの言葉に全員が唖然とすることになる。
「私はあなたの甥です」
「はぁ!?」
意味のわからない敵の言葉。それにナツは怒り狂い、考えなしに突進する。
「わけわからねぇこと言ってんじゃねぇぞ!!」
駆け引きなしの拳が当たるはずもなくヒラリと体をずらして避けるラーケイド。さらには足をわずかに出し、それを引っ掛かったナツはすってんころりん地面を転がる。
「「ナツさん!!」」
心配して駆け寄ろうとしたシリルとウェンディを制止するガジル。理由はラーケイドがこちらにも対応できるようにしているから。
「猫たちがいねぇ今は無闇に動くな。誰も助けられねぇんだから」
ハッピーたちは倒した兵隊たちを捕虜とするためにその場に留まり魔封石を付けている。空を飛べないこの状況で迂闊に飛び込むとこちらがやられてしまいかねない。
「わけがわからないことはないよ。それが事実なのだから」
「ッ・・・」
奥歯を噛み得意気な表情のラーケイドを睨み付けるナツ。しかし、これは結果的には良かったのかもしれないとすぐに彼は勘づいた。
「火竜の・・・」
「鉄竜の・・・」
普段はいがみ合っているのにバトルとなるとなぜ息が合うのだろうか。言葉を交わしていないのに同じタイミングで頬を膨らませるナツとガジル。
「「咆哮!!」」
前後から挟み込むように放たれるブレス。距離が近かったこともあり避けることはできない。
「いい攻撃ですが・・・」
挟み撃ちにも関わらず焦りを見せないラーケイド。彼は両方の魔法にそれぞれ手を伸ばすと、左右に流すように体を回転させる。
炎と鉄のブレスは右と左に別れ、マグノリアの民家を根こそぎ凪ぎ払った。
「当たらなければ意味がない・・・ということです」
先程まで戦っていた雑魚とは格が違う。そのことはもうすぐにでも理解することができた。ラーケイドはこれまでとは違う構えをすると、魔力を高めていく。
「人間には3つの欲がある。“性欲”“食欲”“睡眠欲”。私はそれらを与える魔法を使う」
無数の札が彼の下の地面から現れると、急に4人を睡魔が襲った。
「何これ・・・」
「目が開けてられない・・・」
フラフラとその場に膝をつく滅竜魔導士たち。彼らは半開きの目で、冷徹な瞳の男を見上げる。
「目を閉じた時、それが君たちの終わりだ」
「グレイ、ジュビア、下がっていてくれ」
カルディア大聖堂に到着したラクサスは、その光景に震えていた。自分を慕ってくれている仲間たちが気絶し、それを殺そうとしている男が目の前にいるのだから。
「俺の仲間に手を出して、生きて帰れると思うなよ」
全身に雷を纏わせ光と勘違いしてしまいそうな速度でワールに飛びかかる。想定外の速度に避けきれず、後方へと殴り飛ばされる。
「へぇ」
背中から地面に着いたワールだったがうまく受け身を取りすぐさま姿勢を立て直す。彼はラクサスに狙いを絞ると、自身を取り巻くように弾丸を生成する。
「銅と亜鉛を錬金。9mm弾錬成・・・ファイア!!」
数多の弾丸が襲いかかる。しかしそれは男の雷撃によって全て破壊された。
「なかなかやるじゃん。どれどれ・・・」
攻撃は防がれたもののまだまだ余裕があるワール。彼は機械族としての能力を最大限に活かすため、ラクサスを分析する。
「!!お前、その体・・・内臓が・・・」
ラクサスの体内を分析したワールは驚愕した。内臓全てが本来の健康状態とは程遠く、魔障粒子によって犯されていたからだ。
ラクサスはそれに何も答えることなく一気に接近し拳を握る。それに対抗した男は腕を変形させ、真っ正面から拳をぶつけ合う。
「悪いが俺には“雷”は効かねぇんだわ」
「何!?」
機械族は本来雷に弱い。それはラクサスも知っていたが、目の前の敵には一切効いている様子がないことから、その言葉が真実であることを察知した。
ワールは次々に攻撃を繰り出していく。ラクサスも負けじとそれに対抗していくが、ワールは雷を自らのエネルギーとする秘術を修得しており、体力を削ることもできない。
「分析完了。体内が魔障粒子に犯されているがこいつの魔力はフェアリーテイルトップクラス。『お調子者』の人格設定では足元を掬われる可能性。
人格設定『冷酷』に上書き。強化外骨骼アサルトモード。標的を『ラクサス』1人に設定りマーキングを固定。魔力融合炉点火」
突如地面に手をつけ魔力を高めていくワール。その彼の体がこれまでのものから少しずつ変化していく。
「完全排除までの予想時間・・・90秒」
彼の体から強い光が放たれる。それはわずかにラクサスの肩を掠めていくに留まったが、威力は絶大。カルディア大聖堂の天井が一瞬で消え去った。
「アサルトワール、出撃」
戦いのためのフォルムへと変化したワール。彼の魔力がこれまでよりも上がったことをグレイとジュビアも察知した。
「グッ・・・」
そして時を同じくしてラクサスがその場に膝を着いた。命中したわけではないのに突然座り込んだ彼に2人は訝しげな顔をしていると、すぐにその理由がわかった。
「ラクサスさん!!口から血が・・・」
「完全に魔障粒子に犯されてやがるのか!!」
このタイミングで魔障粒子による体への負担がピークに達したラクサス。彼を守るようにグレイとジュビアが2人の間に立つ。
「残念だが貴様らの魔力では我には到底敵わない。まとめて消してやる」
ラクサスと互角以上に渡り合える魔導士。彼よりも魔力で劣る2人で歯が立つかはわからない。
「悪ぃがこいつらは俺らの仲間だ」
「やらせるわけにはいきません!!」
それでも2人は引くようなことはしない。一撃で消すために魔力を高め手のひらを向けるワール。大ピンチの妖精の尻尾だが、彼らの諦めない気持ちを天は祝福した。
「雷は効かないが、直接攻撃はどうかな?」
「!!」
真後ろから聞こえるイケボ。ワールはそれに驚き振り返ると、顔面に大男の拳が突き刺さった。
「メェーン」
「なんだ、貴様」
大男の正体は力の香りにより巨大化した一夜。なぜ彼がここにいるのかわからない一同は唖然としていた。
♪♪♪♪♪♪
「「「「!!」」」」
今にも永遠の眠りに落ちようかとしていたシリルたちの耳に聞こえてくる激しい音色。それを聞いた途端、少年たちは半開きの目をパッチリと開けた。
「あれ?どういうこと?」
「眠気が全然ない」
「なっ・・・」
自らの魔法を無効化されたラーケイドは何が起きているのかわからず目を見開く。そこに現れたのは、バイオリンを携えた長身魔導士。
「いかがでしたか、目覚めのリズムは」
青い天馬のイケメン魔導士の1人、タクト・オリヴィエ。2人の天馬が危機的状況の妖精を救うピースとなるのか!?
後書き
いかがだったでしょうか。
アルバレスからシリルたちを救出する時にクリスティーナに乗っていた一夜とタクトがここで登場です。
次は第一陣のメインイベントになります。どうぞよろしく。
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