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儚き想い、されど永遠の想い

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278部分:第二十一話 忌まわしい咳その一


第二十一話 忌まわしい咳その一

                第二十一話  忌まわしい咳
 真理は暗い顔のままだった。その彼女を見てだ。
 婆やはだ。いよいよ心配になってだ。
 彼女にだ。切実な顔で訴えたのだった。
「あの、一度です」
「一度?」
「お医者様のところに行かれて下さい」
 そうして欲しいというのだ。
「どうか。そうして」
「診てもらうのですね」
「どう見ても今のお嬢様は」
 真理はだ。どうかというと。
「病にかかっておられます」
「だからですか」
「はい、ですからどうか」
 また訴える婆やだった。実に切実な顔だ。
「ここはです」
「いえ、私は」
「お嬢様は?」
「何ともありません」
 振り切る様にしてだ。真理は婆やのその訴えを振り切った。
「ですから」
「行かれないというのですから」
「お医者様のところは」
 そこに行くのは。どうかというと。
「何かあった時ですから」
「ではあの時は」
 前に病院に行き脚気、婆やが思っているそれのことを尋ねに行ったのはどうしてかとだ。婆やは食い下がる様にして真理に問い返した。
「行かれたのですか?」
「それは」
「一度行かれて下さい」
 婆やの訴えは続く。
「どうかここは」
「しかし」
「どうしてもだというのですか」
「待って下さい」
 逃げにくいと判断してだ。真理は時間稼ぎに移った。
「どうか今は」
「待てばいいというのですか」
「はい、今は」
 また言う真理だった。
「そうして下さい」
「それならいいのですが」
 婆やは真理がやがて行くと捉えて、好意的にそう判断してだ。今は納得した。
 そのうえでだ。また彼女に告げた。
「必ずですよ」
「わかっています」
「はい、それではです」
 どうしてもだとだ。まだ言うのだった。
「御身体のことは」
「自分で、ですね」
「結局は御自身のことですから」
 真理自身のことだというのだ。
「くれぐれもです」
「それはわかっていますので」
「どうか。お時間を見つけて」
 そうしたことを話したのだった。しかしだった。
 真理は今は暗い顔をしているだけだった。そうして動かないのだった。
 しかしだ。その中でもだった。彼女は義正と共にいた。常にだ。
 義正は今は沈黙を続けていた。しかしだった。
 時折だ。真理に言うのだった。
「今度ですが」
「今度とは?」
「また何処かに行きませんか」
 こう言ってだ。真理に気晴らしを勧めるのだった。
「そうされませんか」
「いえ、今は」
 しかしだった。今の真理はだ。
 曇った顔のままでだ。その誘いを断るばかりだった。 
 
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