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レーヴァティン

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第四十話 偸盗その十一

「夜だとな」
「見えないと不利でござる」
「その分な」
「そして足元も不安なので」
 若し石や泥で足を取られるとそれだけで不利になる、ひいては体勢を崩して敵に隙を作ってしまう場合もある。
「動かぬべきでござるよ」
「全くだ、そして寝る時は寝る」
「そのうえで英気を養う」
「そうしないとな」
「拙者一日のうち必ず寝る時間はもうけているでござる」
 完全な徹夜はしないというのだ。
「さもないと後でくるでござる」
「寿命も縮まるな」
「そうでござる、身体にも心にも負担がかかって」
 一晩寝ないということはそれだけで身体にも精神にもかかるのだ、そうしてその疲れが蓄積されるのだ。
「よくないでござる」
「だから御前はか」
「完全な徹夜はしないで」
 そしてというのだ。
「寝ているでござる」
「二時間でも三時間でもか」
「どれだけ少なくてもでござる」
 それでもというのだ。
「寝ているでござる」
「それがいいな」
「さもないとでござる」
「長生き出来ないか」
「漫画家で長生きしない方がおられるでござるな」
 彼等がいる本来の世界の話もする智だった。
「トキワ荘の方々の中に」
「そうだな、六十かその辺りでな」
「亡くなられる方が見られるでござるが」
「そうした人は若い頃の無理が祟ったか」
「そう思うでござる、三日三晩徹夜で描くなぞ」
 そうしたことをすればというのだ。
「後で必ず来るでござる」
「疲れがな」
「それで若くしてでござる」
 今や六十で死ぬと若いと言われる、もう人間五十年の時代ではないということか。七十で古稀と言われたが最早七十でも若死にと言われるかも知れない。
「亡くなっておられるでござる」
「だからだな」
「睡眠も忘れてはならないでござる」
 そうだというのだ。
「だからでこの世界でもでござる」
「夜は寝るべきだな」
「しかも夜に進むのは危険でござるから」
 視界が悪く何かと気付きにくいからだ。
「だからでござる」
「今はだな」
「寝るべきでござる」
「その通りだな、では食い終わったら寝よう」
 英雄も智の言葉に頷いてだ、そしてだった。
 彼等は今はじっくりと寝た、食べるものを食べた後は火は燃やしたままで灯り及び獣除けとして使って寝た、そうして翌日に日の出と共に起きて出発した。


第四十話   完


                   2017・11・1 
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