真田十勇士
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
巻ノ百二十二 集まる豪傑達その九
「それでじゃ」
「大坂に来たか」
「大坂では雇ってもらえた」
「では大坂で名を挙げてか」
「まあ勝って欲しいがのう」
雇ってもらったからにはとだ、宮本はその願いも述べた。だがそれでも彼も空気でわかっていたのだ。
「しかしな」
「それでもか」
「名を挙げればまたそこからな」
「仕官の話になるか」
「そうも思うからじゃ」
だからだというのだ。
「わしもまたここで働く」
「死ぬのではなくじゃな」
「わしは生きる」
死ぬつもりはないというのだ、それも一切。
「絶対にな」
「大坂がどうなろうとか」
「そうじゃ、死ぬつもりはない」
「そこはわしと違うか」
「そうじゃな、しかしな」
「うむ、同じ釜で飯を食う間柄になった」
お互いに笑って話をした、そのうえでの言葉だった。
「ならばな」
「うむ、ここはな」
「共に戦おう」
「最後の最後までな」
生きようとする者と最後の一花を咲かせんとする者、その立場の違いはあれどもだった。二人も戦う為に大坂に来た。
だがそれでもだった、大野は最後の一雄がまだおらず弟達に言った。
「あとはな」
「真田殿ですな」
「九度山におられる」
「文は送った」
それはというのだ。
「ならばな」
「後は来られるかどうか」
「その問題ですな」
「後は」
「真田殿ご自身の」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「後はな」
「左様ですな」
「それではですな」
「後は真田殿がどうされるか」
「それだけですな」
「それだけじゃ、来られるとは思う」
大野の読みではだ。
だがそれでもとだ、彼は難しい顔で話した。
「だからな」
「ここは、ですな」
「静かに待つ」
「そうすべきですな」
「今は」
「そうじゃ、騒いでもみっともないだけじゃ」
彼等も将だ、将がそうしたことをしてはどうしようもない。こう考えてのことだ。
「だからな」
「ここは、ですな」
「真田殿をお待ちしますか」
「この大坂で」
「そうされますか」
「それだけじゃ、若し真田殿が来られるとも」
それでもとだ、やはり大野はあえて泰然自若として弟達に話した。
「よいな」
「はい、戦いましょう」
「幕府と」
弟達も答えた、そしてだった。
彼等は待つことにした、既に大坂城では戦の用意が最後まで整おうとしていていた。
その軸には後藤や長曾我部、毛利勝永達がいた。だが彼等は大坂城の中の動きを見て眉を顰めさせていた。
毛利は後藤にだ、城を見回った後でどうかという顔で問うた。
「どう思われるか、城の様子は」
「うむ、これはでござる」
後藤は毛利に深刻な顔で述べた。
ページ上へ戻る