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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか

作者:海戦型
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あとがきの種明かし
  今更になって振り返る『俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか』のお蔵入りネタ集

 という訳で打ち切りエンドを迎えた私の過去作について話をば。


①名前だけキャラのトウテツ君とは?

 アズがまだアズになる前に出会った異端児です。一言で言えば底抜けに明るい羊コスプレのショタ。アズともとても仲が良かったのですが、原作の異端児騒乱みたいなのが起きてアズは自らの手でトウテツ君を殺す羽目に陥りました。ちなみに首謀者はオーネストが「塵掃除」した模様。
 アズにとっては隠れたトラウマになっていて、自分を屑呼ばわりし始めたのも死神っぽくなっていったのもその頃からです。ちなみに異端児からは仲間殺しと恐れられていますが、同じくらいアズも彼らに会うと古傷を抉られるので徹底的に距離を取っていました。それだけ二人は、仲が良かったんです。


②スクワイヤ家のその後?

 実はオーネストのおじいちゃんに当たる人物であることが判明したシシド・スクワイヤ。もう名前覚えてない人もいそうですが、ココ主役の話で出てきたじいちゃんです。実は没話なのですが、シシドはもう一度登場する予定がありました。……敵として。
 あの後「ラスボス」にスカウトされたシシドおじいちゃんは、息子を殺したのは神を絶対とする世であり、オラリオの夢を無責任に膨らませた冒険者だと考えるようになり、ラスボスから人外の力を受け取って若返ります。その後おじいちゃんは夜な夜な有力な冒険者を仕込み刀で殺害する闇討ちをはじめ、それに偶然出くわしたココが驚愕する事で物語が始まる……という話でした。

 ココの妹分として登場したマナ・ラ・メノゥはここで活躍する予定で、他にもアキラ・スクワイヤと同じくオラリオドリームを掴みに来たおじいちゃんの弟子とそれを連れ戻しに行ったらいつの間にかファミリアに入れられていた弟子など登場予定がいくつかあったのです。途中からはガウルとかも合流して大騒ぎしてなんとかおじいちゃんを追い詰めますが、死の寸前にまで瀕して尚おじいちゃんの決意は揺らがず逃げて体制を立て直そうとします。
 しかしそこで騒ぎに駆け付けたオーネストがおじいちゃんを一閃。最期にその一撃が息子のそれを受け継いだものだと確信したシシドは、孫にも会えて引導を渡されるのなら、悪い最期ではないと笑顔を浮かべて絶命する……という話でした。


③月狂浄蓮惨糸忌譚。

 イマイチ出番の少なかった浄蓮さんの話。彼女は昔はファミリアでも何でもない娼婦だったんですけど、あるファミリアの団長さんに惚れて惚れられ相思相愛になり、そのまま二人で暮らそうと逃げ出した事があります。所がどっこい団長さんの主神は強烈に嫉妬深い人で、二人は捕らえられて団長は縛られたまま眼球だけ残して鳥に食い殺されます。眼球だけ残された理由は、彼の目の前で同じく拘束された浄蓮さんが胎のみを鳥に食われて泣き叫ぶ様を死ぬまで見せ続ける為でした。
 その後致命傷のまま放置された浄蓮さんはオシラガミ率いるファミリアに助けられてそのまま彼女の傘下に加わりました。その胸に誓うは復讐。女の悦びを奪い男を殺した「簒奪の神、プロメテウス」を必ず殺すという固い決意でした。
 そしてある日、そのプロメテウスがオラリオ内にいる事を知った浄蓮は復讐を遂げられると狂ったように笑いながら出奔。その翌日から町のあちこちで彼女がやったと思われる「身元不明な輪切りの死体」が大量に出現し始めることで物語が始まる、という話です。

 この話ではベルやロキ・ファミリアのキャラなど既存のキャラに加えて別のオリジナルファミリアも話に加わり、彼女を探しつつプロメテウスの謎にも迫っていくというストーリーにする予定でした。
 プロメテウスは実はもともとはヘファイストスの力であった「鍛冶の炎」を簒奪して自分の物とし、それを咎められて強力な封印を施されたまま堕天させられた元神です。最終的にはその強力な封印をラスボスが解いたことが後に明かされることになっていました。
 そして浄蓮さんですが、隠されたスキル「月狂」によって満月の夜にだけステイタスが馬鹿みたいに跳ね上がるという力を用いて半ば暴走に近い形でプロメテウスと彼のファミリアを惨殺してしまうことで、ラスボスの名前までたどり着けないという構図にするつもりでした。尚、その後も浄蓮は満たされぬ復讐欲に暴走しますが、ティオナ・リュー・ベルを中心とした皆様の説得と、義手で糸を防ぐ事でとうとう彼女の無力化に成功したガウルの説得でやっと正気を取り戻し、改めて復讐の虚しさを認めて生きていく……ってな感じで終わるつもりでした。ちなみにここからガウルと浄蓮の関係が深まっていきます。


④目覚めよ、夜魔(ナイトゴーント)

 はい、これも本編で出番イマイチだった勢の話で、ガウルの事ですね。実はガウルにはメジェドのファミリアになった影響で魔法が一つ発現していて、これが『闇食眼(ライトホール)』と言います。簡単に言うとこの魔法を使う事でガウルは左の目に周囲全ての光を食わせ、自分は全て見えるけど相手には光を喰らった目以外何も見えないという空間を作り出す事が出来る魔法です。二つ名の由来はコレですね。
 ちなみに吸収した光は右目からビームとして発射可能。その貫通力は普通にレベル6のエルフの魔法ぐらい威力出ます。ネタキャラかよ。

 ガウルの過去話とかもあったんですよ。彼はオシリス・ファミリアというファミリアで団長をしていたんですが、ファミリアが拡大していくにつれて主神の心変わりに付いていけなくなり、更にある時ダンジョンで強力な敵に遭遇したさいに殿を務めた事で利き腕である右手を失ってしまいます。
 主神から煙たがられ始めていた事もあって、これでガウルの団長としての地位も扱いも地に落ち、彼は追い出されるも同然でファミリアを追い出されます。腕がなくなって体も思うように動かず段々心が闇に染まっていっている所を助けたのが、メジェド様。そういうバックボーンのあるキャラだったのです。
 なお、オシリス・ファミリアは後の最終決戦で敵側として登場しますがそれはまた別の話。

 ちなみに最終話では自分の魔法をアズのせいで改造された義手のパーツによって増幅させることでとんでもないビームを撃ったり、敵に捕らわれたメジェド様を自慢の右手で助けて「腕があれば、貴方を助けることもできる」とか言ってメジェド様をトゥンクさせる話も用意してました。


⑤死望忌願の正体は?

 あれの正体は、実は「現実世界で大多数の人間が持つ生死観」の概念の具現化です。
 すなわちオラリオ世界では「死んだら魂が神に選別されて輪廻を巡る」というのが当然になっている事に対し、現実世界では神も輪廻も空想でしかなく実際には死ねば精神的にも物質的にも永遠にオシマイであるという意識があって、それを偶然人より強めに持っていたアズが奇跡的な確率で精神だけ世界の境界を超えてオラリオに辿り着いた際、思想が現実と逆転して死望忌願が現れたって事になっています。アズでなくても持てる可能性があったことはたしか本編でちょびっと示唆したと思います。

 つまるところ、オラリオ世界は現実の反転世界であり、アズの肉体は未だに現実世界にあるんです。オラリオでアズに肉体があるのは、反転世界の法則が働いたせいで逆説的に肉体が構成されているのであって、例えばオラリオ世界の人間が現実に行くと肉体があるのに肉体が消滅するという逆転が発生するのです。二つの世界をそういう関係性として設定してました。


⑥ラスボスって結局誰やったんやという話。

 アフラ・マズダです。天界で彼と入れ替わってたのは彼の力を分割して生まれたスプンタ・マンユ(アンラ・マンユも同じルーツにしてる)で、当人は地上で色々と見分を広めていた訳です。
 アフラ・マズダは前から「裁定者」としての意識を強く持っており、天界のルールや神の在り方にも裁定者として懐疑的でした。そして地上を回って悪神だけでなく中性、善性の神さえ無自覚の悪行を巻き散らしている現実を見て、彼は神に見切りを付けます。

 神を滅ぼし、人の世界に再構築する。そのために全ての地上の神を、ひいて彼らに毒された哀れなファミリアを完全滅却し、アズの世界のような神なき世を創生せんと暗躍を続けていたのでした。天界のチェックを潜り抜けて地上にいるので神の力は使い放題、手の広さも滅茶苦茶で、しかし心の底から人間の事を愛しているという点だけは純粋な神です。すべてが終わりし後は自分自身も神の力を全て捨てて一人の人間となる算段までつけてました。

 そしてその姿は純粋な少年そのもの。
 ちなみにコイツ、アルガード事件を陰で操っていた奴と同一人物どころかアズが街で見かけた「幽霊っぽい不気味な少年」がその張本人です。彼はあちら側から来たアズに並々ならぬ関心を寄せており、その為に直接彼を見に来ていたのでした。


⑦それそこに魔王がいるよ。

 本編の最後らへんでアズと魔王が会って仲良くなっていたみたいな事を書きましたが、そこにも色々ストーリーがあって、アズは最終的に「もしも魔王が地上に上がったら誰も傷つけさせないけど、代わりに魔王も全力で傷つけさせないよ」みたいな約束をし、その証に力を込めた守護の鎖を魔王に渡します。
 魔王は元々精霊で、神の傲慢に不満を抱いて人を助けるうちに一つの勢力として大きな力を持ってしまった存在です。それゆえに神に「下っ端の癖に神と同等など許せない」と理不尽な力でねじ伏せられ、彼女は「穢れた精霊」として人間の文化文明から徹底的に抹消されてしまった過去がありました。
 神に潰され人間からも否定された彼女ですが、その在り方が逆に神への弑逆という思いを集める器となってしまい、ある時その神に匹敵する絶大な力が発現します。これがダンジョン誕生の原因です。

 三大怪物は全てが「神殺し」の為の切り札で、それ以外にも魔王自身が膨大な力を貯め、更には人間を配下にしたり人の要素を持った新種の魔物を創生したりと神々の黄昏に向けて全力で準備していました。元は神の僕であるという意識から、神へは憎しみ以外に羨望などの愛憎入り混じった気持ちを持っています。
 で、そんな神さえ慄くアズが「守ってあげる」と言ってくれたのが彼女にとっての1000年ぶりの人間からの掛け値なしの善意だったので、コロっとアズを気に入ってついつい約束を受けてしまいます。その後何度か「オラリオに現れた亡霊」という都市伝説みたいな感じで地上に顔を出しています。もちろんアズはお気に入り。これが後のストーリーに大きな変化をもたらします。


 さて、この辺までの全ての話を通過していよいよ⑧の最終話構想に至る訳ですが、長くなるので分割させていただきます。続きに興味のある人がいるかどうかはさて置いて、続きはそのうちに。
 
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