儚き想い、されど永遠の想い
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239部分:第十八話 相互訪問その六
第十八話 相互訪問その六
「そのお池にも」
「そうさせてもらいます。それでは」
「はい、それでは」
こうしてだった。今度はだ。
二人はその池のところに来た。そこには。
清らかな池がある。そこには装飾はない。緑の草木の中に池がある。そしてその池の中にあるもの、それはというと。
蓮だった。その蓮達もあった。その蓮達を見てだ。
真理は蓮達から目を離さずにだ。義正に言うのだった。
「これが日本ですね」
「そうです。日本です」
まさにこの蓮達こそが日本だとだ。義正も話した。
「そういうことです」
「そうですね。奇麗ですね」
「そう言って下さいますね」
「日本もまた」
そしてだ。真理はその日本についても話した。
「このお屋敷の中にあるのですね」
「そうです。あえて置いたのです」
「西洋ばかりではよくないと思われてのことですね」
「はい、そうです」
まさにだ。それでだというのだ。
「この屋敷を建てた祖父がです」
「御爺様がそう思われて」
「それでこうしたものになりました」
そうだったとだ。真理に話す義正だった。
「池は。この様に」
「何かこうしたお池を見ていると」
「あの時のことをですね」
「あの時は確か」
真理は二人がはじめて出会った時のことを思い出していた。そのうえでの言葉だった。
「百合でしたね」
「そうでしたね。真理さんが見ておられたのは」
「はい、百合でした」
その花だったと。二人は話していく。
「百合は西洋的ですが東洋的でもありますね」
「そのどちらにあっても不思議ではない花ですね」
「そうしたお花もありますね」
「花も色々だということですね」
「ですね。花もまた」
「一つではありません」
このことをだ。二人で話してだ。
そうしてだった。真理はさらにだった。
蓮を見続けてだ。こんなことも言った。
「思うのですが」
「蓮についてですか」
「蓮を見ているといつも」
いつも。どうかというと。
「その上を歩いてみたくなります」
「蓮から蓮にですね」
「そうしたくなります」
「ですね。若し蓮の上を歩けたら」
「そしてお池をそこから見られたら」
「それもまた奇麗ですね」
「できることではないですが」
だからこそ余計にだった。真理はそうしたいというのだ。
蓮達を見続け。さらにだった。
「蓮は。仏教にもよく出ますが」
「だからこそ。東洋的ですね」
「日本の香りが強いですね」
「そうですね。蓮は仏教の花です」
「そして水の花でもありますね」
「そうですね。蓮は」
義正も言う。
「水があってこそですから」
「その水ですが」
「水もでしょうか」
「奇麗ですね」
こう言うのだった。その池の水面を見ながら。
「まるで鏡です」
「水鏡ですね」
「そう見えます」
微笑だ。水面に映る自分と義正を見てだ。そのうえで話すのである。
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