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儚き想い、されど永遠の想い

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233部分:第十七話 山でその十


第十七話 山でその十

「芸術や文化なぞ全く解さないと」
「そう思われていた」
「そうした意味で同じだったのですか」
「そうでした」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「実は」
「どちらもどちらだった」
「そうだったのですか」
「滑稽ですね」
 ここまで話してだ。真理はつい笑って言った。
「御互いに何も知らないままこう言い合っていたなんて」
「うん。確かに」
 義正が真理のその言葉に頷く。
「これ程滑稽なことはないね」
「本当に。しかもそれが偏見に基くものですから」
 佐藤はそれも理由とする。
「余計にですね」
「偏見は。何もかも歪めてしまいますね」
 真理はそのことがわかったのだった。今ここで。
「そしてわからなくしてしまいますね」
「愚かな話だよ」
 義正は自嘲気味に笑って述べた。
 そのうえでだ。この哲学者の名前を出したのである。
「ベーコンの言うことだね」
「あの英吉利の哲学者ですか」
「そう、彼は偏見を戒めていた」
 それが何もかもを歪めるとだ。彼は既に言っていたのだ。
「そういうことだな」
「そうですね。偏見があっては」
「見えるものも見えない」
 義正は言った。
「いがみ合いはそうしたものを生み出すな」
「はい、全くです」
「それがわかった」
 義正は話す。
「後は」
「後は?」
「後はといいますと」
「あれだな」
 義正の言葉がここで変わりだ。佐藤だけでなく真理も尋ねたのだ。
 そしてその問いにだ。彼はこう答えた。
「御互いによりよくだ」
「御互いにですか」
「といいますと」
「理解し合うことだな」
 そうすべきだというのだ。偏見が消えた後は。
 それでだ。彼は今度はこんなことを話した。
「では今度。白杜家に行こう」
「白杜家にですか」
「私の実家に」
「娘婿が言ってもいいだろう」
 それもだ。いいというのだ。
「自然だと思うが」
「そうですね」
 佐藤もだ。微笑んでだ。それはいいと答えた。
 しかし真理はだ。ここでこんなことを言うのだった。
「ただ」
「ただ?」
「ただといいますと」
「私もそうしたいのですが」
 彼女もだ。そうしたいというのだ。
 そして具体的に何をしたいのか。義正達にこのことも話した。
「八条家にお邪魔したいのですが」
「本家の屋敷にですか」
「そこに」
「はい、そこに」
 入りたいと。真理はまた話した。
「そう考えています」
「そうですね。お互いにですからね」
 義正も笑顔でこのことがわかったのだった。
「それは」
「はい、ですから」
「御互いに訪問し合って理解を深める」
「それが大事ですよね」
「はい、とても」
 笑顔で話す二人だった。そうしてだった。
 二人はお互いへの理解を深めていくのだった。そうしていったのである。


第十七話   完


               2011・7・12
 
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