火吹消し婆
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第一章
火吹消し婆
日野絵梨花は見事なまでに大きな胸と白い顎の形がとりわけ奇麗な顔と茶色の大きなはっきりした瞳、癖のある薄茶色の髪の毛を腰まで伸ばした少女だ。通っている高校の濃紺のブレザーと白いブラウスと赤いネクタイ、グレーのミニスカートの制服がよく似合っている。だがその彼女がある日同じ高校に通っていて交際はしていないが親しくしている水田恭一に怪訝な顔をしてこんなことを話した。
「この前不思議な光景見たのよ」
「不思議な?」
「そうなの、この前学校帰りに家まで歩いてたら」
恭一のおっとりとした顔立ちを見つつ話すのだった、二人は今学校の自動販売機の横で一緒に紙パックの牛乳を飲みつつ話していた。
「歩き煙草しようとしている人がいたのよ」
「マナー悪い人いるね」
恭一は絵梨花の話にまずこう突っ込みを入れた。
「歩き煙草って」
「そうよね、まあそのお話は置いておいて」
「うん、マナーが悪いことはね」
「それでその人がライターの火を点けようとしたら」
その時にというのだ。
「火がね、急によ」
「急に?」
「そう、風がこれまでなかったのに」
「風が吹いたんだ」
「そうなの、しかも傍で見ていた私のところには風が感じられないで」
それでとだ、絵梨花はストローで牛乳を飲みつつ恭一に話した。絵梨花は苺ミルクを飲んでいて恭一はコーヒー牛乳だ。
「その人の手元だけだったみたいなのよ」
「風が急に吹いて」
「それでライターの火を消したのよ」
「それは変だね」
ここまで聞いてだ、恭一も首を傾げさせた。
「それはまた」
「そうでしょ、おかしいでしょ」
「絵梨花ちゃんの帰り道でのことだったんだ」
「ええ、お家からすぐ近くよ」
「絵梨花ちゃんのお家は確か」
「天王寺区、上本町よ」
「お家あのお寺が一杯ある辺りだったね」
恭一は絵梨花自身からこの話を聞いて知っていた。
「そうだったね」
「そうなの、そこでね」
「ライターの火が急に消えたんだ」
「おかしいでしょ、だからね」
絵梨花は恭一にあらためて話した。
「私どうして火が消えたのか確かめたいけれど」
「あそこで火なんて」
それこそとだ、恭一は怪訝な顔になって絵梨花に話した。
「お寺が一杯あるから」
「もうお線香とかね」
「あちこちにあるね」
「だから確かめるのも楽でしょ」
「何処かのお寺でお線香あげたらね」
「お墓の前でね」
「簡単にわかるね」
このことは恭一にもすぐにわかった、絵梨花が住んでいる上本町の寺が集まっているあの場所ならというのだ。
「じゃあすぐにでも」
「やってみるわね」
「何か話を聞いてると僕も興味が出て来たよ」
恭一は絵梨花にコーヒー牛乳をストローで飲みながら話した、もうそろそろその中身がなくなってきているのが飲んでいてわかった。段々ストローで吸える量が減ってきていたからだ。
「ちょっと一緒に行っていい?」
「あっ、二人でなのね」
「急にその場所だけ風が出るとか普通ないから」
だからだというのだ。
「興味が出たからね」
「じゃあ今日の帰りにでもね」
「部活休んで」
恭一は軽音楽部で絵梨花は料理部だ、ただしどの部活も休んだりすることには結構寛容な方である。
「そうしてね」
「ちょっと確かめに行きましょう」
「そうしようね」
二人でこう話してだ、そうしてだった。
絵梨花は学校の授業が終わるとまずは恭一を自分の家の近くの寺が集まっているその場所に案内した、恭一はその寺が集まっている周りを見回して隣にいる絵梨花に言った。
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