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儚き想い、されど永遠の想い

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210部分:第十六話 不穏なことその二


第十六話 不穏なことその二

「なれるよ」
「なれますか」
「きっとね。明治維新から日露戦争までいけたんだ」
 まさに坂の上の遥かな雲をその手に掴んだのである。露西亜と戦いそれに勝つことなぞだ。日本の誰もが想像できなかったのだ。
 だがそれを果たせたからこそだと。義正は希望を見て言うのだった。
「だから。諦めずにやっていけば」
「我が国は必ず」
「なれるよ」
「なれますか」
「そう。なろうと思えばね」
 そのうえで努力していけばというのだ。
「なれるから。確かに難しいけれど」
「我が国が英吉利や仏蘭西以上の国にですか」
「確かにまだ夢みたいな話だけれど」
 それでもだというのである。
「何時か必ずね」
「ですか。そうなんですね」
「この百貨店にしても」
 身近な話にもなった。彼等の話だ。
「その一つだよ」
「そうなのですか。百貨店も」
「世界一の百貨店を作ろう」
 義正もまた見ていたのだ。坂の上の雲を。
 そしてその雲に向かいながらだ。佐藤に話すのだった。
「そうしよう」
「そうですね。それでは」
「日本をもっといい国にする為に」
「そう思うのが自然ですね」
 佐藤は義正の話を聞きながらふとだ。そんなことを思い実際に言葉に出したのだった。
「日本人なら」
「そう、祖国を愛してよりよくしようというのがね」
「どうも近頃そう考えない輩もいるようですが」
「ええと、確か」
 佐藤の話を聞いてだ。義正はだ。
 ふと考える顔になってだ。こう彼に話した。
「あれだね。共産主義だね」
「ソ連という国がありますね」
「かつて露西亜と呼ばれた国の場所にできた」
 その国もこの頃にできたのだ。今はまだ混乱が続いているがそれでもだ。共産主義の国ができたのは紛れもない事実であるのだ。
「あの国です」
「あの国はまずいね」
「まずいですか」
「うん、まずい」
 真剣な顔になって言う義正だった。
「それもかなりね」
「あの共産主義というのは」
「人間は誰もが平等で個人の財産を否定する」
「そして誰もが平和に暮らす社会ですね」
「理想郷だよ。だけれど」
「しかしですか」
「彼等がしていることを聞くと」
 その露西亜革命の話をだ。聞いての言葉である。
「とてもそうじゃないね」
「平等でも平和でもないですか」
「あのソ連という国は恐ろしい国だよ」
 こう言うのである。
「血を欲し。革命の名の下に多くの人を殺していく」
「そうした国ですか」
「どうやらロマノフ皇室も殺されたし」
「そうなのですか!?」
「欧州からの情報だよ」
 そこからの情報だというのだ。ただこの時代、恐ろしいことにそのソ連の崩壊までだ。ソ連にとって都合の悪い話は何故か日本のマスコミには中々載らなかった。
「その内戦でもね」
「多くの人を殺しているのですか」
「彼等は階級を否定しているから」
「その否定されている階級にいる人間は」
「皆殺される。その階級にいるというだけで」
 個人を見ずにだ。階級を見てそうするというのだ。
「皇室だけでなく貴族や資本家、地主が」
「そういった存在がですか」
「殺されていく。ひいては」
 そのうえだ。そうした階級にある者達だけではなくというのだ。
 
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