教えること
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第一章
教えること
この時東住吉長居はある高校生の相談を受けていた、長居は誰に対しても公平で自分と同じ高校生にもそうであって相談もよく受けていた。
その高校生は丸々と太っている、その顔と姿で長居に言うのだった。名前は高一也といった。
「よく言われるんだよ、僕は」
「その身体のことをだね」
「うん、小学校の時一緒に遊ぼうと言ってもね」
高は長居に泣きそうな顔で自分のことを語った。
「鬼ごっことかね」
「太ってるから動きが鈍くてだね」
「すぐに捕まるからってね」
そう言われてというのだ。
「入れてもらえなかったり告白しても」
「女の子に」
「太ってるからってね」
「それで太っていることにだね」
「もう嫌になってるんだ、それでね」
「自分でどうしたらいいかと悩んでだね」
「君に相談に来たんだ」
大阪二十六戦士の一人である彼のところにというのだ。
「そうしたんだ」
「そうだったんだね」
「どうしたらいいかな」
高は長居に真剣な顔で尋ねた。
「それで」
「そうだね、それじゃあ聞くけれど」
長居は高に優しい目を向けて尋ね返した。
「君は痩せたいのかな」
「うん、もうすっかり嫌になったよ」
太っているその姿がとだ、高校生は長居にはっきりと答えた。
「仲間外れにされたり振られるのは」
「もう二度とそんな思いはしたくないね」
「そうなんだ」
「それで僕にどうしたらいいかと相談しに来たんだね」
「どうすればいいかな」
「そうだね、痩せたいのなら」
「君は痩せているから」
だからと言う高校生だった。
「いつも走っていてね、ダイエットの方法も詳しいよね」
「詳しいことは事実だよ」
長居もこのことを否定しなかった。
「僕はマラソンランナーだけれどね」
「マラソンをするにはだよね」
「やっぱりカロリー計算とか栄養摂取とかもね」
「考えないといけないよね」
「トレーニングと一緒にね」
「そうだよね、だから君のところに来たけれど」
「わかるよ、僕は君を絶対に痩せさせて」
長居は高に約束した。
「二度と太らない」
「そういう風にだね」
「出来るよ、ただね」
「ただ?」
「君は痩せた時にどうするのかな」
長居は高の困り果て卑屈にすら見える感じになっているその顔を見ながら彼に尋ねた。
「一体」
「一体って?」
「そのことを聞きたいんだ」
「どういうことかな」
「もてたいのかな、それとも」
「それとも?」
「彼等と同じになりたいのかな」
こう高に問うたのだった。
「そうしたいのかな」
「彼等っていうと」
「そのうちわかるよ、けれどまずはね」
長居は高のその顔を見つつ彼にさらに話した。
「痩せようか、トレーニングでね」
「身体を動かしてだね」
「君は続けられそうなスポーツあるかな」
「水泳なら」
それならとだ、高は長居に答えた。
「出来るかな」
「そう、じゃあ僕が言う通りにね」
「泳げばいいんだ」
「そうしてくれるかな」
「毎日かな」
「そのメニューも出していくから」
毎日とは答えなかった。
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