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虚空の魔導師

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第2話 新たなる絆(前編)

 
前書き
ちょっと間が空いての投稿です。
若干修正を入れつつ、再投稿しています。 

 
・・チュン・・・チュン


「む・・・?」

顔に差し込む日の光で目を覚ましたクォヴレーは、
自分の寝ている場所が慣れ親しんだアストラナガンのコックピットではない事に気付き、
瞬時に身体を起し周囲を見回した。

「・・・そうか、ここははやての住居だったな。」
そして漸く自分がはやての住居に宿泊した事を思い出した。

しばし身体を解した後、昨日の事を思い起こす。


















(クォヴレーサイド)

あの後、はやての住居に着き、はやてをリビングのソファーに降ろし、頭部の傷を治療して貰った。
その後、礼を言い立ち去ろうとした俺を、はやては夕飯を食べていけと引き止めてきた。

俺は断る理由として車椅子が壊れている事を上げたのだが、予備の物があるから大丈夫と即答されてしまった。

俺が返答を渋っていると先程のえも言われぬ迫力の笑顔で迫られ、なし崩しの内に相伴する事になった。


そして現在、はやて家のリビングで食事が出来るのを待っている訳だが・・

ふと、壁に掛けてあった時計を見やる。
時刻はすでに8時を回っていた。

・・・?

「はやて、お前の親は今日は帰って来ないのか?」
俺ははやてが一人で料理を始めているのを見て、不思議に思ったので彼女に尋ねた。
はやては俺の言葉に僅かに動揺した様子を見せると、彼女の両親が事故で既に他界している事を打ち明けてきた。

「・・・済まない、はやて。無躾な事を聞いてしまったな。」

「いいんや。誰でも不思議に思うやろしな。」

はやてが無理に笑顔を作っているのが、感情の機微に疎い俺にですら分かる程だった。

・・・・何故その時その話をしたのか、俺自身今でも解らない。
今までにない状況に、多少感情が不安定になっていたのかも知れない。
原因を挙げれば幾多もあったが、どれも正しいとは思えないが・・・

兎に角、その時の俺はその話をはやてに聞かせる気になったのだ。

「・・はやて、俺の話を聞いて欲しい。」

「なんや、改まって・・・・・・真剣な話なんやね?」

・・・彼女は年齢以上に聡い様だ。
はやての表情が急激に真剣味を帯びる。

俺は自分がこの世界の人間ではない事、次元の番人として様々な敵と戦い次元を渡っている事、
そしてこの次元には不慮の事故で流れついてしまった事を話した。

ティプラー・シリンダーの影響と、世界の因果率から外れた事で歳を取らない事などは伏せて話したが・・・

「つまり、クォヴレーさんは正義の味方というわけやな?」

予想とは掛け離れた返答に俺は少し困惑してしまったが、
その言葉で記憶の中の彼等を思い出し、僅かに自身の顔が綻んだのを認識した。

「・・・確かに彼等なら・・真に“正義の味方”と言えるだろうな・・。」

「・・彼等って誰や?」
はやてが何故か顔を赤く染めながら、尋ねてきた。

「かつての俺の仲間達だ。俺を人間にしてくれた戦友達・・・っ!」
言ってしまってから、ハッと我に帰った。

話すつもりのなかった事まで漏らしてしまい、俺は思わず顔を顰めた。

「・・・・人間にしてくれた?」

・・どうやら誤魔化す事は出来ない様だ。

「どういう事や?」

「・・・・・。」
俺は覚悟を決め、自分がバルシェムという戦闘用に造られた人造人間であり、
かつての戦友達に人としての絆を貰った事を話した。

「大切な人達なんやね・・」

「ああ。俺には過ぎるくらいの・・な。」


















(はやてサイド)

クォヴレーさんは話し終ると、頷く私の顔をマジマジと見詰めてきた。

「・・なんやの?そんなに見詰められたら、ごっつ恥ずかしいやん!」
私が顔を染めながら抗議すると、クォヴレーさんは苦笑しながら聞いてきた。

「・・いや、正直な所話が荒唐無稽過ぎて、到底信じて貰えるとは思ってなかったから・・少し気になってな。」

私自身、言われてみて初めて気付いた。
正直な所、なんで素直に彼を信用したのか、自分でも解らなかった。

・・・ただ、自然にこの人の言葉を信用してしまったんよね。

「私もな・・なんで信じたんか分からん。・・・ただ、何となく信じてしまうんや。」
私は正直に話す事にした。

「そうか・・俺としては有り難いのだが・・・」
その後、クォヴレーさんはそのまま黙り込んでしまった。

「ごめんな~。答えになってない答で・・」

「・・いや、はやてが信じてくれるのなら俺は嬉しい。」

・・・不意打ちは卑怯や。
急にそんな笑顔正面から見てしまったら、私ドキドキしてしまうやん。

ん?そういえば、クォヴレーさん、住む所はどうするんやろ?
今日この世界に着いたんやったら、用意している暇なんてなかった筈や。

私がその事を尋ねると、
「アストラナガンのコックピットで寝る。」
と平然と言い放った。

ピシ!!
私の中で何かにヒビが入る音が鳴った気がした。

「あかん!私の命の恩人が宿無し暮らしなんて絶対駄目や!!」
自分でも驚く位の大声やった。

・・・この後、半ば強引に私の家で暮らしてもらう事にした。
今までに考えられん程に、真剣にお願いした。

そこまで必死になった理由は、私が一番よう分かっとる。

私はこの人と一緒に居たかっただけやけや・・・

この広い家で一人は寂しいんや・・・・・

けど、そんなこと恥ずかしくて言えるわけないやん!

「とにかく、ご飯が冷めないうちに食べよっか。」

「そうだな。せっかくはやてが作ってくれたんだ。早く食べるとしよう。」

「うん!」

「頂きます。」
クォヴレーさんが手を合わせた後、夕飯を食べ始めた。

「・・・?・・はやて、どうした?」

ハ!?・・私はクォヴレーさんをずっと見詰めていたらしい。
クォヴレーさんが怪訝な顔で、こちらを覗き込んでいた。

「・・いや・・・その・・クォブレーさんが『頂きます(・・・・)』を知ってるとは思わんかったから・・つい・・」

「?普通は食前にこうするのではないのか?」

「いや・・日本では普通なんやけど、見た目外人のクォブレーさんがすると違和感があるんや。」
する事自体は、良い事なんやろうけどね。

「・・そうか。」

「なんや、なんか思い入れでもあるん?」

「・・・身近な仲間に大喰らいの男がいてな、その男が教えてくれた。食物を摂取する時には大事な行為だと。」

「・・そうなんや。」

その後、クォブレーさんと私は黙々と食事を続けた。時折、『おいしい』と褒めてくれたんや///////

「やはり、人が作った食事はいいな。久しぶりに堪能した。」

「クォブレーさんって、今まで何を食べてたんや?」

「ここ最近は木の実や獣の肉、機体に積んであったレーションなどだな。」

「そーなんや。クォブレーさんも苦労してたんやな~。」

「・・・・はやて。今更だが、俺のことは呼び捨てで呼んでくれて構わない。『さん』付けで呼ばれるのは慣れてないせいか違和感がある。」

「・・・・・じゃあ、クォヴにぃって呼んでもええやろか?」
私は少し考えた後、以前から家族が欲しかった事を思い出し、提案してみたんや。

「了解した。はやて、改めてよろしく頼む。」

「・・・・ホントにええの?」

「ああ・・はやての側なら俺も穏やかな感情でいられるからな。」
クォヴ兄ぃは私の頭をなでながら、はにかむ様な微笑を見せてくれた。

自分の顔が真っ赤になっているのは、頬の熱さで分かった。

「天然さんや・・・」
クォヴにぃを見ながら思わず呟いてしまったが、我ながら言い得て妙だと思った。


















(クォヴレーサイド)

今日は色々な事がありすぎて疲れていたのか、食後はやてがウトウトと船を漕ぎ出したので、
部屋まで運びベッドに寝かせ付けた。

その後リビングに戻り、イングラムに先延ばしされていた説明を要求する。

「では、説明して貰うぞ」

《・・・良いだろう。》
一息程間を置いて、イングラムは今の状況を説明し始めた。

《まず、俺はイングラム・プリスケンであり、イングラム・プリスケンではない。》

「どういう事だ?」

《今の俺は、お前の中に残っていたイングラム・プリスケンの残留思念ともいうべきモノをベースに構築された、
 言わば人格プログラムに過ぎない。》

「デッドコピーという事か?」

《そうとって貰って構わない。・・まあ、デッドコピーと言ってもオリジナルの知識も記憶も全て網羅しているがな。》

《そして・・俺を構成している物質とお前の中にある物質は同じ物質で、ジュエルシードと呼ばれるモノだ。》

「俺の中にあるモノだと?」

《そうだ。そして、それがお前に魔力の動力炉ともいうべきリンカーコアを擬似的に形成している。
 これを触媒にしてディス・レヴとの間にゲートを開き、直接魔力を得ている。・・・まつろわぬ霊の力・・“負の無限力”をな。》

「・・・俺にも魔力を扱えるという事か。」

《そして、此処からが重要な所だ。
 このジュエルシードとは、多少変質してはいるが俺達の世界で言うズフィルード・クリスタルと同一の存在の事だ。》

「なんだと!?何故・・この次元にズフィルード・クリスタルが存在する!?」

《それについては情報不足で予測の範囲を出ないが、この次元連結体にもバルマー星が存在していた。》

「・・・存在していた?」

《そう、この次元のバルマー星は既に滅んでいる。おそらく宇宙怪獣(STMC)との相打ちによってな。》

「・・・・・・。」

《ジュエルシードはそのバルマーの遺産という訳だ。そして、これは蛇足だが・・
 ジュエルシードにはシリアルナンバーがあり、俺とお前のナンバーは1と16・・・・偶然と言うには余りにも因縁じみているだろう?》

「・・・・此処でもその数字は付き纏うのだな。因果なものだ・・・・そして、これがこの次元においての俺達の因子という事か。」

《後、お前の肉体年齢が若返っている理由は、現状では情報が少なく不明だ。》

「身体能力は問題は無いからな。それは分かり次第で構わない。」

俺は一つ気になる事が出来たので、その事をイングラムに尋ねた。

「それよりも、その情報の出所(ソース)は何処だ?」

《今までの情報は俺とお前のジュエルシードに蓄積されてきたデータを参照にした。
 ズフィルード・クリスタルに情報を蓄積する能力があることを知っているだろう?それを引き出したに過ぎない。
 バルマー人はデータの量が膨大な為に分割して記憶させたらしい。それ故に、俺が引き出せるのはその一部分だけだ。》

「・・・俺達も独自にスフィルード・クリスタル・・いや、ジュエルシードを回収するしか無いと言う事か。」

《既に回収されてしまった分に関しては交渉するしかあるまい。あるいは・・・》

「・・・・・・・・・。」
その先は言わなくても分かっている。
あるいは・・・・力ずくで奪取するしかない。

「かなり面倒な事になりそうだな・・」

《ああ。それにこの情報はバルマーが存在していた時代の物だ。一度今の生きた情報を調べる必要があるだろう。》

「・・・それについては、明日高町なのはに接触した時に、情報を引き出せば良い。」

《彼女が情報を持っているとは限らないがな。》

「高町なのはは明らかに戦闘慣れしていない様子だった。恐らく助言者が近くに居るはずだ。そいつから聞けば良い。」

《後1つ注意事項がある。覚醒してから数回の次空間転移の反応を多数確認した。少なくとも次元を渡れる存在が居るという事だ。
 この次元連結体を管理する組織の可能性もある。隠密行動を心がけた方が良いだろうな。》

「了解した。」



「朝ご飯できたで~!」

俺はリビングから聞こえてきた、はやての声によって現実に戻された。

「わかった!今向かう!」
とにかく、今は高町なのはに接触してからだ。

俺は一旦考えるのをやめ、リビングに移動した。

















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