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ガルパン主人公に転生したけど、もう限界な件

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番外編 役人

今や戦車道はプロリーグも設立され、世界選手権においては日本勢が初となるメダル獲得という快挙がなされ国民の人気競技の一つにまで成長しました。一時期は人気が無くなりマイナーな競技とされましたが、あの第六十二回戦車道全国高校生大会から大幅な大改革が起きました。今を第一線で活躍する選手たちは第六十二回戦車道全国高校生大会の経験者達であり、その悲劇を乗り越えて見事に優勝を果たした黒森峰の奇跡を成した黒森峰女子学園隊長の西住まほさんや副隊長の逸見エリカさんが話題にあがります。ですが、あの第六十二回戦車道全国高校生大会の裏で何が起きていたのか?今や国民の人気競技の一つでもある戦車道の大規模な改革に裏でいったい何があったのか?今回はその実態を知るあの時の事件に深く関わった公務員に話を取り付ける事に成功しました。今日は本当に取材に応じてありがとうございました。


「いいえ、私のようなものでよければ喜んで取材に応じますよ。そうですね、私は戦車道に直接は関わっていませんが、私の人生はあの事件により変わったと言ってもいいですね。いや、事件なんて関係ありませんね。そもそも私が選択を見誤ったからですね。でも、それは仕方がないと思います。今を思い返せば私は本当に自分で言うのもなんですが有能でしたが上に言われた事を黙々と処理していた所謂マニュアル人間でした。それが当然と思って、上に嫌われないように常に上の機嫌だけを気にして仕事をして自分のキャリアに傷がつくことを嫌っていた気の小さい人物でしたね。そんな私の名は……いえ、そんな私に名を名乗るほど有名でもないので役人とでも言ってください」

では、役人さん。貴方はあの当時は文科省の局長というとても高い地位にいました。ですが、今でも世間でも疑問に思っている事が多いのですが、どうして日本開催に向けて始動した戦車道世界大会準備とプロリーグ設立に加えて、あの非現実的とも言われた学園艦廃艦案を同時に進行されたのですか?

「それは私が直接指揮を取っていた訳ではありません。学園艦廃艦案は確かにあの当時の私が勧めていた案件の一つですが、それでもあそこまで強引に事を進める様に予定されていたものではありません。」

そもそも予定されていたとはどういう事ですか?

「ええ、そもそも学園艦は確かに生徒達に自主独立心を向上させて世界に通用する人材を育成する事が目的でした。戦車道の例を上げるならば黒森峰女子学園のような成功を収めている学園艦は多くあります。ですが中には失敗している学園艦も存在していますので、そのような学園艦は心苦しいですが廃艦という厳しい処置を下さなければなりません。陸の学校でも例があるように学園の生徒が減少して維持が難しい学校は廃校になりますよね。しかし多少の生徒減少及び活動低迷ならば学園廃校はありません。それは学園艦も例外ではないのですが、あの時の政府は何よりも莫大な予算を欲しており、学園艦廃艦案を推し進めていました」

それはどうしてですか?

「その前に学園艦の話をしますね。知ってると思いますが学園艦はそもそも規模が大きい。学園だけでなく陸と同じように大小の住宅やホームセンターやコンビニもあります。車が走れる道路や自然も存在しており陸上同様の生活が学園艦の中で生活が出来ます。ですが、学園艦は生徒を含めて学園艦に住んでいる住人は規模が小さくても数万人は収容できる程の規模の巨大船なのです。それを維持するのに非常に莫大な費用がかかります。そのため政府とて予算が無限にあるわけではないので、出来れば実績のない学園艦は廃艦にしたいと思うのが本音です。しかし規模が小さい学園艦でも数万人の住民が住んでいる艦を廃艦にすれば、それはもう大変な騒ぎになります。陸にしても学園艦にしてもいきなり数万人を受け入れるだけの体制を整えるは大変な労力が必要です。それこそ何年もかけて数万人を受け入れる体制を整えなければいけません。」

確かに学園艦一つだけでも数万人。いきなり廃艦にでもなったら大変ですね。そして他にも廃艦にしたら受け入れ人数が数万人では聞きませんよね。

「ええ。いきなり複数の学園艦を廃艦にしたらそれこそ数十万という人数が押し寄せたら他の学園艦や陸の受け入れ先は大混乱です。ですから数年も待たずに複数の学園艦廃艦は文化省としては反対していました。ですが当時の政府達は何が何でも予算を獲得して日本による戦車道世界大会やプロリーグ設立を成功させようとなりふり構ない傾向があったのです。」

突然の学園艦廃艦案は文科省ではなかったのですね。

「当たり前です。あんな強引で穴だらけの提案を文化省だけで実行しようとしたらそれこそ本来なら政府の重役達に止められて実行できませんよ。先ほど話したように当時の政府達はなりふり構わないで予算を確保して戦車道世界大会やプロリーグ設立に向けて動いていたのは、何よりも政権の実績が欲しかったのです」

実績ですか?

「あの当時の政権を知ればわかると思いますが、第六十二回戦車道全国高校生大会の前に政府は与党から野党に変わりました。野党は与党と違い、国民による国民のための政治を行う事をスローガンにしていました。だが、一向にして国民が思ったような成果があがらず野党の政治問題が世間に続出した事も含めて世間では一年も待たずして野党に対して不満を抱くようになり、政府の支持率低下を抑える事が出来ませんでした。新政権としても何とか挽回したい。そこで目をつけたのが日本で開催される戦車道世界大会や近い将来戦車道プロリーグ設立でした。あの当時の日本ではマイナーな競技になりつつありましたが、ヨーロッパや同盟国のアメリカでは人気競技の一つでありました。元々日本開催は予算不足であり、何より日本ではマイナー化している戦車道の世界大会開催は疑問視されていました。そこで政府は日本による戦車道の世界大会開催を実現させて巻き返しを図ろうとしたのです。ですが、いざ実行しようとも予算が足りません。何としても予算を確保したいですがそんな都合よく直ぐに予算が出るわけがありませんでした。」

もしかして、突然の学園艦廃艦案を推し進めていたのは……。


「想像の通りです。文化省で実行していた学園艦廃艦に政府は目をつけました。元々莫大な維持費と費用がかかる学園艦の廃艦案は何が何でも戦車道世界大会やプロリーグ設立に対する予算が欲しい政府としては学園艦を廃艦にすれば莫大な維持費と費用を無くなり、来年度より莫大な予算を確保できると思ったのです。ですが文化省としてもいきなり学園艦廃艦案には反対しました。当然のように一年も待たずに学園艦を廃艦にすれば数十万ともいうべき人間の受け入れる学園艦や陸上にあるわけがありません。何より学園艦側にある程度の自治権をゆだねているのです。学園艦のトップの人間を無視していきなり廃艦に出来るわけがありません。ですが政府はこれを無理矢理実行に移そうとしました。私達がいくら問題点を説明しましても支持率低下や政権崩壊という背水の陣の状態で後がない政府としては戦車道世界大会やプロリーグ設立は何が何でも成功させる事に躍起になっていました。私としても当時の文化省局長として反対しましたが、上からの重圧があり、何より部下の人生を天秤に賭けてまで反対できる程の勇気がありませんでした。それで仕方ないと思い学園艦廃艦案を実行しようと思いました。ですが、そもそも世界大会開催やプロリーグ設立の大きな弊害は他にもありました。無論、予算不足も大きな理由の一つでしたがそれは戦車道二大流派による影響力と日本戦車道の安全基準でした。戦車道は今でこそ世界各国でプロリーグ設立もされた人気スポーツに認定されています。しかし昔はマイナーな競技とされていたのは戦車道が危険と思われていたからです。その理由を分かりやすく説明しますなら第六十二回戦車道全国高校生大会ですね」

第六十二回戦車道全国高校生大会。それは当時の黒森峰女子学園副隊長の西住みほの事故死ですよね。

「そうです。黒森峰女子学園副隊長の西住みほの様に戦車道の試合中に事故で亡くなる可能性が高い事は第六十二回戦車道全国高校生大会の前より日本戦車道連盟は分かっていました。話が変わりますが、日本による世界大会開催が世界より疑問視されていたのは日本戦車道の安全基準の認識が甘い事でもあります。安全基準が曖昧な日本主導で世界大会が開催されたら自分の国の選手が大きな怪我でもするのでは?と世界各国の戦車道協会は思っていました。そこで日本戦車道連盟は日本による世界大会開催の為に安全基準の見直しが行われようとしましたが西住流と島田流により反対されて実行できませんでした。」

それはどうしてですか?戦車道二大流派の西住流と島田流がどうして反対するのですか?世界大会開催に協力して実現できれば西住流と島田流にも流派の名を広めるチャンスと思いますが?

「普通はそう思いますね。これは話がややこしくなるのですが、西住流と島田流全体が反対したわけではありません。日本で世界大会開催が実現できれば自分の流派の名を広げられると判断して動いた勢力もありました。ですが、昔の戦車道の伝統を重んじる保守派の反対により安全基準の見直しが出来なかったのです。あの当時は……今でもそうですが日本の戦車道は西住流と島田流の影響力がとても強く、戦車道連盟の重役についている者たちの殆どがこの二大流派に所属していました。保守派は近年より安全基準が見直されてスポーツとして認識されてプロリーグ設立が行われている戦車道に対して嫌悪感を強く抱いていました。このままでは自分達が築き上げた戦車道が無くなってしまう、武道ではなくただのエンターテインメントになってしまうと危機感を覚えて伝統ある戦車道を無くさないようにと反発していたのです。まあ、そのような事もあり今まで安全基準の見直しが出来ずに日本による世界大会開催が行われなかったのですが、それは第六十二回戦車道全国高校生大会により変わりました。あの当時の西住流の師範代であり、時期家元最有力候補である西住しほの娘でもある西住みほの事故死により戦車道の安全基準の見直しが行われるようになりました。あれから二大流派の一角である西住流は大きく変わりました。そこからは貴女も知っての通りですよ。」

はい。戦車道全国高校生大会決勝戦で黒森峰の敗退。それに怒った一部の黒森峰OG達による心もとない発言により怒った黒森峰現役生と黒森峰OG達の乱闘事件。あれから世間では戦車道の安全性に対して疑問視するようになり安全基準の見直しが行われ、そして同じく西住流も大きく変わりました。

「こう言っては何ですが、西住流と深く関わっていない生徒が事故死しても政府は揉み消した可能性が高いですよ。前に話した通りにあの当時の政府は躍起になって戦車道世界大会の開催地を日本で行うようにしていましたからね。ですが、西住流の時期家元有力候補であった西住しほさんの娘が事故死した。これはとうてい無視できるものではありませんでした。元々西住みほさんは姉のまほさん程有名ではありませんでしたが西住流の次女としてテレビに出る機会も多かったのです。それで世間で顔を知られており笑顔が似合う可愛い少女の事故死は大きく取り上げられて、世間で戦車道による安全基準に対して疑問視されて他にも西住流の不祥事は悪い意味で世間の注目を集めました。」

そこからですね。警察が本腰をいれて戦車道連盟や文化省に対して本格的な調査を実行したのは

「実際そうなっても可笑しくありませんよ。元々戦車道の安全基準に疑問に思われていた中で指摘された通りに西住みほの事故死は何かしらアクションがあるはずですが、西住流も戦車道連盟も特にこれといって動いていなかったのです。この動きに戦車道に関わる人間や世間の不満が高まり、警察もついに本腰を入れて西住流と戦車道連盟に対して調査されるようになりました。後は世間の皆さまが知っての通りの誰にも隠せない黒い案件のオンパレードですよ。これにより戦車道連盟と戦車道連盟と深く関わった文化省は大捕り物が行われたわけですよ」

なるほど。本来なら政府が揉み消そうとした不祥事が西住みほさんの事故死により表に出たのですね。

「それもありますが西住流師範代でもあった西住しほさんが動いてくれた事も大きかったですね。何しろ戦車道連盟は西住流の影響力が強いですから、西住しほさんが動いてくれたからこそ警察の方もスムーズに調査ができるようになったのです。それもあり、私も真っ黒い案件に関わった為に一時は警察に捕まってしまったんですけどね」

話の流れを聞く限りでは、あの当時の役人さんは政府の方針に仕方なく動いていただけで特に問題を起こしたわけではないように思うのですが?

「警察の方も私が上からの命令でしかたなく動いていたのは認めてくれました。ですが学園艦廃艦案を無理矢理押し進めていたのは事実ですから流石にお咎め無しは出来ません。クビこそ免れましたが局長の地位ははく奪されてこうして自分は今の地方公務員の一人としているわけです。」

では最後の質問です。今の自分の現状に満足はしていますか?

「満足ですか?今は確かに大きな権限を持っていませんが人並みに満足していますよ。当初は私が今まで積み上げたキャリアが無くなって自暴自棄になった事もありますが、しかしあのまま当時の政府に従っていたは私は更に取り返しがつかない案件を任せられたと思います。私は警察に捕まってキャリアも無くしましたが同時に政府の不祥事によりあの当時の重鎮達は逮捕されて、日本の戦車道も旧勢力が排除されて良い傾向に向かった事を考えれば今の私の現状も悪くないと思います。」

ありがとうございます。今日は戦車道連盟や政府達の不祥事に巻き込まれた役人さんによる取材でした。今日は本当に協力してくれてありがとうございました。





 
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