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とある3年4組の卑怯者

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95 調整

 
前書き
 藤木と堀が仲良くしている所に文句を言いに来た笹山。しかし、己の矛盾した行動を堀に指摘され、我に返り、自分の行動を愚かだと悔いたのだった!! 

 
 笹山は家に着いた。そしてごみ箱に捨てた藤木から貰った消しゴムと遊園地へ行った記念に買ったストラップを拾った。
(藤木君、私やっぱり藤木君がいないと寂しい・・・。どうか忘れようとしないで・・・)

 学校では藤木の無視は続いた。藤木は相変わらず孤独感を感じた。しかし、彼の元に二人の男子が呼び掛けた。
「おい、藤木!いつまでくよくよしてんだよ!」
 大野と杉山だった。
「え?」
「不幸の手紙のことでいつまでも引きずんなって!」
「大野君、杉山君・・・」
「お前、スケート得意だろ!ならお前の好きなスケートで吹き飛ばしちまえよ!」
「うん、そうだね、ありがとう!」
 大野と杉山はグラウンドでサッカーしに行った。
(よし、今日も大会に向けて思いっきり滑るぞ!)
 藤木は今の状態を打破するにはやはりスケートの大会で優勝して注目を集めなければならないと考えていた。ただ、その条件として和島の華麗な演技を越える技術を見せなければならない。藤木は何か評価が上がる技は何かないかと考えた。

 みどりは堀に呼び掛けられた。
「吉川さん、藤木君が出るスケート大会なんだけど、お父さんが車出してくれるって。だから交通費は心配ないわよ」
「いいんですか?ありがとうございます!」
 みどりは堀に感謝した。だが、みどりにとって堀は友人であると共に、恋敵と見ていた。みどりは藤木にこちらに思いを向けてもらうために、どうアピールするべきか考えていた。
(どうすれば堀さんに勝てるかな・・・?)

 藤木は体育の授業でグラウンドに行く途中だった。その時、丁度まる子の姉のクラスもその前は体育のようで、藤木はまる子の姉とすれ違った。
「あ、さくらのお姉さん・・・!」
「藤木君?」
「あ、あの・・・、さくらに本当に悪かったって伝えてくれますか?」
「ああ、不幸の手紙の事ね。分かったわ。でもこっちもまる子が大騒ぎして、怒っちゃってごめんね」
「いえ、いいんです、悪いのは僕ですから、それじゃ・・・」
 藤木はまる子の姉と別れ、グラウンドへ向かった。

 リリィはまる子、たまえ、とし子と共に下校していた。
「あのさ・・・」
 まる子が口を開いた。
「アタシさあ、もう藤木の事許してやってもいいんじゃないかと思うんだ」
「ええ!?」
 リリィは藤木の名前が出て大袈裟に反応した。
「本当にいいの!?」
「うん、アイツ反省してるみたいだし・・・」
「そうだよね。あれから暫く日がたってるもんね。いつまでも引きずってちゃ、藤木だってやってられないよね・・・」
 とし子もまる子の意見に同調した。リリィは以前吉川みどりという女子に会った時を思い出していた。
(藤木君とあの子、どこか似てる・・・。もしあの子が好きな男子に嫌われているならきっと悲しいだろうし、藤木君だって同じよね・・・)
 リリィはいい加減藤木を許そうかどうか悩んだ。

 山根と永沢は藤木が走って帰る姿を見ていた。
「藤木君、今日も走って帰ったね」
「まあ、僕らには関係ない事さ・・・。藤木君が悪いんだからさ・・・」
(藤木君、君は不幸の手紙を出して皆から嫌われたのがそんなに悲しいかい?悪いけどそんな悲しみ僕の家の火事に比べたらそんなものちっぽけなものさ・・・)
 永沢は自分の最も辛い思い出と藤木の孤独を比較した。そして、火事の事を回想して胸が痛む思いがした。
「永沢君、どうしたんだい?」
「な、何でもないさ・・・」

 藤木はスケート場に着いた。そして、早速大会に向けての調整を始めた。どのタイミングでジャンプやスピンをするか、そしてそれらはどの種類をするか、ジャンプだけでも6種類ある。これらをどう披露するか、問題だった。藤木は様々なジャンプやスピンをやってみた。どれも難なくこなした。その時・・・。
「相変わらず調子がよさそうじゃないか」
 和島が現れた。
「だがボクは凄いモノをもっているんだりキミに特別な技を見せてあげよう」
和島は滑り出し、ステップを踏み出した。そしてジャンプをする。それはシングルでもダブルでもトリプルでもない。なんと四回転だった。
(四回転のアクセルだって!?)
 藤木は流石にその技術にはお手上げだった。
「どうだ?」
「ああ、凄いよ、四回転のアクセルなんて始めてみたよ」
「まあ、ボクのお得意技さ。これ以上の技をキミにも見せて見るんだね。それじゃ、お喋りはそこまでにしてボクは自分の練習をさせてもらうよ」
 和島はそう言って滑って藤木から遠ざかった。藤木は自分のスタイルを思い起こした。自分はどんなジャンプもスピンもやってのける。ただ、自分にしかできないと言えるような技は特にはない。これでは和島には勝てないかもしれない。藤木は自分にしかできないような事を模索した。
(どうすれば勝てる?どうすれば自分だけの必殺を作る事ができる?)
 藤木は滑りながら考えたが、その日の内には答えを見出だせなかった。

 夜、藤木は母から郵便物を貰った。
「茂、スケート協会から郵便が来たよ」
「え?ありがとう」
 藤木は封筒を開けると、出場確認証だった。「当日、この確認証を係の人にお見せください」とあった。また、登録番号(エントリーナンバー)も記されていた。藤木は14番だった。また、宿泊費と交通費の請求書も同封されていて、そこに金額の記入欄があり、そこに記入して当日係の人に提出するようにあった。さらに招待券も10枚同封されていた。
(招待券・・・、そうだ、これを堀さんとみどりちゃんに渡そう、あと、父さんと母さんにも・・・)
 藤木は大会へと胸を膨らませた。

 翌日も藤木は和島に勝つためにはどうすればいいのか考えた。
(あの子に勝つための方法は・・・)
 藤木は自分を顧みた。どんな難易度の高い技術もやってのける。なら、和島が四回転アクセルを得意として、他の技で勝負できるものは?もし自分がアクセル以外でアピールできるものは?いくらでもある。なら、自分ができる全ての技を披露すればどんな事もこなす万能な人間だと評価される。向こうが彼のみの特有な技を見せるというならこちらは全てのジャンプやスピンの正確さを見せればいい。ただそれにはほんの僅かなミスも犯さなければよい。藤木はそう考えた。
(よし、ならいけるかも!)
 藤木は燃えた。

 笹山は丸尾に頼み事をしていた。
「丸尾君、お願いなんだけど、藤木君に不幸の手紙を送った人を探し出して欲しいの」
「はあ?なぜワタクシにあんなもの送り付けた藤木君の為になる事を!?お断りします!!」
「どうして!?学級委員でしょ!?」
「嫌です!幾らワタクシが学級委員でも嫌な目に合わせた方の為に動くなど、ズバリ嫌でしょう!!」
 丸尾はそれ以上、笹山の話を聞かなかった。
(どうすれば、藤木君を助けてあげられるの・・・!?)
 笹山は事件の解決に右往左往せざるを得なかった。

 藤木はスケート場で自分ができるジャンプ、スピン、ステップ全ての種類をやってみた。どれも失敗なくできた。しかし、全てできるのはいいものの、やはり何か足りないと感じた。
(やっぱり何か特徴づけるものが欲しいよな・・・)
 藤木はそう思いながらもジャンプをやった。どれだけできても特徴づいたものがなければ・・・。その時、藤木はジャンプした時、左手が一瞬踵に当たった事に気づいた。
(そうだ!これなら・・・!)
 果たして藤木が思いついたのは・・・。 
 

 
後書き
次回:「御殿場」
 和島に勝つために練習を続ける藤木に、大会の開催地、御殿場へ向かう日が来た。そして、永沢の家にはある人物から電話が掛かってくる・・・。
 

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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