儚き想い、されど永遠の想い
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154部分:第十二話 公の場でその十二
第十二話 公の場でその十二
「滝廉太郎の曲です」
「そうですね。あの音楽家の」
「素晴しい音楽家です。しかしです」
「はい、夭折していますね」
「残念なことに」
滝廉太郎は労咳で死んでいる。これを話すとだ。
義正はだ。残念さを浮かべる顔で真理に述べた。
「あの病によってどれだけの人が死んだことか」
「脚気と同じくですね」
「脚気も。労咳も」
その二つの病は共にだというのだ。
「忌むべきものですね」
「全くですね」
「陸軍ではです」
ここで義正はだ。陸軍の話をするのだった。
「脚気がかなり流行ったそうですね」
「そうなのですか」
「はい、先の二つの戦争ですが」
「日清と日露ですね」
「その二つの戦争では脚気で随分と困ったそうです」
「脚気よりもですか」
「そうです。どうやら食生活にあったようで」
義正は話した。その陸軍の脚気のことをだ。
「白米ばかり食べているとそうなるようです」
「脚気になるのですか」
「はい、どうやら」
こう話すのだった。真理にだ。
「白米ばかりもよくないようです」
「白米ばかりだと脚気になるのですか」
「海軍の方に御聞きしました」
今度は海軍の話が出た。陸軍と共に日本を護る両輪の彼等もだ。
「白米ばかりだとです。かえってよくないそうで」
「不思議ですね。脚気が食べ物によってなるとは」
「私も最初信じられませんでした」
そのだ。脚気が食事からなるものだということがだ。
「しかし実際にです」
「陸軍では白米ですか」
「それに対して海軍は麦です」
「麦飯ですか」
「それを主に食べているそうです」
これは実際の話だ。海軍も最初は白米だったがそれを変えたのだ。その麦飯に替えるとだ。脚気がなくなったからだ。それでそうしたのだ。
「その海軍には脚気がなくです」
「陸軍にはあった」
「特に将校の方々はです」
軍には将校と下士官、兵士がある。そのだ。将校ならばだというのだ。
「最初から脚気にはなられませんでした」
「将校の方はですか」
「海軍のです」
ここにだ。何かあるのではないかとだ。海軍では考えられたのだ。
「海軍の将校の方は主に洋食を食べられています」
「洋食といえばパンですね」
「はい、パンです」
そのパンといえばだった。
「パンは麦ですね」
「それでは麦は」
「脚気にいいのは間違いないようです」
そのだ。脚気にはというのだ。
「真理さんはどうでしょうか。パンは」
「食べます」
それはだ。食べているというのだ。
「それに洋食もです」
「召し上がられていますか」
「そのせいか脚気になったことはありません」
こう義正に話すのだった。
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