儚き想い、されど永遠の想い
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141部分:第十一話 断ち切る剣その十五
第十一話 断ち切る剣その十五
「そういうものなのだ」
「後になってですね。本当に」
「その時は必死でわからない時がある」
それがだ。維新の頃だったというのだ。具体的には。
「周りも見えていなくな」
「そうでしたね。まことに」
「あの二人はどうか」
そしてだった。話が義正と真理のことになった。
「今は幸せを感じているのだろうか」
「おそらくは」
従者はだ。すぐに彼に話した。
「そうだと思います」
「そうか。それならいいが」
伊上もだ。その話を聞いてだった。
顔を綻ばさせて言った。そのうえでだった。
「では。その幸せがだ」
「これからも続くことをですね」
「幸せを築くことは難しい」
まずはだ。そのことを話したのだった。
「しかも築いてそれで終わりではない」
「それからもありますね」
「その通りだ。幸せを維持していく」
次にはだ。それがあるというのである。
「それもまた同じだけ難しいのだ」
「創業と守成ですね」
「その通りだ」
従者の言葉に微笑んで返す。
「国家でもそうだがな」
「何かを築き上げてそれを守っていくことは同じですね」
「同じだけ困難だ」
また話すのだった。そのことを話しながらだ。
伊上は己の頭の中であることを考えていた。それは。
「支那の過去の国でだ」
「過去のですか」
「そう、唐だ」
支那の歴史上において黄金時代とされる時代の一つだ。この王朝の頃にはシルクロードが栄え都長安は繁栄を極めた。多くの詩人も生まれた時代なのだ。
「あの王朝の皇帝で太宗という皇帝がいた」
「太宗ですか」
「名前を李世民という」
「それがその皇帝の名ですね」
「唐の第二代の皇帝だ」
名君として知られている。唐の基礎を築きそれを磐石にし民を安んじたというまさに教科書にあるが如き名君であったのだ。軍略も優れていた。
「あの皇帝の話であったのだ」
「その創業と守成の話がですね」
「それがあったのだ」
「そのどちらがということですか」
「最初は創業の方が困難とされた」
即ちだ。幸せを築くことがだ。
「しかし家臣達と話をしてそうではないとなったのだ」
「守成もですか」
「それもまた困難だとわかったのだ」
そのことには重臣の魏徴の影響が大きかった。太宗を諫めることにより彼の鏡ともなった人物である。稀代の名臣の一人である。
「維持することがどれだけ難しいかということでだ」
「確かに。今もですね」
「我々は明治維新で多くのものを築き上げた」
それがだ。まさに創業だった。
「しかしそれだけでなくだ」
「それに加えてですね」
「そうだ。今もこうしてそれを守っている」
維新でだ。築き上げたものをだというのだ。
「戦争もあったな」
「日清、そして日露ですね」
「とりわけ日露だった」
先の大戦のことよりもだ。そちらなのだった。
「日露戦争では。全てを賭けて戦ったが」
「あれも守成になるのですね」
「我々は日本を守る為に戦った」
その強大な露西亜とだ。そうしたのがその戦争だったのだ。
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