儚き想い、されど永遠の想い
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100部分:第九話 知られたものその六
第九話 知られたものその六
「それじゃあだけれど。何時か」
「その時が来られたなら」
「勇気を出さないとね」
「これも私の考えなのですが」
佐藤はここでも前置きしてから話す。慎重な彼の性格が出ていた。
「勇気とはです」
「勇気とは?」
「常に出す必要はないものなのです」
そうだとだ。己の主に話す佐藤だった。
「そういうものではないと思います」
「常に出すものではない」
「見せるものでもありません」
見せるという言葉を出してだ。すぐに笑顔でこんな風にも話した。
「目にはっきりと見えるものではありませんが」
「感じるものだね」
「はい、ですが」
「見ると感じることは同じなら」
「そうなるものです」
「そうだね。話を聞くと」
義正からだ。そのことを話した。佐藤の話を聞いて実際に思ったことをありのままその佐藤に対して返す形で話してみせたのである。
「勇気というのは刀だね」
「刀ですか」
「武士が腰に持っている刀だね」
まさにだ。それだというのだ。
「今なら銃か」
「刀ではなく」
「今の軍人の人達は刀を銃に持ち換えているから」
これは当時の考えである。日本軍は誰もが武士になれるという四民平等の考えがあるのだ。だとすれば刀はどうなったかというのだ。
「そういうことになるね」
「そうですね。では銃にしてみるとです」
「そうして考えると」
「やはり答えが出ますね」
佐藤は微笑んで義正に話す。
「銃はいつも撃つものではありませんね」
「そうだね。持っていても」
「勇気とはそういうものです」
「常に持ってはいるけれど」
「見せるべき時に見せるものなのです」
それがだ。勇気だというのだ。
「大事なのは勇気を持たれ。それを出すべき時に出されることです」
「そういうものだね」
「そうです。そして」
「そして?」
「旦那様にはそれがあります」
義正をそれまで以上に見てだ。そのうえでの今の言葉だった。
「勇気がです」
「僕に。あるかな」
「あります。御安心下さい」
また笑顔で義正に告げる佐藤だった。
「旦那様ならばです」
「それができるんだね」
「勇気。しかも知のある勇気です」
義正の勇気はだ。それだというのだ。
「それがありますから」
「知のある勇気」
「知勇と申しましょうか」
勇気と言っても色々あるがだ。義正の勇気はそれだというのだ。
「そして愛に最も適した勇気はです」
「知勇だね」
「そうです。それが旦那様の勇気です」
「蛮勇でも武勇でもない」
「旦那様は向こう見ずではなくそして剣を持たれる方でもありませんから」
「知勇だね」
それでだ。彼の持つ勇気はそれになるというのだ。
「それだというんだね、僕の勇気は」
「知勇のままに進まれて下さい」
笑顔はそのままだ。そのうえでの彼への言葉だった。
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