魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica7-Fそうだ、合宿へ行こう~Walhalla~
†††Sideイクスヴェリア†††
デデン♪と、クイズ番組の出題時に使用されるような効果音が鳴り、『問題です!』とどこからともなく声が発せられた。そんな中、コロナは「きゃーきゃー! 来てる、来てるからぁー!」そう悲鳴を上げっ放しです。
「偽者だって判っててもかなり怖いぃー!」
ヴィヴィオもコロナと同じように背後を何度も振り返りつつ、私たちの行く手を遮る両開きの扉を見詰める。背後から迫って来るのは、四つん這いや匍匐などの姿勢のゾンビと呼ばれる人たち。死体を兵器に変えるという私の性質状、ゾンビという存在にはさほど恐怖を感じませんけど・・・。
(ヴィヴィオやコロナ、悲鳴を上げてはいませんけどリオにとって、あれほどのグロテスクな死体が動き、迫ってくる様は確かに恐ろしいでしょうね)
眼球が無かったり、垂れ下がっていたり、所々が骨、肉や臓器が見え隠れしていますし。私たちが今いるココも、僅かに薄暗いですから余計に不気味に映ってしまいますね。
「ヴィヴィオ達には指1本と触れさせない!」
――コード・デリンジャー――
フォルセティは、矢面に立つようにゾンビの大群と対峙しており、両手の人差し指の先端に生成した魔力球より魔力弾を連射して、これを迎撃しました。大変格好いいですが、吹き飛ばされたゾンビは絶えることなく、次から次へと通路の奥から向かってきています。
『回答者コロナ。現在、管理世界に流通しているデバイスの種類を答えよ』
「え!? あ、はい! インテリジェントデバイス、ストレージデバイス、アームドデバイス・・・えっと、すっごく珍しい融合型デバイス、です!」
コロナが出題された問題に解答しますと、ピンポンピンポーン♪と正解を示す効果音が聞こえて、閉ざされていた扉が自動で奥へ向かって開きました。急いで扉を潜りますと、その扉はすぐに閉まってくれたので、迫り来ていたゾンビともお別れです。
「助かった~」
「うぅ・・・。ここに来る前に、エインヘリヤルがモンスターに変装していると聞いたけど、本格的すぎてやっぱり怖い・・・」
「ねえ、フォルセティ。ルシルさん、ホントすごいね~」
ヴィヴィオは扉に背を預け、コロナは赤い絨毯の敷かれた廊下に座り込み、リオは苦笑をしながらルシルさんのことを称えた。
「正直、お父さんのヴァルハラに来たのは初めてだから、僕もここまですごいなんて思わなかったよ」
そう、私たちは今、ルシルさんの精神世界に展開されているという創成結界・“ヴァルハラ”へとやってきています。とはいっても、肉体は現実にあり、精神だけが“ヴァルハラ”に移されているのですが・・・。それだけでも十分凄いことですよね。
・―・―・回想です・―・―・
とても美味しい夕食をいただた後、なのはさん達や“スキュラ”のみなさんのおかげで完成した露天風呂に、私たち女性のみが堪能中。ちなみにルシルさんとフォルセティは後で入ります。
「みなさん、今回は本当にありがとうございました」
「おかげで露天風呂施設やアスレチック、一気に充実できたよ♪」
「私からもお礼を。本当にありがとう。アルファ達も、ありがとう」
ルーテシア、リヴィア、そしてメガーヌさんが礼を述べました。本当に驚く速さで完成しましたね。製作に携わったなのはさん達が「どういたしまして♪」と返し、アルファ達は「命令だから仕方なくよ」と言って肩まで浸かりました。何気に楽しんでいましたよね。
「えー、コホン。ヴィヴィオ、コロナ、リオ、フォルセティ、んでイクス。第1回カルナージ合宿はどうだった?」
ノーヴェの問いに私たちは迷うことなく「楽しかった!」と答えました。私はどれも初体験が多く、綺麗な川で泳ぐなんてそれこそ堪能しました。だからこそ「私は、これからも多くの初体験を続けていきたいです。早く学院に通ってみたいです」と感慨深くなる。
「うんっ。すっごく楽しいよ♪」
「勉強は大変だけどね~」
リオががっくり肩を落としたところでアイリが「ところで宿題の進捗はどう?」と尋ねました。夏休みが終わるまでまだ2週間ほどあるようですので、まだ残っていそうなものですが・・・。
「僕はもう終わらせたよ」
「わたしは7割くらいかな~」
「私もヴィヴィオと同じくらい」
「・・・半分ちょっと。ちょっと遊び過ぎてた所為かも・・・」
ヴィヴィオ達の進捗情報に再び肩を落とすリオは勉強が苦手、というわけでもありませんが、遅れているようです。言っている通り少し勉強に時間を割かなかったからでしょうね。
「イクスはどう? フォルセティ達からいろいろと見聞きしているそうだけど」
「あ、はい。その、これまで必要のなかったものでしたので、少し苦労していますが・・・」
冥府の炎王としての私は機能でしたから、勉学など読み書きが出来さえすれば問題なかった。魔法にしても、マリアージュのコア生成は一種のスキルでしたし、私は本当に何もなかった。
「そっか~。・・・よし。じゃ、イクスに補習をプレゼントしよう」
まさかの提案に私が「はい?」と小首を傾げていると、アイリはモニターを展開して「もしもーし」と言うと、通信相手から『入浴中にどうした?』そう応答がありました。その声は紛れもなく「ルシル君!?」の声だったので、そう発したはやてさんをはじめに、私とアイリ、それにアインスさん以外のみなさんが一斉に鼻の下まで湯船に浸かりました。
「大丈夫だよ。サウンドオンリーだから、ルシルにはこっちの様子は見えてないから♪ ルシル、相談があるんだけど・・・」
・―・―・終わりです・―・―・
こうしてアイリとルシルさん主催の補習が始まったのです。最初にヴィヴィオ、次にフォルセティ、先ほどのコロナと出題され、3人は間違えることなく正解を示しました。みんなで一息吐いているところで・・・
「「「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛・・・!」」」
「「っ!?」」
どこからともなく呻き声のようなものが聞こえ、さらにはゴロゴロと雷鳴が轟き、廊下の窓が光り、ドォーン!と落雷。
「「~~~~~っ!!?」」
声にならない悲鳴を上げたヴィヴィオとコロナは、近くに居たフォルセティに抱きついて、そして3人一緒に転んでしまいました。
「あははは! なに今の! おもしろーい!」
その様子にひとり笑うリオでしたが、窓がバンッと叩かれた音に「ひぅっ!?」びくりと肩を竦ませ、私も「なんです!?」と思わず目を瞑ってしまった。私は音の出所を探して、窓の外へと視線を向けたその時、「バァ!」とおよそ人とは思えない青白い顔をした女性が数人、窓の外からこちらを覗き込んでいました。
「にゃぁぁぁぁぁ!?」
「ひゃぁぁぁぁぁぁ!」
「ぐげぇぇ・・・!」
ヴィヴィオ達がまた悲鳴を上げ、2人にしがみ付かれているフォルセティは呻き声を上げたので、私は急いで「2人とも。もうその辺りで」と彼の救出に動く。コロナはすぐに顔を真っ赤にして、謝りながら離れましたけど、ヴィヴィオは離れることなくフォルセティと一緒に立ち上りました。
「もう大丈夫だってヴィヴィオ。もう居ないから・・・」
「う、うん・・・。洋館に薄暗い中での雷にお化けって・・・。ルシルさん、イジワルだよ・・・」
「ヴィヴィオって案外怖がりだよね♪ ビックリはするけど、そこまでビビる事ないじゃん♪」
そう言って胸を張るリオに視線が集まり、「あ・・・」彼女の身に異常が起きる瞬間を目にしてしまいました。ヴィヴィオとコロナが「リオ、足、足」と指差すのですが、リオは自分を怯えさせようとしている、と考えたようで「その手には乗らないよ♪」と満面の笑顔。
「あの、リオ。足元を見た方が・・・」
「え? イクスがそう言うなら・・・」
私の言葉には耳を貸してくれたリオが自らの足元へと視線を移し、「~~~~~っ!!?」声にならない悲鳴を上げました。床より顔と両手のみを出し、リオの両足にしがみ付く亡霊が複数体。
「き、気持ち悪いぃぃーーーーー!」
リオは魔法陣を展開して、全身から炎と電撃を発しました。亡霊はそれを受け消失。それらに疲れながらも私たちは再び歩みを進め、新たな扉の前に辿り着いた。
『問題です! 回答者フォルセティ。魔法を発動させる為の行為をトリガーと言いますが、その種類、内容を答えよ』
出題されたと同時、廊下の窓すべてからバンバン!と叩く音が鳴り始め、さらには何十体の亡霊がガシャン!と割って入って来た。亡霊の呻き声と雷鳴による音響攻撃が、ヴィヴィオとコロナの精神を削っていってしまいます。
「フォルセティ! 急いで!」
「う、うん! えっと、呪文詠唱、コマンド、アクショントリガー、デバイスによる自動発動の4つ! 呪文は、儀式魔法や大規模な魔法発動に必要。コマンドは、単一音声による発動。アクショントリガーは、設定した特定の動き。デバイスの自動発動は、そのままの意味」
『ピンポンピンポーン♪』
正解を示す効果音が鳴るとともに扉も開き、私たちは急いで扉を潜りました。また一息吐こうとしたのですが、バンバンバン!と閉じたばかりの扉が力強く叩かれたので休む間もなく次の扉へ。この廊下では、窓でもなく廊下を隔てる扉でもなく、いくつもの部屋を隔てる扉が連続で開いていきました。
「来る!」
「あぅ・・・。もう叫び過ぎて喉が・・・」
「うん。痛いよね・・・」
ヴィヴィオとコロナが喉を押さえながら1歩2歩と後退したところで、「アアアアア!」そうゆう呻き声と共に扉からが亡霊出てきた。これまでならここで悲鳴を上げていたヴィヴィオとコロナでしたが、今度は悲鳴を上げることなく亡霊たちを同情の目で見ました。亡霊たちも気付いたようで、呻き声を出すのをやめて棒立ちになりました。
「笑いたければ笑えばいいじゃない」
「昼は露天風呂つくりで、夜は夜でこんな仮装で脅かし役・・・」
「まぁデルタは楽しんでやってるけどね~」
「生前では経験できなかった事を出来ていますし」
「だからってセクハラだけは許せないと、イプシロンは付け加えておきますが」
そう。亡霊の正体は、先ほどまで一緒に温泉に浸かっていた“スキュラ”の5人。と思ったのですが、見知らぬ6人目が居たので「ん・・・?」と小首を傾げる。ヴィヴィオとフォルセティが「ガンマ・・・!」と驚きました。前髪で目元が完全に隠れていますが、血の涙の化粧が施されているのが見えますね。
「ガンマ・・・」
「えっと、久しぶり・・・」
「ウチのこと憶えているんだ、驚いた。久しぶり、プリンツェッスィン、プフェルトナー」
†††Sideイクスヴェリア⇒ヴィヴィオ†††
ルシルさんの“エインヘリヤル”として召喚されていなかったガンマが、お化けの仮装をして(させられて?)わたしとフォルセティの前に現れた。憶えているんだ、って驚かれたけど、正直あんまり記憶に残ってない。直接会ったことは一度もなくて、モニター越しに何度か話したことがある・・・だけだったはず。
「ガンマ、それ違う。僕はフォルセティ、そしてヴィヴィオだよ」
「・・・そ。まぁこれで亡霊役も終わりだし、ウチはこれで失礼するよ」
「私も。全く驚いてくれたかったもの」
「なら私も。我々の神器王は本当に人使いが荒い」
ガンマに続いてアルファとベータが、「またね」ってわたし達に手を振りながら去ろうとするんだけど、足を止めて右に左とキョロキョロして「どうやったら帰れるのかしら?」ってアルファが首を傾げた。
「それにこの仮装も戻らない」
「ウチ、アルヴィトに戻って早く続きを読みたいんだけど」
肩を落としてるアルファ達と違って、デルタが「まあまあ、いいじゃんか♪」って笑った後、「あ゛あ゛あ゛♪」って呻き声を発しながらわたし達に駆け寄って来て、わたしをギュってハグした。
「イプシロンとゼータも、せっかくなんだから楽しもう! ほらほら、フォルセティとコロナとリオが空いてるから♪」
「これもまた、マスターからの指示ですからね。では、コホン。お、おああああああ!」
「イプシロンも参ります。が・・・ガオォォーーーー!」
ゼータはコロナに、イプシロンはリオにハグ。わたし達の視線が余ったフォルセティに集まると、「僕は男子だから」ってちょっと寂しそうに苦笑い。そうしたらデルタがわたしから離れて、「じゃあデルタがやる~♪」って言ってフォルセティをハグしたところで・・・
『問題! 回答者イクスヴェリア』
イクスが指名された。わたし達は「頑張って!」って声援を送ると、イクスが「頑張ります!」と意気込んだ。イクスは夏休みが終わってからの編入になるけど、これまでに何度か一緒に勉強会を開いたから、すごく難しい問題じゃなかったら答えられると思う。
『魔法資質と魔力資質について答えよ』
「はい。魔法資質は個人個人で差のある、得意な魔法技術の種類、といいましょうか。遠隔発生、近接、放出などなどがあります。魔力資質は遺伝性が強く、その使い魔も似た資質を得ることが多いそうです」
以前、勉強会した時に教えた模範解答を、イクスはスラスラと答えた。正解音を待つまでもなく正解だってわたし達は判ってる。遅れて正解音が鳴って、ドアが勢いよく開いた。
「やりました!」
喜ぶイクスに「おめでとう!」を送って、わたし達はハイタッチを交わしてから先へ向かおう・・・とする前に、「アルファ達はどうするの?」って聞いた。
「そこの部屋で待っているわ。あなた達がゴールすれば、自ずとこのふざけた仮装も元に戻るでしょうし。デルタ、あなたもそれでいいわね? 変に付いて行って馬鹿な目に遭わされるのは勘弁よ」
「へーい。じゃあね」
手を振って見送ってくれるデルタ、それにイプシロンとゼータにわたし達も手を振って、次のドアへと向かうために歩き出す。ドアを潜って長い廊下に足を踏み入れた瞬間、「ほわっ!?」床がグニャッと沈んだ。そしてボヨンってトランポリンみたく跳ねる。
「わはは♪ すごいすごい! めっちゃ跳ねる♪」
「あぅ~!」
リオはすぐに体勢を立て直して廊下を楽しんでて、コロナはされるがままに跳ね続けてる。わたしもなんとか体勢を立て直そうとするんだけど、「む、難しい」からお尻で跳ねちゃってる。
「あの、フォルセティ、リオ。よろしければ手を貸して頂けませんか?」
「あたしが近いから手を貸すよ。フォルセティは、ヴィヴィオとコロナの方を手伝ってあげて~」
フォルセティの方を見れば、フォルセティもすでに体勢を立て直して床に着地してた。わたしとコロナは一緒に手を差し出した。距離的に2人とも同じくらい。フォルセティはわたしとコロナ、どっちを先に助けてくれるだろう。わたしだったら嬉しいな、って思ってた時もありました。
「フローター!」
フォルセティが対象を浮遊させる魔法を発動して、わたしとコロナを浮かばせた。なんだろう、なんか納得できない。フローターのおかげでゆっくりと体勢を立て直せたわたしとコロナはそのまま着地。
「大丈夫だった2人とも?」
「「・・・うん。ありがと」」
「・・・? とりあえずフローターフィールドで足場を作れば、トランポリンの廊下をカット出来ると思う」
フォルセティが足元にベルカ魔法陣を展開して、廊下の床から少し離れた位置にフローターフィールドを、廊下と同じ長さになるように何十枚と一気に発動。最初にフォルセティが上がって、踵でコンコンとフィールドを蹴って、「よし。大丈夫。ヴィヴィオ、手を」って手を差し出してくれた。
「あ、うん、ありがとう♪」
それだけでさっき抱いた不満が消し飛んだ。フォルセティの手を取って足場に上がって、それからコロナ、イクスと続いて、リオは自力でピョンっと上がった。次のドアまでてくてく歩きながら「今度はリオだね~」って喋っていると・・・
『Warning ! Warning ! Warning !』
そんな警告が廊下に響いた。さらにわたし達が通って来た廊下の奥から「ズルは禁止なのだぁ~」って声がした。後ろに振り返ると廊下が綺麗さっぱり無くなっていて、代わりにブラックホールのような真っ黒な渦があった。声はそこから聞こえてくるみたい。
「フォルセティ! ズルはナッシング!」
渦から出てきたのは、大砲2門を背中に備えた機械のドラゴン?と、その首に跨った「リヴィー!?」だった。リヴィーも“ヴァルハラ”に行きたいって言ったから、一緒に来たんだけど姿が無かったから心配してたんだけど・・・。
(お化けの仮装をしてるってことは、エインヘリヤル・・・?)
廊下いっぱいの大きさのドラゴンが雄叫びを上げると、「っ!」ビリビリと肌や窓が震えた。リヴィーが「再度警告! ズルはダメ!」って言うと、ドラゴン?の頭をポンポン叩いた。するとドラゴン?の口が開いた。
「「「「リヴィー!?」」」」
なんと口の中にもう1人のリヴィーがうつ伏せで寝転がって、両手で頬杖を突いていた。こっちのリヴィーは仮装してないからきっとオリジナルだ。そんなオリジナル・リヴィーが「やっほー♪」って笑顔を浮かべた。
「ちょっ、何やってんのリヴィー!」
「えー? エインヘリヤルの私と一緒に、ヴィヴィオ達が不正をしないかの監視をしてるのー!」
わたしの質問にそう答えたリヴィーに、「そんな勝手に・・・!」ってフォルセティが言うと、2人のリヴィーが同時に「勝手じゃないよ」って頬を膨らませた。
「ここヴァルハラの主、ゼフィランサスさんって人に頼まれたんだもん」
ゼフィランサスって、ルシルさんの亡くなったお姉さんだよね。“スキュラ”も大変な目に遭わされてるって言う・・・。わたし達とはぐれた後、そんな事になってたんだ・・・。
「ま、そういうわけだからね。ズルは無しってことで。さあ、ムゲンドラモン! 悪い子たちにお仕置きだ! スタンバイ!」
ムゲンドラモンっていう名前らしいソレの大砲がこっちに向いたから「ストップ、ストーップ!」わたし達は大慌て。フォルセティも「すぐに解除するから!」って言った瞬間・・・
「∞キャノン!」
砲撃が発射された。フィールドを全力で走って次のドアを目指したんだけど、「きゃあああああ!」間に合わなくてわたし達は吹っ飛んだ。そして床に叩き付けられた・・・んだけど、ボヨンボヨンと跳ねて、吹っ飛ばされた勢いのまま前に向かって跳ね続けちゃう。
「お?・・・了解です! おーい、ゼフィランサスさんから、脅かし役と出題役をするよう頼まれたから~」
「このまま攻撃続行~♪」
まさかの展開に「ちょっ・・・!」と待って、って言おうとしたけど・・・
――∞キャノン――
それより早く砲撃が放たれてきた。しかも連射してくる。見た目は砲撃というより射撃に近くなったかな。威力もそんなにないようだし。でもその所為でわたし達は「にゃあああ!」トランポリンのような床に玩ばれることに。ムゲンドラモンの攻撃が床に着弾すると、それはもう床がうねるうねる。
「じゃあそろそろ問題です! 回答者はリオ!」
ドアが見えてきたところで出題されたと同時に、ムゲンドラモンからの攻撃も止んだ。“エインヘリヤル”のリヴィーから「出題・回答中は手を出さないからね」って安心できる言葉が。
「じゃあリオ!」
「頑張って!」
「うんっ! どんと来い!」
「魔力変換資質について答えてちょ~だい」
そう出題された瞬間、「よし! コレは即答できる!」ってリオがガッツポーズ。
「えっとね~。魔力の変換を意識しなくても出来ちゃう資質のこと。ある種の才能だけど、その代わり純粋魔力の大量放出を苦手になっちゃうってデメリットがあったりするんだよ。炎とか雷とかの資質保有者は結構多いみたいで、凍結が珍しいんだ。ちなみに保有者じゃなくても魔力を変換することも出来るね。ま、保有者に比べて手間が掛るから、普通はわざわざ変換しないみたいだけど」
リオやフェイトママやアリサさん達が前者で、フォルセティやルシルさん達が後者だ。そんな自信満々な回答をしたリオを称えるかのように『ピンポンピンポーン♪』正解音が鳴って、ドアが開いた。大手を振ってドアを潜るリオに続いてわたし達も潜った。
「あれ? リヴィー達は?」
2人のリヴィーとムゲンドラモンが付いて来なかったからそう聞くと、「そこはエリア外だから」って答えてくれたと同時、バンッとドアが閉まった。
「脅かし役や出題役を任されたという話でしたが、もう終わったのでしょうか・・・?」
「だよね~。まさかもうクビになったとか?」
「さすがにそれは早すぎだよ」
そう話しながら廊下を進んでると、「おーい!」どこからかリヴィーの声が聞こえてきた。さらにもう一度「おーい!」って声がして、ふと窓の外を見ると、綺麗な白いドラゴンに跨った2人のリヴィーが手を振ってた。
「じゃあ早速、始めるよ~」
「元気よく走ってね~」
「「ブルーアイズホワイトドラゴンの攻撃! 滅びのバーストストリーム!」」
ドラゴンの開いた口から「また砲撃ぃー!?」が発射されてきて、窓を突き破り、廊下を横断して、壁を穿った。しかも「また連射!」で、わたし達は全力で次のドアを目指して走り出す。止まったら確実にアウトだもん、あの威力。
「問題! 2週目! 回答者ヴィヴィオとフォルセティ、2人一緒に!」
「うえっ!? こ、こんな時にー!?」
「ドアも見えてないのにぃーーー!」
「ほらほら、行くよ! 魔法分類を答えよ! ヴィヴィオはミッド・ベルカの攻撃について、フォルセティは防御・補助・結界・捕縛の種類!」
ブルーなんとかドラゴンの砲撃から逃げてる最中で答えさせるこの酷さ。とにかく、答えないと始まらないし終わらない。
「ミッド! 射撃、砲撃、打撃、斬撃、魔力斬撃、遠隔発生、広域攻撃! ベルカ! 魔力付与攻撃、射撃!」
「正解!」
答えてる最中にドアが見えて来て、オリジナル・リヴィーがそう言ったと同時にドアが開いた。ドラゴンからの砲撃が途切れたけど、わたし達はスピードを落とさずにドアを潜る。そして勢いよく閉まった直後、扉を破壊して現れたのは巨大な蛇?
「次、フォルセティ!」
「ハガネール! 当たらない程度にかみなりのキバ!」
放電する牙での噛み付きをしてくるハガネール。“エインヘリヤル”・リヴィーが当てないように、って注意してくれたのは助かるけど、後ろから聞こえてくる歯の打ちつけ音が怖すぎるよ。
「防御。シールド、バリア、フィールド。補助。インクリー、デクライン。結界。サークル、エリア。捕獲。バインド、ケージ。以上!」
「お、正解!」
正解はしてもハガネールとの追い駆けっこは終わらない。まだ追ってくるし、ドアは見えない。それどころか「行き止まり!?」だった。でもフォルセティがすぐに「階段! 踊り場だよ!」って言ってくれた。急いで階段を上って、1つ上の階層に足を踏み入れるとすぐに足り出す。
「も、もう、限界、かも・・・!」
肩で大きく息をしてるコロナがとうとう足を止めた。それに構わず壁に出来た黒い渦からは「次の問題いくよ~」って、骨格だけの四足歩行動物に跨った2人のリヴィーが出て来た。フォルセティが「俺が背負う!」ってコロナを背負った。羨ましいな~って思いながらも、そんな余裕がないことにげんなり。ここはフォルセティに任せて、わたし達は走り続ける。それから何度か問題を解いたあと・・・
「そこがゴールだよ」
「全20問、ミス無しでクリア♪」
「んじゃ、私は先に戻ってるね~」
辿り着いたのは大きなドア。オリジナル・リヴィーの姿が蜃気楼のように消えて、“エインヘリヤル”・リヴィーは「ささ、入って入って!」って促してくれた。頷いたわたし達はドアに手を置いて、「せーの!」グッと押して開く。すると眩い光が溢れ出してきて、ふわっと浮遊感が襲ってきた。
「おめでとう! これからも勉強を頑張って、誇れる自分になってね♪」
最後に女の人の声が聞こえた。こうして“ヴァルハラ”での補習は終わって、そして2泊3日のカルナージ合宿も終わりになる。わたし達は“ヴァルハラ”から帰ってすぐに就寝。そして最後のメガーヌさんお手製の朝ご飯を食べた後、いろいろと片づけ。そして次元港へ。
「メガーヌさん、ルーテシア、リヴィア。お世話になりました!」
なのはママに続いて「お世話になりました!」ってお礼をした。
「はいっ。ホテル・アルピーノをこれからも御贔屓に♪」
「「御贔屓に♪」」
こうして第1回カルナージ合宿も無事に終わった。
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