真田十勇士
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巻ノ百十八 方広寺の裏その二
「そして話してじゃ」
「切支丹を止めさせる」
「それを認めたことを」
「それが幕府の狙いですか」
「本題は切支丹ですか」
「方広寺は全く無視してもよい」
幕府にしてもというのだ。
「実はな、しかしな」
「切支丹は違う」
「あの者達はですな」
「違う」
「放ってはおけませぬか」
「そうじゃ」
どうしてもというのだ。
「あの者達は天下を乗っ取り民を奴婢にする」
「そうした者達だから」
「どうしてもですな」
「放っておけぬ故」
「豊臣家に認めるのを止めさせる」
「それが幕府の狙いですか」
「そうじゃ、幕府は切支丹はどうしてもじゃ」
何があろうともというのだ。
「認められぬ、だからな」
「若し豊臣家がそれを聞かねば」
「その時は、ですか」
「戦もですか」
「有り得ますか」
「そうじゃ、幕府もその時は覚悟を決めてじゃ」
そしてというのだ。
「戦を選ぶ」
「切支丹を認めぬのなら」
「どうしても」
「そうせざるを得ませんか」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「その時はな」
「では豊臣家からの者はですか」
「切支丹のことを話されますか」
「幕府から」
「そうなりますか」
「そうなる、しかしな」
幸村はさらに話した。
「その使者の方が納得されてもな」
「茶々様ですか」
「問題はあの方ですか」
「あの方が問題ですか」
「やはり」
「そうじゃ、使者から言われてもな」
それでというのだ。
「聞かれる方ではないな」
「ですな、どう考えましても」
「あれだけ我が強い方ですと」
「大坂のどなたが言われてもです」
「聞かれる筈がありません」
「到底」
「そうじゃ、おそらく使者の方は納得されるが」
幕府の者達の話を聞いてだ。
「茶々様に言われてもな」
「聞かれぬ」
「どうしてもですか」
「そうなりますか」
「お江の方でも無理か」
茶々の末の妹であり秀忠即ち幕府の将軍の妻である彼女から話してもそれでもというのである。
「妹殿がお話をされても」
「それでもですか」
「なりませぬか」
「特に政のことでは強情な方じゃ」
それが茶々だというのだ。
「他のこと以上にな」
「そしてそのことをですな」
「止められる方がおられぬ」
「どうしても」
「大坂には」
「お江の方は幕府の方であるしな」
それにとだ、幸村はさらに話した。
「上の妹のお初、常高院殿がお話をされても」
「聞かれぬ」
「こと政のことは」
「そうなのですか」
「何もご存知ない、そして何もご存知ないからこそ我を張られる」
それが茶々の政の在り方だというのだ。
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