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ブレザーもまた

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第一章

                    ブレザーもまた
 多嶋瑤子先生は軍隊が大嫌いである。日教組の熱心な組合員だたり尊敬する人はどこぞの国の首領様であり従軍慰安婦はあるといつも言っている位のがちがちの人である。
 だから学校の制服とかについてもこう言う。
「詰襟は陸軍の軍服が元よ!」
「セーラー服は水兵の服なのよ!」
「軍国主義復活反対!」
「どっちもすぐに全廃しなさい!」
「ブレザー!フランスはブレザーじゃない!」
「スウェーデンでもそうよ!」
 こうした人の常だがこの先生もフランスやスウェーデンが好きだ。そして戦争は絶対反対だが何故かどこぞの国のおかしな行進の軍隊はいい。
 先生は通っている学校の制服が高校では今では中々希少となっている黒い詰襟とセーラー服なのに対して憤って言うのだ。
「あんな制服本当に全廃しないと」
「時代に合ってないじゃない」
「もっとリベラルにいかないと」
「女の子に軍国主義は絶対に駄目よ」
 とにかく言う。言うだけ言う。呆れる位に言う。
 だが同僚の先生達も生徒達も先生についてはこう言うのだった。
「幾ら何でも慰安婦は嘘だよ」
 これは生徒達が言う。先生の中にはまだ信じている人間もいたりする。
「強制的に連れて行ったとか有り得ないだろ」
「証言も滅茶苦茶だしな」
「関与っていっても悪質な業者への警告みたいなものだったし」
「大体どっかの嘘吐きとマスコミの意図的な虚報からはじまった話だろ」
「当時吉原とかあったのに何で素人さん引っ張っていくんだよ」
「あれ絶対に嘘だろ」
「慰安婦は作り話だよ」
 生徒達はまず慰安婦、この先生が大好きな話を信じていなかった。そして。
 先生達にしてもいつも女性の権利を言う先生にこう思っていた。
「自分に都合のいい女権だよな」
「女は指導者になりたいとか偉くなりたいとか」
「そんなのばかりだよな」
「結局言いたいことはそれだろ」
「それ以外ないだろ」
 皆先生の実態がわかってきていた。要するにあれな人なのだ。
 そして制服についてもだ。ある朝生活指導で校門に立っていた先生に二年の生徒の一人がこう言ったのである。
「あの、先生いいですか?」
「何かしら」
 はじまりはまずは平和だった。
 生徒は先生の横にいる教頭先生を見て言うのだった。
「教頭先生についてですけれど」
「教頭先生がどうしたの?」
「いつも僕達の詰襟やセーラー服について言いますけれど」
 軍国主義だから全廃しろと言っていることについてだった。
「それじゃあ今の教頭先生も駄目ですよ」
「何でそうなるのかしら」
「だって今教頭先生コート着てますから」
 見れば薄いクリーム色のコートを着ている。生徒達も服なので皆コートやマフラー、手袋で防寒をしている。
「アウトです」
「コートがどうして?」
「トレンチコートですから」
 それでだというのだ。
「だからアウトですよ」
「トレンチコートの何処がアウトなのかしら」
「だって。このコートって塹壕の中で着てたものですから」
 彼は歴史から話した。
「第一次世界大戦は塹壕の中でいてそれでこのコートで寒さや雨を凌いでたんですよ」
「だからっていうの?」
「はい、軍隊の服ですからアウトですよ」
 先生の論理ならそうなるというのだ。
「詰襟とかセーラー服と同じですよ」
「全然違うわよ」
「いや、違わないですから」
「あれは日本の服じゃない」
 先生は怒った顔で詰襟やセーラー服の話をした。
「日本軍国主義よ。それの亡霊だから駄目なのよ」
「亡霊っていいますけれど」
「まだ言うの?」
「あの詰襟はドイツにルーツがありますから」
 生徒はその詰襟の話もした。
「ドイツ軍、プロイセン軍の軍服は詰襟で」
「日本はその影響を受けたっていうのね」
「はい、そうですよ」
 また歴史から話すのだった。
「海軍のセーラーもイギリス軍からですし」
「だからいいっていうのかしら」
「トレンチコートと同じですよ」
 着ているその意味はというのだ。 
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