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狭い世界

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第二章

「それならね」
「そうしたらいいかな」
「受験まではやっぱりね」
「うん、合格したいし」
 学にしてもだ、このことは絶対だ。
「僕もね」
「だったらね」
「まずは受験に専念して」
「それからね」
「何かをだね」
「やってみればいいわ、そりゃ受験漬けだと」
 それこそというのだ。
「ストレスも溜まるし」
「疲れるね」
「そうなるから」
 だからだというのだ。
「もうね」
「終わったらだね」
「はじめればいいわ、大学に入っても」
 それからのことも話した。
「色々とね」
「趣味とかを」
「やればいいから」
「合格したら」
「少なくとも今はね」
「受験のことがあるから」
「仕方ないわ」
 それに専念するしかないというのだ。
「あんたも合格したいでしょ」
「本命だよ」
 八条大学医学部、そこはというのだ。
「本当に」
「だったらよ」
「まずはだね」
「合格することよ」
「話はそれからだね」
「合格して」
 そしてというのだ。
「はじめなさい、まああんた勉強出来るから」
 このことは小学生低学年からだ、学年トップになったことも何度もあり高校でも東大京大に行けるとまで言われてきている。
「必然的に勉強三昧になってるけれど」
「じゃあ成績が悪かったら」
「もっと違ったかも知れないけれど」
「何か成績がいいのが悪いみたいな言い方だね」
「勉強漬けになったって意味ではね」
 今の様にというのだ。
「よくないかもね」
「成績がいいのも良し悪しなんだ」
「そうよ、けれど本当に合格したら」
 それからというのだ。
「後はね」
「趣味をだね」
「見付ければいいし。今趣味ってないでしょ」
「本は読んでるけれど」
「どんな本?」
「授業に出る様な。現国だと太宰治とか」
 教科書や入試に出て来る様な作家をというのだ。
「読んで来たけれど。理系もね」
「そういう読書じゃなくて」
「テストや受験とは離れた」
「そうした本も読んで。最近ずっと机に向かってるでしょ」
「殆どね」
「物凄く狭いじゃない」
 母は学にどうかという顔で返した。
「それこそね」
「狭いかな」
「狭いわよ、必死であっても」
 それでもというのだ。
「狭いわ、机だけの世界なんて」
「狭いから」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「もっともっと広い世界を知るのもいいわよ」
「それじゃあ」
「そう、受験が終わったら」
「色々とだね」
「見て回るといいわ」
 こう息子に言うのだった、そして息子の方も母のその言葉を聞いてだった。それも確かにいいと思ってだ。
 まずはこれが終わらねばどうしようもない受験をクリアーすることに専念した、知識だけでなくコンディションも整えたうえで入試に挑み。 
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