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ブラックウィドー

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第三章

「その牧師と」
「医者だ」
 博士は自分から言った。
「だから安心して欲しい」
「皆さんの為に来ましたので」
「そうなのですか」
 村人達の中から一人の白髪の老人が出て来た。老人は二人にこの村の村長だと話した、それからだった。
 村長は二人にあらためてこう話した。
「既に二十人です」
「それだけ死んでいるんですね」
「本当に何なのか」
 村長は沈みきった顔で二人に話す。
「わからないので」
「そうですよね。けれどです」
「事件を解決してくれるのですね」
「お任せ下さい、私達はその為に来ましたから」
 牧師は人を安心させる穏やかな微笑みで話した。
「是非共」
「わかりました。では」
「ご遺体を見せて下さい」
 牧師からも言う。そしてだった。
 博士は棺の中の子供の死体を見た。死体は傷一つない、だがだった。
 身動き一つしない、牧師は博士と共にその死体を見ながら言った。
「外傷はないですね」
「そうだな。何処にもな」
「何かあまり苦しんでいない感じですし」
 死に顔もそこそこ穏やかだった。
「本当に何でしょうか」
「まさかな」
「まさか?」
「傷はある」
 博士は死体を調べていき左の手首にあるものを見つけた。それはっというと。
 まるで針に刺された様な小さい二つの傷だ、それを見て言うのだった。
「どうやら私の予想通りだな」
「?といいますと」
「もう少し調べたい。だがこの事件は呪いによるものではない」
「違うんですか」
「そして殺人事件でもない」
 その可能性もないというのだ。
「無論吸血鬼の類でもない」
「アメリカにも吸血鬼っているんでしょうか」
「インディアンの伝承にはある様だな」
「そうなんですか」
「とにかく今回の事件は殺人事件でも呪いでもない」
 博士はこのことは確かに言った。
「後は犯人を見つけよう」
「犯人?」
「そうだ。人ではないがな」
「じゃあやっぱ呪いなんじゃ」
「それではないから安心してくれ」
 棺を閉じてもらいながら牧師に話す。葬儀が再開された。
 二人も葬儀に参列する。博士はそれが終わってからあらためて牧師に話した。
「この村は蛇もいない様だな」
「そうですね。どうやら」
 二人は葬儀の後村の中を見回った。荒野から少しいった草原の中にある村で井戸も結構多い。水にも恵まれている様だ。
 村を見回しても蛇はいなかった。だが。
 博士は村中、それこそ家の壁や窓までまじまじと見ていた。その中でこう牧師に言うのだ。
「今回の犯人は人ではないと言ったが」
「ええ、じゃあ加害者ですね」
「とにかく人ではない」
「じゃあ何だって話ですけれど」
「その加害者を探しているが」
「見付かりそうですか?」
「間違いなくいる」
 その加害者はだというのだ。
「この村の中にな」
「いるんですか?」
「間違いなくな。だがだ」
「見つからないですか」
「小さいから見つけにくいのだ」
 博士は見回りながら言う。 
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