八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百三十六話 鍛錬をしてその四
「私はな」
「先輩がそうでしたら私は」
今度は円香さんが自分のことを言ってきた。
「もうそれこそ」
「我が強いというのか」
「そうですが」
「そうなのか、しかし私は実際にだ」
「我がお強いですか」
「相当にな、それでだ」
その我の強さのせいでというのだ。
「観たいと思ってだ」
「我が強いですか」
「そうだ」
本当にというのだ。
「そのせいで観たことがない、我を捨てることはだ」
「難しいと」
「そう思う、何とかして捨てたいと思っているが」
それでもだった。
「その捨てたいと思うこと自体がだ」
「我ですか」
「そうなるな、捨てたいと思う」
その我をだ。
「それ自体が我だ、どうもだ」
「我は捨てようとしてもですね」
「捨てられないのかもな」
そうではないかというのだ。
「そうも思っている」
「ううむ、何か」
「何かとは?」
「難しいことですね」
「人間は難しいか」
「はい」
こう留美さんに答えた。
「我を捨てることは難しい」
「これを欲とも言っていいか」
「仏教の言葉ですね」
「うむ、まさにそれだな」
留美さんも否定せずに円香さんに答えた。
「我、即ち欲を捨てることは難しい」
「妖怪さん達に会うについても」
「会いたい、見たいという欲があるとな」
「かえって会えないのですね」
「そうしたものだ、因果なものだな」
「全くですね、欲があると駄目というのは」
「無欲、それこそ出家する程にならないとだ」
そうでもしなければというのだ。
「普通に妖怪達には会えないのかもな」
「私も妖怪さん達に会いたいと思う時があります」
「そうだな」
「はい、ですがそう思うとですね」
「彼等には会えない」
「それが残念で因果なことですね」
「全くだ、しかしだ」
留美さんは円香さんに確かな言葉で話した。
「そうしたものと考えたうえでだ」
「それでもですね」
「人間欲を捨てるべきなのか、いや」
「いや?」
「欲を捨てるとどうなるか」
留美さんはその場合についても話した。
「果たして」
「それはいいことでは」
「いや、それは確かに難しいが」
欲、我を捨てることはというのだ。
「しかし全て捨てると人間はどうなる」
「人間の欲を」
「誰もがな、それはどうなる」
「そう言われますか」
「便利になりたい、何かをしたい、誰かに会いたい」
そうした全ての欲をというのだ。
「捨て去るとだ」
「そうなりますと」
円香さんも留美さんのその言葉を受けて言った。
「最早それは」
「文明が止まるな」
「進歩も」
「人間の世界全てがな」
「そうですね」
「人間がいるから地球がどうとかは言わない」
留美さんにそうした考えはなかった、今の言葉でそれがわかった。
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