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べとべとさん

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第四章

「これもね」
「これで痴漢撃退しろってのね」
「そちらだったら」
「うん、そうしてね」
「私達警棒持ってるからいいわよ」
「二段の特殊のを持ってます」
 それはいいとした二人だった。
「お父さんとお母さんが持たせてくれてるの」
「いざという時には」
「頭割っても正当防衛だって」
「だから気にするなと」
「そうだったんだ、兄貴達も考えてるんだ」
 自分の兄と義姉に流石は女の子達の親だと思った修だった。
「よかったね、じゃあね」
「それだけ言えばいいのね」
「若しまた出て来たら」
「そう、べとべとさんならね」
 痴漢でなければとだ、こう言ってだった。
 修はとりあえずスタンガンは収めて二人に八時まで手伝ってもらった、そうして二人は八時になると家に帰ったが。
 その帰り道にまたあの足音がした、それで二人で顔を見合わせて頷き合ってからあの言葉を言うとだった。 
 それで音は聞こえなくなった、二人はそのことに驚いてそのうえで次の日修にこのことを言うとだった。
 修は笑ってだ、こう二人に言った。
「あの話本当だったんだ」
「というか叔父さんも信じてなかったの」
「そうだったんですか」
「まさかと思ってたよ」
 こう二人に答えるのだった。
「いや、本当に効くなんてね」
「本当に妖怪だったみたいよ」 
 奈津美は少し睨んだ感じの目で修にこう返した。
「そう言ったら足音消えたから」
「そのことに驚いています」
 結月も言う。
「私もお姉ちゃんも」
「僕もだよ、しかしそれで妖怪が退散したならね」
 それならとも言う修だった。
「よかったね」
「まあ危害は最初から加えるつもりないんでしょ」
「そうした妖怪ですね」
「そうだよ、けれど本当に何もなくてよかったよ」
 のどかな返事であった。
「痴漢とかじゃね」
「まあそれはね」
「本当によかったです」
 二人で言うのだった。
「痴漢なら本気でぶん殴っていました」
「警棒でね」
「その時は容赦しませんでしたから」
「急所攻撃もしていたわよ」
 そして潰すつもりでもあった。
「けれど私達も暴力反対だしね」
「怖くない妖怪でよかったです」
「全くだね、じゃあ今日もね」
 修は姪達にあらためて話した。
「漫画の方宜しくね」
「ええ、アルバイト料宜しくね」
「あとお仕事終わった時は焼肉お願いします」
「難波で食べ放題飲み放題ね」
「梅田のオリンピアでもいいですよ」
 新阪急ホテルのバイキングである。
「宜しくお願いします」
「終わったらね」
「わかってるよ、その時はね」
 気前はいい修だった、そうしてだった。
 修は二人のアシスタントを受けながら仕事をはじめた、姪達も口では何かと言っても仕事自体は真面目に手伝った。妖怪の話があっさり終わったことにほっとしながら。


べとべとさん   完


                 2017・12・28 
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