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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百三十五話 餓鬼その十

「餓鬼が一番嫌だよ」
「全くだな、餓鬼はな」
「色々言われてるよね」
「どれもいいものではない」
 いつも餓えや渇きに苦しんでいるかそれか碌でもないものしか食べられないかだ。そしてお腹の中にも色々な虫がいて苦しめているという。
「到底な」
「そうだよね」
「私は地獄に堕ちたくないがだ」
「餓鬼にはだね」
「地獄以上に嫌だ」
「留美さんもなんだ」
「うむ、とてもだ」
 難しい顔での言葉だった。
「堕ちたくはない」
「そうだよね」
「恐ろしく浅ましい輩がなるというが」
「生まれ変わってだね」
「そうなりたくはない」
「つまり生きている時もね」
 僕は留美さんにさらに話した。
「身を慎まないとね」
「駄目だと思う、だが」
「だが?」
「餓鬼になるまで浅ましい生き方か」
 留美さんは眉を曇らせてこうも言った。
「どうしたものだ」
「どうしたものって」
「どうしてそうした生き方が出来るのか」
「ああ、品性の話なんだ」
「そうだ、恥を知らないと出来るのか」
「まあ普通の嫌われ者だとね」
 嫌われる人は何処でもいる、誰からも嫌われている人がだ。そして本当に嫌われている人が自分が嫌われていることに気付かない。
「幾ら何でもね」
「餓鬼までにはだな」
「ならないよ、精々」
 それこそだ。
「畜生道だね」
「そちらに生まれ変わる程度だな」
「うん、それが餓鬼とかは」
「悪事を犯せば地獄に堕ちるが」
「それでもね」 
「餓鬼道か」
 まさにこの道はだ。
「恐ろしいまでに腐敗した輩はだな」
「堕ちるにしても」
「相当は輩ということだな」
「心の奥底まで腐りきっていて」
「恥を知らず卑劣で醜悪な所業を繰り返せばか」
「なるのかな、餓鬼に」
「そうかもな、一度だ」
 留美さんは端正な剣道着姿で僕にこうも話した。
「教師や先輩に取り入るのが得意でそれを自慢している輩がいたが」
「それはただ性格が悪いんじゃ」
「同級生からは徹底的に嫌われていた」
「そうだよね、やっぱり」
「しかしそうした輩でもだ」
「恥は知っていたんだ」
「まだな、餓鬼道に堕ちるまではな」
 流石にそこまではというのだ。
「なっていなかった、だが一人心当たりがある」
「餓鬼になる様な人が」
「そうだ、上に諂い下をいたぶり」
 さっき話した性格の悪い人どころではなかった。
「少なくとも先程話した嫌われ者は偉そうで説教好きであったがだ」
「弱い者いじめはだね」
「しなかった、だがそいつは弱い者いじめも好きでだ」
 ただするだけでなく、というのだ。
「図々しく人に告げ口やあることないこと吹き込むもともしていた」
「ああ、相当に性格悪いね」
「男だったが男からも女からも嫌われていた」
「それ剣道していた人だね」
「そうだ、だが剣の心なぞだ」
 留美さんは軽蔑しきった目で僕に話した。
「全くなかった」
「それはよくわかるよ」
「卑怯で卑劣だったが」
「そうした奴はだね」
「餓鬼になるだろうか」
「少なくとも碌な奴にならないね」
 このことは絶対だと思った。
「そいつは」
「高校は違うがそう思う」
「高校でも嫌われているだろうね」
「聞いたところ有名な嫌われものらしい」
「ああ、やっぱり」
「高校でもな」
「そいつ僕達の同級生だと思うけれど」
 聞いてそう思った。 
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