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美味い水

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第三章

「わしも中々思いつかなかったわ」
「何でも炭をですね」
「水道水の中に入れてですよね」
「それでカルキを消して」
「それであの味ですね」
「うむ、そうしたのじゃよ」
 まさにというのだ。
「それで味がよくなったのじゃ」
「いや、意外ですね」
「炭はそうしたことにも使えるんですね」
「燃やすのに使うだけでなく」
「水も美味くするんですか」
「そうなのじゃ、わしは魚じゃからな」 
 草魚、この魚だからだというのだ。
「水のことはよく知っておるつもりでな」
「それで、ですか」
「水道局の人達とお話をして」
「そしてですね」
「そうしてもらった」
 水を変えてもらったというのだ。
「よかったわ」
「それでもですか」
「それは当然のこと」
「そう言われますか」
「そうじゃ、わしは大阪二十六戦士じゃ」 
 大阪の街と人々を護る者だというのだ。
「ならばこうしたものもな」
「当然ですか」
「だからお礼もいい」
「そうだというのですね」
「そうじゃ、それはよいわ」
 別にというのだ。
「だからな」
「それでは」
「わし等はこのままですか」
「飲んでいればいいですか」
「水道の水を」
「それを楽しんでくれれば嬉しい」
 草魚としてはだ、こう話してだった。
 草魚は己の棲み処である淀川に飄々とした物腰で帰った、そうして草魚本来の姿に戻って休んだのだった。次に彼が動くべき時に備えて英気を養う為に。


美味い水   完


                2017・12・26 
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