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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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狂った男と意識の中に通る声

 
前書き
三十話突破!!うれしい! 

 
 五十五層のフィールドは植物の少ない荒野地帯で出るモンスターは、ゴブリンやオーク、それにトカゲのようなモンスターと言った感じだ。キリトがさっさと終わらせたいと言うことで速く行こうと主張したがゴドフリーはそれを拒否した。どうせ、筋力値に振りすぎて俊敏力をないがしろにしてるからだろう。俺のように筋力値極振りで一定のバランス感覚と着地のときの衝撃吸収さえ覚えておけば跳ねれるのに。(お前は規格外なだけだby暗黒少年)

 ……なんか、聞こえたような気がするが気にしないで進む。何度かモンスターに遭遇したが俺とキリトはゴドフリーの指揮に従わず全て一撃で切り伏せた。やがて小高い岩山を越えた時、灰色の石造りの迷宮区がその威容を現した。

「よし、ここで一時休憩!!」

 ゴドフリーの野太い声にパーティーメンバー全員立ち止まる。一気に迷宮区を突破したいのだがどうせ聞き入れてもらえないだろうとため息をつき、キリトの隣に腰を降ろす。

「では、食料を配布する」

 ゴドフリーはそう言うと革袋の包みを五つ出し、二つを放ってくる。それを受け取って、まったく期待せずに開けると、中には水とNPCショップの固焼きパン入っていた。

 今日は午前中だけで終わって帰った後にユキとともに料理を作るはずだったため、自分で作った昼食を持ってきてない。こうなるんだったら持って来るべきだったと思い、水の瓶から栓を抜き一口煽る。

 その時、ふと妙な視線がこちらに向いているのに気付く。目だけでそのほうを見るとクラディールは俺らが水を飲むところを見て口の端がわずかだが吊り上るのが見えた。素早く口の中の水を吐く。

 しかし、行動が遅すぎた。吐いた瞬間、力が抜けてその場に崩れ去る。そして俺の上にキリトがかぶさるように倒れてくる。視界の端っこにあるHPバーを確認すると、普段は存在しないグリーンに点滅する枠に囲まれていた。それには見覚えがある。三十九層、俺にとって嫌な出来事でしかない事件のときにも受けた麻痺毒だ。

 ゴドフリーともう一人の団員も同様に麻痺になって動かなくなっている。素早くポーチに手を伸ばして解毒ポーションを探すが生憎今日は持ち合わせてなかった。

「クッ……クックックッ……」

 甲高い笑い声が耳に届く。岩の上でクラディールが両手で自分の体を抱え、全身をよじって笑っていた。

「クハッ!ヒャッ!ヒャハハハハ!!」

 そして、堪えきれないと言うように天を仰いで哄笑する。そんななか、ゴドフリーは呆然とした顔で眺めながら言う。

「ど……どういうことだ……この水を用意したのは……クラディール……お前……」

「速く解毒結晶を使え!!」

「ゴドフリー!!速く!!」

 俺とキリトが叫ぶとゴドフリーはようやく手を動かしてパックを探る。

「ヒャーーーー!!ンなことさせっかよ!!」

 そう言って岩から飛び出してゴドフリーに近づき、結晶を持った左手をブーツで蹴飛ばした。クラディールはそれを拾い上げ、さらにゴドフリーのパックに手を突っ込み、幾つかの結晶を取り出すと全部自分のポーチの中に収納した。

「クラディール……何のつもりだ……?これも何かの…実戦訓練なのか……?」

「バァーーーカ!!」

 まだ事態の把握できていないゴドフリーの口をクラディールのブーツが蹴り飛ばす。

「グハッ!!」

 ゴドフリーのHPがわずかに減少すると同時に、クラディールのカーソルがオレンジ色に変わる。だが、そんなこと今の状況になんの影響も与えない。こんな攻略完了層に都合よく通りかかるものなどいるはず無いのだから。

「ゴドフリーさんよぉ、馬鹿だ馬鹿だと思っていたがあんたは筋金入りの筋肉脳味噌(ノーキン)だなぁ!!」

 クラディールの甲高い声が荒野に響く。

「あんたにも色々言ってやりたいことはあるけどなぁ……オードブルで腹いっぱいになっちまっても困るしよぉ……」

 そう言いながら、腰に携えた両手剣を抜く。痩せた体を精一杯反らせ、大きく振りかぶる。そしてその両手剣は容赦なくゴドフリーに振り下ろされる。

「ま、待てクラディール!お前……何を……何を言ってるんだ……?ク……訓練じゃないのか……?」

「うるせぇ。いいからもう死ねや」

 そう吐き捨てて両手剣を無造作に振り下ろす。鈍い音が響き、ゴドフリーのHPバーが大きく減少する。そしてようやく現状の深刻さに気付いたゴドフリーは、悲鳴を上げるが遅すぎる。二度、三度、振り下ろされ、HPをどんどん削っていく。危険域に突入するとクラディールの動きが止まる。殺すまではさすがにしないのかと思ったのも束の間。両手剣を逆手に握ってそのままゴドフリーの体に突き立てる。HPがじわじわと減少していく。

「ぐあああああ!!」

「ヒャハアアアアア!!」

 一際大きな叫びと被さるようにクラディールも奇声を上げる。剣先がどんどんゴドフリーの体内に食い込み続ける。そして、両手剣が貫通すると同時にHPがゼロになる。そして、ガラスの割れるような音とともにゴドフリーの体はポリゴン片へとなり消えた。クラディールはゴドフリーを刺していた両手剣地面から抜き、もう一人の団員のほうを向く。

「ヒッ!!ヒィッ!!」

 悲鳴を上げながらもがき続ける。そこに奇妙な足取りでクラディールが近づいていく。

「……お前にゃ何の恨みもねえけどな……俺のシナリオだと生存者は俺一人なんだよな……」

 ぼそぼそ呟きながら剣をまた振りかぶり、無造作に振り下ろす。

「ヒィィィィッ!!」

「いいか~?俺たちのパーティーはァー」

 団員の悲鳴を無視して喋りながら剣を打ち下ろす。

「荒野で犯罪者の大群に襲われぇー」

 もう一度。

「勇戦空しく四人死亡ォー」

 さらに、もう一度。

「俺一人になったものの見事犯罪者を撃退して生還しましたァー」

 そう言い終えたと同時に団員のHPが消滅してポリゴン片へと変わる。その中で恍惚な表情で体を痙攣させていた。狂ってやがる。クラディールはとうとう視線をこちらに向けた。その顔は抑えようのない歓喜の色が張り付いている。大剣を引きずりながらゆっくりと近づいてきた。

「よォ」

 仰向けに倒れている俺とキリトの傍らにしゃがんで、ささやくような声で言う。

「おめぇらみたいなガキ二人のためによぉ、関係ない奴を二人も殺しちまったよ」

「その割にはずいぶんとうれしそうじゃねえか」

「たしかに、生まれつきの殺人者みたいだな」

 そう言いながら、何か言い案がないか考える。しかし、キリトが上にいるため腕も動かず、緊急用の短剣が取り出せない。それに背中の間にも手を回せないにため、何も出来ない。せめてもの足掻きで話し続けて麻痺が解けるのを待つ。

「お前みたいな奴はKobよりも犯罪者ギルドに入ったほうがよっぽどお似合いだぜ」 

「そうだな。お前みたいなやつは正規の攻略ギルドとか中層のギルドに入るよりもそういうほうが似合ってるぜ……」

「クッ、決まってんじゃねえか。あの女たちだよ」

「テメェ……!!」

 ユキとアスナということにすぐに気付く。

「貴様……!!」

 キリトも唸る。

「そんなコエェ顔すんなよ。所詮ゲームじゃねえかよ……。心配すんな、おめぇらの大事な姫様達は俺がきっちり面倒見てやるよ。いろいろ便利なアイテムもあることだしな」

 クラディールは気味の悪い笑みを浮かべながら傍らにある毒入り水の瓶を拾いちゃぷちゃぷと鳴らして見せた。

「それによ。おめぇらさっきおもしれー事言ったよな。犯罪者ギルドが似合うとか何とか」

「「事実だろ」」

「褒めてるんだぜぇ。いい眼してるってよ」

 くくく、と喉から甲高い笑いを漏らしながら、クラディールは左のガントレットを除装した。純白のインナーの袖をめくる。露になった腕を見ると奥歯を噛み締める。そこにあったのはタトゥーだ。しかし、それはただのタトゥーではない。ラフィンコフィンと言う最大最凶の殺人者(レッド)ギルド。俺はこの討伐部隊に加わり、自分の手をさらに三人の血で汚した。親友を助けるため一人、愛する人を助けるために二人殺した。親友の手を汚さないためにやったが結局、親友も二人殺し汚してしまった。俺にとってこの戦いは罪をさらに重くしたものである。

「これは……復讐なのか?お前はラフコフの生き残りだったのか?」

 掠れた声で言うキリトに俺が答える。

「ちげうぞ、キリト。こいつはラフコフの生き残りなんかじゃねえ。まだ捕まえてないラフコフのメンバーが勧誘した野郎だ」

「よーく分かってんじゃねえか。この麻痺テクはそん時教わってんだぜ……、と、やべぇやべぇ」

 機械じみた動作で立ち上がって、クラディールは両手剣を握りなおす。

「おしゃべりもこの辺にしねえと毒が切れちまうからな。そろそろ仕上げと行くかァ。デュエルと首に剣を押し当てられて脅されたときから毎晩夢に見てたぜ……この瞬間をな……」

 そう言って見開かれた目には妄執の炎を燃やし、両端を吊り上げた口から長い舌をたらしたクラディールは爪先立ちになって大きく剣を振りかざした。その瞬間、キリトは左手に持っていたピックをクラディールに向かって投げる。しかし、麻痺のせいで狙いが定まらなかったらしく、左腕に突き刺さった。

「……てぇえな……」

 クラディールは鼻筋に皺を寄せ、唇をめくりあげると剣先を俺とキリトの重なっている部分の太ももに剣を突き立てた。

「……がぁああああ!!」

 痛い、痛い、痛い。

 これ以上の痛みを受けたこともあるが痛いもんは痛い。そして、二、三度回転されてさらに痛みが増す。まだ麻痺が解けない。一度太もも辺りに刺された剣が抜かれ、クラディールはキリトの手を持って、キリトの手と俺の足が重なるように置く。そして再び、突きおろされる。

「ガッ……!!」

「どうよ……どうなんだよ……。もうすぐ死ぬってどんな感じだよ……。教えてくれよ……なぁ」

「ツゥ……!!なら、テメェが自分にやって見ればいいじゃねえか。どんな感じか分かるようによ……」

 痛みを堪え、声を出す。

「へぇっ。口のへらねえガキだな!!」

 そう言って回転を加えられる。そのせいで脚の痛みが強くなる。どんどん減っていくHPは安全域の緑から注意域の黄色へと変わる。

「おいおい、他になんか言うことはねえのかよ。ホントに死んじまうぞォ」

 クラディールの剣が俺の脚、キリトの手から抜かれ、重なっている腹を貫かれる。HPが大きく減って危険域の赤へと突入する。俺はこんなトコで死ぬわけにはいかない。ユキのため、誓いのため。クラディールが少しキリトを移動させたお陰で動かせるようになった腕を動かし剣を掴む。

「うおおおおおっ!!」

 そして、痛みを堪えて剣を引き抜こうとする。キリトも剣を掴んで引き抜こうとする。

「お……お?なんだよ、やっぱり死ぬのは怖えぇってのかぁ?」

「そうだ!」

「俺らはなぁ、こんなトコで死ぬわけにはいかねぇんだよ!!」

「カッ!!ヒャヒャッ!!そうかよ、そう来なくちゃな!!」

 クラディールは怪鳥じみた笑い声を洩らしながら、剣に全体重をかけてきた。それを三つの手で支える。しかし、麻痺のせいで力がうまく出せないため、どんどん剣が降下し始める。どんどん意識が遠くなるにつれ、時間が止まったような感じになり、あの声が聞こえてきた。

『よう、俺を使えよ。死にたくねえんだろ。前みたいに勝手に使えないからよ、許可出してくれよ』

 生きれるんならここでこいつに任せればいい、そう思って声を出そうとするが別の声が聞こえてきた。

『こいつの言うこと聞くんじゃねえぞ。今度は意識を狩られて二度とお前の体にもどれなくなるぞ』

 聞いたことのない声が聞こえてくる。

『パス!!何勝手にこっち来てんだよ!!しかも無駄なこと言いやがって!!」

『パス?……お前、ここに出てきてるこいつの仲間か?』

『こいつらの仲間と言っていいが、俺はこいつらの目的には正直興味がねえ』

『けっ!最近出来た野郎がなに言ってやがる』

『最近出来た?どういう意味だ?それにこいつらって言うことは他にもいるのか?それに目的ってなんだ?』

『さあね。それより使うの?使わないの?』

『さっきのパスっていう奴の言う通りなら俺はお前を使わない』

『そのほうがいい』

『チッ!体があったらお前をぶっ殺せるのによ。パス』

『残念だったな。チェンジャー。そんな体は俺らにゃねえよ』

『チェンジャー?交代?』

『じゃあ、俺は帰る』

 そう言ってパスと言う奴の声が聞こえなくなった。

『チッ、どうせ使われないならこっちにいる意味ねえし……。帰るか。おい、ゲツガ、死ぬんじゃねえぞ。死んだら目的が達成できないからな」

『どういう意味だ!目的って何だ!?』

 そう叫ぶがもう何も帰ってこない。そして止まっていたと思ってた時間が動き出す。

「死ねーーー!死ねぇぇぇーーーー!!」

 さっきのことよりも今はこっちのほうが大切。クラディールが刺している剣を引き抜こうとまた必死に力を込める。しかし、どんどん深く突き刺さっていく。そしてもう最後の一ドットのとき、二つの紅白の風が目の前を通り過ぎた。そしてその風は殺人者と俺らに刺さっていた剣ごと吹き飛ばした。

「……間に合った…間に合ったよ……神様……間に合った……」

「よかった……何とか間に合ったよ……」

 震える二つの声のほうを向くと、アスナとユキがいて俺らのほうによってくる。

「……生きてる……生きてるよねキリト君……」

「……ああ……生きてるよ……」

「ゲツガ君……大丈夫……?」

「ああ……何とかな……だけど腹の感覚がもう無えよ……」

 そう言うとアスナとユキは回復結晶を取り出して胸の辺りに当てて、ヒールと叫ぶ。その瞬間、HPバーが満タンになる。そして痛みが無くなる。

「「……まっててね。今終わらせるから……」」

 アスナとユキはそう言ってクラディールに向かって歩き出す。

 向かう先のクラディールはようやく体を起こし、近づいてくる影を見て、両目を見開く。

「あ、アスナ様、ユキ様……どうしてこのような場所に……い、いや、これは、訓練、そう訓練でちょっとした事故が……」

 すごい勢いで立ち上がり、裏返る声で言った言葉は最後まで言えなかった。アスナとユキの剣がクラディールを切り裂く。

「ぶぁっ!!」

 クラディールは片手で口を押さえて仰け反る。一瞬動作を止めた後、俺らのときのような機械仕掛けみたいな動作をしてカクンと戻す。その時、顔には憎悪の色が浮かんでいた。

「このアマども……調子に乗りやがって……。まあ、ちょうどいいやどうせお前らもすぐに殺ってやろうと……」

 アスナとユキは言い終える前にまた、攻撃する。

「お……くぉっ!!」

 応戦するがさすがに2対1になるとなると厳しく防戦一方だ。

「くそぉ!あああああ!!」

 隙を見て両手剣を振るが、その攻撃はユキが全て盾で受け流す。クラディールのHPが見る見る減っていき危険域に突入する。クラディールは剣を投げ出して跪く。

「わ、解った!!わかったよ!!俺が悪かった!!」

 そして土下座をしながら懇願する。

「も、もうギルドは辞める!!あんたらの前にもう二度と現れねぇよ!!だから!!」

 アスナとユキはそれを黙って聞いていた。その後ゆっくりと直剣と細剣を掲げ、カシャリと逆手に持ち換える。そして、クラディールの背中へと突き立てられようとしたが、その瞬間、クラディールは甲高い悲鳴を上げた。

「ひぃぃぃっ!死に、死にたくねえーーー!!」

 剣は何かにぶつかったように止まる。ユキとアスナはこの世界に来て誰一人も殺していない。だからためらいがある。だけど、ユキやアスナの手を汚させたくない。そう思って俺は麻痺の治った体を持ち上げてユキたちのほうに向かう。しかし、その躊躇は奴の狙ったことだった。

「ッヒャアアアアア!!」

 土下座していたクラディールは、いつの間にか握りなおした両手剣でユキとアスナの剣を弾く。そして体勢を崩した二人に向けて両手剣をフルスイングする。その瞬間、俺の横を純白の風が通り過ぎる。キリトはクラディールのフルスイングの両手剣を受け止める。

 そして、その時に受け止めた腕の片方が吹っ飛ぶ。その後にクラディールに向けて体術スキルを使おうとしていた。お前はこれ以上手を汚しちゃいけない。俺はクラディールとキリトの間に入り、キリトの体術スキル、《エンブライザー》を腹に食らう。

「グハァッ!!」

「なっ!……なんで……お前が……」

「キリト……これ以上……お前は……これ以上は……その手を汚すな……」

「だからって何で……何でこんな奴を守ったんだ!!」

「お前の……ためだ……キリト……それに……アスナの……ためにもな……」

「ヒャァァァァ!!何で守ったが知れねえが、お前は道ずれだ!!」

 クラディールが再び剣を構えなおす。その前に剣と背中の間に隠しておいた回廊結晶を触って叫ぶ。

「コリドー……オープン!!」

「なっ……!!」

 俺の後ろで渦が形成される。その穴にクラディールは突っ込むように入っていった。

「あとは……俺に任せておけ……それと……ユキ……後で迎えに来てくれよ……?」

「うん絶対にいくから待ってて」

 そう言って倒れこむように渦の中に入った。 
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