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真剣で納豆な松永兄妹

作者:葛根
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第十章 通り過ぎる日々



さて、2~3日で九十九髪茄子に慣れるはずもなく、川神院でも早朝稽古で相当苦労した。
川神百代との稽古は燕ちゃんが引き受けて俺はやんわりと断りつつ彼女の動きや癖を仔細に観察することにしていた。
この前の日曜、燕ちゃんは川神百代とデートしていたらしい。
俺が家に帰ったと入れ違いに川神百代と、途中で合流した直江大和が帰ったのだ。
運が良いと思う反面、川神百代に対しての策が上手くいっているが、直江大和は余計だったかもと思った。
燕ちゃんが彼に対して本気になることはないと思うが、要注意しておいた。
燕ちゃんは友達以上の男子としては付き合うが、その先はないと断言したので良しとしておこう。



「ぬおっ!」

早朝の川神院での稽古。
基礎稽古の後、必ず川神百代と俺の組み手稽古がある。
九十九髪茄子のせいで、以前より格段に弱くなっているが、技と彼女の癖を掴み始めているので、何とか組み手稽古の形にはなっている。

「何だ久秀。技のキレは良いが圧倒的にパワー不足だぞ」
「技とスピードを鍛えてるんだよ。それに期末考査も近いから激しい稽古はちょっとな」

いい感じで川神百代の気と技が荒々しくなっているお陰で何とか対応できる。
完璧に捉えるとなると後数回は組み手稽古が必要だが。

「む。嫌な単語を……せっかく忘れていたのに」
「忘れるなよ。今日からだろーが」

いつもより軽めに稽古を終える。
ここ数日はこんな感じである。
学生の本分は学業だ。
それを言い訳に、組み手稽古を軽めに抑えることに成功している。
かくいう川神百代も期末考査に対して思う所があるらしく、

「頭のいい奴らの知識を吸収する技とかないかなー」

物騒な事を考えていた。

「うむ。稽古を軽めにしてもらっている分勉強できているから、俺が教えてやろうか?」
「転入したばかりの奴には無理じゃないか?」
「だからこそ、稽古を早めに切り上げてもらってそのぶん勉強してる」
「お姉様、アタシ達姉妹は勉強に関してはかなりやばいから教えて貰った方がいいと思うの」
「あ~、でも、でもなぁ。それだと姉貴分としての威厳が……」
「アタシ達、勉強に関しては元から威厳ないような……」

バッサリと川神百代は妹である川神一子に切られた。

「遠慮はするなよ。こうして稽古付けてもらっている仲だし、嫌と言っても強制的に教えてやるよ。流石に赤点沢山とったら稽古より学業の方優先させられるだろ? 爺さん学長だし」
「むむぅ。助かる。ならお願いしよう」

俺と川神百代のやり取りを見ている川神一子の顔が期末考査どうしようと分かりやすく顔に出ていた。



勉強を教えてみてわかったが、川神百代はやればできる子だった。
時間がなかったので、ポイントだけ抑えて教えたので、平均は取れるはずだ。

「なんだ。やれば出来るんだから普段から予習、復習しておけば、毎回赤点ギリギリじゃなくなるぞ」
「いやー、私は勉強よりも、バトル美少女だから」

川神院の早朝稽古は、テスト期間中早朝勉強会になっていた。
ついでに川神一子の方も面倒を見させられたが、彼女も平均点にギリギリ届くはずである。

「ワタシも見てもらってよかったのかしら?」
「良いよ。復習になるしね」
「美少女2人相手にしてるんだ。役得だろう?」

確かに、川神姉妹は美少女である。
美しさと強さを持つ川神百代と、可愛さと元気を持つ川神一子。
勉強会とはいえ、早朝なので俺達は制服姿だ。
夏の薄着に、川神百代のはちきれんばかりの胸と、スラリと伸びる脚は目に毒。
一方、健康的な身体としなやかな脚と尻のラインが良い川神一子。
スパッツを穿いているとはいえ、スカートの中身は気になるのだ。

「百代は、そのけしからん胸をどうにかしろ。一子の方は、スパッツを穿いているとは言え、スカートのガードが緩い」
「このエロスめ。徐々に変態性を出してきたか」
「あはは。気をつけます」

二人共照れ笑いと言うよりは、苦笑いに近い笑い方だ。
俺と彼女達はだいぶ仲良く慣れた気がする。
しかし、あの大会の結果次第ではどうなることか。
まあ、嫌われるだろう。
それでも、嫌われ役は全て俺が背負うと決めたのだ。
だからこそ、ここには燕ちゃんはいない。



――期末考査の結果が出た。
俺の予想通り、川神姉妹は平均点。
そして、俺はと言うと、

「3位、俺。4位、燕ちゃんか。そう簡単に1位は取れないか……」

ちなみに、2年の方は3位武蔵坊弁慶、6位源義経、9位那須与一だった。
彼等は頭も良いらしい。
気になったのは、直江大和君が34位、椎名京が寄り添うように35位だったことだ。
直江大和君が本気を出せば、10位以内には入れるはずなのだが、例の人脈構成が足を引っ張っているのだろう。
川神百代いわく、人脈作りの方が彼に取っては大事だそうだ。
俺としては、人脈を作りつつ、上位を狙うくらいの事はして欲しいと思う。
少なくとも燕ちゃんとデートしたり、構ってあげている相手なのだから。



嵐の前の静けさ
平穏な日々の終わり
配点:(宣言直前)


 
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