八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百三十五話 餓鬼その三
「あの人は」
「江戸時代はさらに前だがな」
「幕末でも百五十年以上昔だよ」
十九世紀のことだ、もうそれこそ。
「あの人は色々言われてるけれど」
「畑中さんもその人の様になるか」
「なって欲しいね」
僕としてはだ。
「あの博士位長生きして欲しいよ」
「全くだな、私もだ」
「留美さんも?」
「手本にしている」
そうしているというのだ。
「実はな」
「そうなんだね」
「そうだ、しかしだ」
「畑中さんみたいにはだね」
「なれない」
留美さんはこのこともはっきりと言った。
「到底な」
「九十位になってもああして鍛錬をされていて」
「あのお若さだ。しかもだ」
「しかも?」
「あの鍛錬が凄い」
毎朝のそれがというのだ。
「十一キロの木刀を毎日千本二千本だ」
「あの直新陰流の」
「あの鍛錬はとても出来ない」
留美さんは唸って言った。
「腕力も背筋力も必要だ」
「上半身も下半身も相当に強くならないと」
「とても出来はしない」
そうしたものだというのだ。
「足腰も相当でないとな」
「そうだね、普通の素振りでも足腰必要だよね」
「竹刀を振るにもな」
「それを十一キロの木刀で千回二千回って」
「直新陰流独特のだ」
畑中さんが免許皆伝を受けたその流派のだ。
「恐ろしい鍛錬だ」
「やっぱり普通は出来ないよね」
「だから恐ろしいのだ」
「畑中さんも」
「ああした鍛錬を毎日されていれば」
それこそとだ、留美さんは真剣そものの顔で僕にこうも言った。
「あの矍鑠さになるのか」
「まだ五十代に見える」
「そうかも知れない」
「毎日鬼の様あ鍛錬をしてると」
「私にはとても無理だ」
留美さんはまたこう言った。
「あの鍛錬はな」
「留美さんの剣道は」
「私の剣道は普通の剣道だ」
特に流派はないとだ、留美さんは僕に断った。
「ああした古武術になるものではない」
「そうですか」
「うむ、そうだ」
僕に自分の部屋に戻る中で話してくれた、僕も自分の部屋まで行くのでそれまでは一緒だった。食堂からもう一階のロビーに出ていた。
「現代剣道というかだ」
「防具を着けてやるあれだね」
「それだ」
「そっちが普通の剣道だね」
「部活等でしているな」
「そうなんだね、それで畑中さんの剣道は」
その直新陰流はだ。
「古武術になるんだ」
「古流派というかだ」
「江戸時代の剣術で」
「うむ、その荒稽古で有名でだ」
「強いんだね」
「勝海舟は免許皆伝だったが」
その直新陰流のだ。
「怪力だったことは間違いない」
「ああ、あの人頭が切れるだけじゃなくて」
「剣の腕もかなりだった」
「そうだったね、そういえば」
「それは知っているな」
「勝海舟もああした稽古していたんだ」
「それでかなり強かったな」
「喧嘩したら強かっただるうね、いや」
ここで僕はあることを思い出した、その思い出したことはというと。
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