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真剣で納豆な松永兄妹

作者:葛根
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第三章 最近の策士は強くもある



師岡卓也、通称モロ。
髪フェチで、女装が似合う線の細い男だ。

「ほらこれ、京都の各所で貼られてる宣伝ポスターだよ」
「ハム速に"この納豆娘が可愛すぎる"というスレと"この納豆男の娘が可愛すぎる"というスレが立ってたな確か……そこで俺も見た記憶がある。松永久秀はリアル男の娘として有名人だな」
「うおっ可愛いな。これで男かよ。モロと良い勝負だな!」
「ちょっと、僕は関係ないだろ!」

モロは以前売春組織のアジトを突き止める為に女装して売春組織の男を騙したことがあるのだ。
島津岳人はその時のモロを少しだけ気に入っていたのだ。
ともあれ、武士道プランの英傑と共に一週間で複数人の転入生があった川神学園は濃密な人材(戦力)の宝庫となっていた。



川神百代攻略の為に策を用いる。
彼女の舎弟となっている直江大和は男なので燕ちゃんが担当。
俺は、川神百代と親密な関係にある女性陣担当。
彼女の仲間から情報収集だ。
俺がまず狙うのは黛由紀江だ。
黛由紀江は、幻の黛十一段の娘である。その為強者から見た川神百代の情報収集を行う。
また、年下であり、聞く所によると友人が少ないという情報もあって籠絡しやすい相手だと思う。
転校初日の放課後に燕ちゃんと川神百代が稽古として戦って仲良くなっていたので首尾よく事は進んでいると思う。
兄としては妹に仲良くしてくれる友達ができて嬉しい。

――嫌われ役は俺だけで良いと、燕ちゃんの顔を見て考え始めていた。

朝と夕方に俺達兄妹と戦っても余裕の彼女には少し驚くが、多く彼女の戦い方を見れたのは幸運だった。
今の彼女ならば勝算を組立てやすい。
しかし、確実に勝算を組み立てる。その為にもまずは彼女の身内、仲間から攻める。
そして、それとは別に川神学園に溶け込むのも忘れないように動く。
以前グルメネットワークで知り合いになった熊飼満君が良い橋渡しとなってくれた。
彼は食通であり、料理を作るのもうまい。川神野菜だったり、川神の名物を送ってくれていた人物だ。
こちらは松永納豆や京都の名物を送っており、彼の舌にそれらが認められている。
昨日の放課後に彼とそのクラスメイト複数と彼のオススメのお店を紹介されてそこで彼等と仲良くなれた。
川神百代も所属している風間ファミリーという仲良しグループの顔も覚えた。
携帯の連絡先と松永納豆を渡しておいた。

ちなみに、その中に黛由紀江はいなかった。
彼女は、クラスメイトの唯一の友達である大和田伊予と一緒に帰宅していたのだ。



数日後、校内放送で井上準と川神百代がパーソナリティを務める放送で、松永納豆が宣伝された。

「――というわけで、川神院でも松永納豆に切り替えている」

それを校庭でルーと川神鉄心が聞いていた。

「この宣伝放送、百代は松永をとても気に入ってるようですネ」
「武で認めた者が同世代の学友で2人もできなのじゃ。嬉しいじゃろうて」

川神鉄心は松永兄妹から受けた合同稽古を受けるつもりでいる。
基礎訓練だけなら他の流派とも時々行うし、川神流としても刺激になると思っているからだ。

「では松永兄妹から申し込まれている川神との合同稽古はOKをしてもいいですか?」
「基礎訓練だけなら他の流派ともやるし問題ないわい。それにモモも喜ぶじゃろう」

川神百代の相手を出来る強者は少ない。
まともに相手ができるとなると四天王クラスになる。
ここに来て川神百代の相手が出来たのは鉄心に取って好都合だと考えたのだ。
しかし、

「ただのぉ。どーも何かひっかかるんじゃ」
「と言いますト?」
「久秀君には用心した方がええ気がするぞい。燕ちゃんは純粋にモモの友人として稽古に参加したがっているように見えるが……」
「見えるガ?」
「何か、巨大なうねりを感じるんじゃ……、漁師が平穏な海を見て、今日は時化るな……という感覚に似ているかのぅ」

鉄心は松永久秀を一目見てそう感じだのだ。
乱世の梟雄――鉄心の頭の中でこの言葉が思い浮かんだ。
もしかしたら、巨大なうねりは乱世への突入なのかもしれないと余計な事まで考え始めていた。



川神百代に気に入られるのに必要な事は簡単である。
強い。
ただそれだけで良い。
彼女との稽古ではバレないように適切な手加減をする。
稽古を行う度に、徐々に手強くなっていく。
程良く、まだ実力がある事を気付かせる、その上でそれを使わずに手強くなっていく事により彼女に煩わしいという感情を常に植えつける。
痒い所に手が届かない感覚がしばらく続いて、ストレスが溜まる。
ストレス解消先である、彼女の舎弟や仲間はストレスを与えてくる人物の話ばかりしたり、気持ちが傾いていればますます川神百代は罠に足を沈めていく事になる。
人の気持ちや、感情を使うのは良くないが、その怒りの先は俺に集まれば良い。
名前の通り、松永久秀は裏切る。
謀略だろうが、裏切りだろうが、勝てば官軍負ければ賊軍だ。
特に川神市では武士の末裔が多い。
勝った方が、正しい。その考えを肯定してくれる人も多いだろう。



乱世の梟雄
配点:(松永久秀)






 
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