| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

とある3年4組の卑怯者

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

70 旧友

 
前書き
ここまでの試合結果
男子サッカー
5組 0-1 4組
 4組の勝利
1組 6-1 5組
 5組の勝利
女子バレー
4組-3組 2勝1敗で4組の勝利
 1セット目 4組 14-16 3組
 2セット目 3組 10-16 4組
 3セット目 4組 16-14 3組
2組-1組 2勝0敗で1組の勝利
 1セット目 1組 16-7 2組
 2セット目 2組 10-16 1組 

 
 男子サッカー、3組対4組の試合の後半戦が始まった。
(鹿沼君は前半戦は試合に出なかったから、コート全体を見渡して指示を出していたけど、後半戦は試合に出るぞ、どうするんだろう・・・?)
 藤木は鹿沼の行動が気になった。

 4組
 FW(フォワード)
 杉山、ケン太、内藤
 MF(ミッドフィルダー)
 とくぞう、長山、ナベちゃん、ひらば
 DF(ディフェンダー)
 ブー太郎、若林、山田
 GK(ゴールキーパー)
 小杉

 3組
 FW(フォワード)
 鹿沼、杉宮(すぎみや)茎本(くきもと)
 MF(ミッドフィルダー)
 川又(かわまた)蒲谷(かまたに)岩崎(いわさき)
 DF(ディフェンダー)
 吉水(よしみず)木崎(きざき)山辺(やまべ)茂林(しげばやし)
 GK(ゴールキーパー)
 大塚(おおつか)

 4組がキックオフとなった。ケン太がボールを蹴った。その時、コートの外から声が聞こえた。
「ミッドフィルダーもディフェンダーもケン太を徹底的にマークしろ!!」
 呼び掛けているのは前半戦に試合に出ていた草野だった。
(凄い!3組は出場していない人も皆試合に参加している状態になっている!!)
 藤木はそう考えていた。鹿沼は後半戦の司令係を草野に任せていたのだ。マークされたケン太は杉山にパスするが、吉水にインターセプトされ、草野がミッドフィルダーに前方に出るよう指示して、吉水は蒲谷に、そして蒲谷は川又に、そして茎本にパスした。茎本が若林とブー太郎にマークされる。草野が呼び掛けた。
「クキ、後ろの鹿沼に渡せ!」
 茎本は鹿沼にパスした。そして鹿沼がロングシュートを放つ。ところが、キーパーの小杉はしゃがみこんでいた。
「あー、腹減った・・・」
「小杉、何やってんだ!立て!ボール来たぞ!!」
 ベンチの大野が小杉に怒鳴った。しかし、小杉にはボールを止める気力はなく、ゴールを許してしまった。杉山がタイムを取って小杉の元に行った。
「小杉、何やってんだよ!」
「ワリィ、俺腹減って動けなくなっちまってよ・・・」
「しょうがねえなあ、おい、大野、キーパーをはまじか藤木に交代させてくれ!」
「よし、藤木、お前行って来い!」
「え、僕!?」
 藤木は驚いた。
「あー、俺、前半出てたし、お前行ってこいよ!」
 はまじも藤木の背中を押した。
「うん、行ってくるよ!」

 4組 交代
 小杉→藤木
 
 藤木は小杉の代役となった。1組の前半戦でも出場予定でもあったため、そうなると自分は全てのクラスとの対戦で試合に出たことになる。
「よし!」
 藤木はキーパー用のグラブをはめた。そして試合は再開された。自分の陣地にボールがない時は暇に見えるかもしれない。しかし、その時、キーパーもゴールもグラウンドのコートの端に立っている事を藤木は思い出した。端からだと、グラウンド全体が見まわせる。後ろはゴールのみだから後方がどうなっているのか気にすることはない。そうだ、自分もここなら指令が出せるのではないか。だから鹿沼も草野も試合に出ないからこそグラウンド全体が見まわせる位置にいたから指令を出したのだと。そしてケン太のシュートが決まって同点に追いついた。

 3組のキックオフになった。鹿沼がボールを蹴りだした。
「ミッドフィルダーも攻撃に入れ!」
 草野が指示した。藤木ははっと思った。
(そうだ、こっちも指示をださなきゃ!)
「ディフェンダー、全員ペナルティエリアについてくれ!ミッドフィルダーもフォワードもボールを奪うように行ってくれ!!」
 藤木は指示した。皆は驚いたが、大野も皆に叫んだ。
「皆、藤木の言う通りにしろ!」
 全員、藤木の指示に従った。鹿沼がナベちゃんととくぞうに塞がれた。後方へパスしようにも、ケン太、杉山がいる。鹿沼は一か八かで遠くの川又にパスしようとした。しかし、とくぞうにカットされた。
「杉山とケン太に気を付けろ!」
 草野が指示を出したが、とくぞうは内藤にパスした。
「ミッドフィルダーも攻撃に入れ!」
 藤木も同時に指示した。ミッドフィルダーも相手陣地に突入した。内藤はナベちゃんにパスし、そしてひらばにパスした。ひらばがシュートした。しかし、3組のキーパー、大塚は止めた。ボールをを最も近くにいた山辺へキックした。山辺はボールを受け取ったが、長山がボールを奪いに来た。山辺は遠くの方へロングパスした。そのボールは杉宮の方へ飛んで行く。
「皆急いでこっちに戻れ!山田君、杉宮君からボールを渡すな!!」
「アハハハハ~、ボールはどこへ行くのかな?」
 山田は笑いながら杉宮に近づいた。しかし、杉宮は簡単にボールを受け取った。
「アハハハハ、とられちゃったじょ~」
 山田はそれでも笑っていた。ミッドフィルダー達は戻ろうとするが間に合わない。杉宮はシュートを放った。若林もブー太郎も追いつけない。藤木はボールに必死で飛びついた。何とか止めた。藤木は転んでボールを前に落とし、立ち上がってそれを勢いよく蹴った。しかし、蹴り損ねた。もう一度蹴り直した。ボールはとくぞうの方に飛んだ。しかし、蒲谷がスライディングタックルしてボールを弾く。ボールは外に出て、4組のボールとなった。とくぞうがスローイングで杉山に渡す。
「ディフェンダー、杉山をマークだ!」
 木崎と吉水が杉山を徹底マークした。しかし、杉山はケン太にパスした。そしてケン太に見事に渡る。そしてケン太がシュートを放つ。大塚は取れなかった。同点となった。
 そして次も激しいボールの競り合いの中、草野も藤木も必死で指示を出した。そして杉山がシュートを決めた。4組が逆転した。そして今度は4組の陣地にボールが来る。鹿沼が茎本からボールを受け取ってシュートした。あと5秒となった。
(止めるぞ!!)
 藤木は横っ飛びでボールの方向へ向かった。必死でボールを弾いた。ゴールを許さなかった。ボールは外に出たところでホイッスルが鳴った。3-2で4組が勝ったのだ。
「やったぜ!」
「藤木、すげーぞ!!」
 皆が勝利を喜んだ。
「藤木、お前いい指示出したな!」
 杉山が藤木の指示を賞賛した。
「うん、キーパーってボール止めるだけじゃないって思ったんだ。3組は試合に出なくても皆に呼び掛けていたのを見てね」
「でも、キーパーは全体が見まわせるから他の選手に指示をする役目もあるんだ。藤木君、さすがいいキーパーだよ!!」
「ありがとう、ケン太君」
 藤木は大きな活躍ができて嬉しかった。
「おっしゃー!!次は待ちに待った給食だ!!」
 小杉は先ほどの空腹はどこへやら、物凄い勢いで教室へ走って行った、。

 給食の時間になった。各クラスそれぞれの教室に戻った。献立は牛乳にポークカレー、生野菜のサラダにコーンポタージュ、そしてヨーグルトだった。特に空腹で飢えそうな小杉は必死で食べ、カレーを4杯御代わりし、サラダやスープまで御代わりしていた。
「小杉君すごいわね」
 リリィは小杉のいつも以上の食い意地に驚いていた。
「そりゃそうさ。3組との試合で動けなくなって藤木君と交代したくらいなんだからね」
 永沢は嫌味を込めて言った。藤木は「そうなんだよ」と言って苦笑し、リリィもまた苦笑した。

 昼休みになり、リリィは外の空気を吸おうとしていた。長く体育館やにいたため、外に出たくなったのだ。その時、昇降口で友人と共にいる橿田ひろ子の姿を見た。
「あ、あの、すみません・・・」
 リリィは橿田らに声を掛けた。
「君は4組の人ね。何か用?」
「うん、たまちゃんの事なんだけど、たまちゃんとは友達なの?」
 橿田はたまえの名を聞いて唾を呑み込んだ。
「うん、幼稚園の頃はね、そうだったの。ここで話すのもなんだから、外に行こうよ」
「ええ」
 リリィは橿田とその友人と共に校庭のもぐら山に登って腰かけた。
「たまちゃんとは幼稚園にいた時の友達だったんだよ。でも学校に入って違うクラスになって話す機会が減って、一昨年の誕生日会に誘った時、クラスの友達と一緒に楽しもうと思ったけど、途中で抜け出しちゃって・・・。それからたまちゃんは私の事を避けるようになったんだ・・・」
「じゃあ、たまちゃんに対して4組(わたしたち)に負けないって言ったのは?」
「うん、私の事を避けているから、もう少し振り向いて欲しいって威嚇したんだ。それにたまちゃんは私を置いてさくらさんって人と仲良くなってるし、私を嫌っているみたいでね・・・」
「でも、あなたもクラスの友達と仲良さそうじゃない。寂しそうに見えないわ」
「うん、確かにそうだけど、ずっと友達でいたかったのに裏切られたようで・・・」
「そうだったのね・・・」
「で、君はどうしてそれを知りたいの?」
「たまちゃんがあなたに会うと暗い顔するから気になったの、でもたまちゃんは何も言わなくて・・・」
「そうか、何か言えない事があるかもね。それじゃあ、試合でまた会おう」
「ええ、またね」
 橿田とその友人は山遊具から降りた。リリィは昔の友達が離れてしまう寂しさについては橿田とも共感する点はあった。何しろリリィも日本へ引っ越す事になった時、メイベルなどイギリスの友達と別れるのが寂しかった。だが、日本にいる今でも手紙を通してイギリスにいた友達とは連絡を取り合っている。たまえは旧友が自分よりも近くにいるというのになぜ拒絶するのか。

 リリィはそう考えた後、練習のために体育館へと向かった。 
 

 
後書き
次回:「連携(チームプレー)
 女子バレーボール、4組は2組との対戦だった。試合に出られず、観戦する前田はリリィ達の励まし合いを見て自分の過ちに気付く・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧