八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百三十三話 難しい話その十五
「いいな」
「はい、わかりました」
「それじゃあ気をつけて帰れよ」
「それじゃあ」
こう話してだ、そしてだった。
僕は八条荘に帰った、そこで書斎に入って予言の本を探しているとなかった、それでネットで検索しているとだ。
ふと畑中さんが入ってきてだ、僕に聞いてきた。
「ネットをされてますか」
「はい、予言に興味を持ちまして」
「予言ですか」
「ちょっと気になりまして」
「そうですか」
畑中さんはここで僕と傍の席に来てこんなことを言った。
「私は実はここにはキルケゴールを読みに来ました」
「あのデンマークの哲学者の」
「はい」
そうだというのだ。
「読みに来ました」
「そうでしたか」
「少し読みたくなりまして」
「あれかこれかですか」
「はい、その作品です」
確かキルケゴールの代表作だった。
「それを読みに来ました」
「この書斎哲学書もありますね」
「ですから読みに来ました」
「そうでしたか」
「それで参りましたが」
「それで僕とお会いしたんですね」
「そうです」
その通りという返事だった。
「私の場合は」
「ううん、哲学ですか」
「時々読みたくなります」
畑中さんとしてはというのだ。
「人生とは、人間とは何か」
「そうしたことを考える為にですね」
「読みたくなります」
「それで今もですか」
「そう思ってこちらに来ました」
「ちょっと僕は今日裕子さん達と吉本隆明のことをお話しまして」
「あの人ですか」
知っているという返事だった。
「そうですか」
「はい、そこからお話が移って今は予言について調べています」
「ノストラダムス等ですか」
「それです」
まさにその人とだ、僕は畑中さんに答えた。
「その人のことを」
「懐かしいですね」
ノストラダムスと聞いてだ、畑中さんはこう僕に言った。
「二十世紀は流行りました」
「人類が滅亡するとか」
「よく言われました」
「そうらしいですね」
「はい、ですが」
「今はですね」
「もう聞かないですね」
「人類残ってますからね」
今現在こうしてだ、一九九九年七月に滅亡しないで。
「だからですね」
「はい、その本を書いていた作家さんもどうなったか」
「その予言を紹介した」
「果たして」
「それで懐かしいですか」
「そう思いました」
「何か随分外れていたそうで」
先生とのやり取りを思い出しつつ畑中さんに言った。
「実は」
「はい、十年前の予言の本を読むと面白かったです」
「全部外れていたりしてですか」
「そうでした」
「後になってわかりますからね」
「ローマ法皇が死んだり第三次世界大戦が起こったり」
「あと地震とかですね」
「自衛隊のクーデターもありました」
何か富士山の噴火より有り得ない予言もあったらしい、実際富士山は何時噴火してもおかしくないけれど。
「そうしたものも」
「自衛隊がですか」
「ないですね」
「ちょっと以上に」
僕は控えめに答えた、もっと言えば完全な否定を以て。
「有り得ないですね」
「そうですね」
「昔の日本軍ならともかく」
「戦前も一時期だけでした」
「五・一五と二・二六ですね」
「あの時は軍をまとめる人がいませんでした」
陸海軍共にというのだ。
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