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ユキアンのネタ倉庫 ハイスクールD×D

作者:ユキアン
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ハイスクールD×D 革新のリアン5

 
前書き
久しぶりの更新です。
とりあえず、1巻の終盤辺りまで。
 

 

また人外が結界に引っかかったか。いつも通りの手順で警告が行く。それを無視するまでは良い。普通に領地内で暮らしたりする分も良い。勧誘はギリギリだ。それ以上を行おうとした時点で排除して証拠の一切を消し去る。いつも通りだ。

手足の長からの定期報告を読みながらコーヒーを啜る。最近になって懐かしの黒い泥水をようやく発見することが出来て上機嫌なのだ。未だにこんなものが生産されていたとは知らなかった。最近の軍隊でもここまで酷いものは飲まれていないだろう。ボードゲーム同好会でも大不評でオレしか飲まない程だ。オレは前世で慣れ親しんだ味だからこちらのほうが落ち着く。こいつと至近距離からの拳銃を受け止めて砕けないハードビスケットがオレ達のお供だったからな。

切り崩しは進んでいるな。よしよし、証拠もこれだけあれば言い逃れは出来ないな。別件でテレビ局の買収も出来ている。予算が豊富って最高だよな。色々とやりくりで頭を悩ませる必要がないって楽だわ。

計画を更に細かく修正している最中、少し前から領内にいる堕天使の一人が神器持ちに接触したと報告が入った。相手は、三エロの兵藤か。多少、龍の気配も感じられたからな。それに惹かれたか。中忍一人に下忍四人を護衛に当たらせる。それからバラキエルのコネで手に入れたアザゼルへのホットラインをつなぐ。

「久しぶりだな、アザゼル」

『おぅ、リアンか。どうした?』

「オレの管理する地域に不法に滞在する中級1、下級3の堕天使の集団が神器持ちに接触した。場合によっては排除するが構わんな?」

『あ〜、穏便に回収する可能性は?』

「対象は高校生、至って健康体。よほどのことがなければ死ぬのは当分先だな」

『分かった。現行犯でならこっちは文句はない。警告はしてるんだろう?』

「当然だ。おとなしくしていたから放っておいたが、はぐれ神父も揃え始めている。排除は決定事項だが、話を通しておくのが筋だろう」

『そうだな。さっきも言ったが、現行犯でなら文句はない。どう扱ってもかまわない』

「了解した」

通信を切り、手足に伝えておく。前世からの占星術に用いる札を取り出して兵藤の先を大まかに見る。

「戦いの神、命の女神、戦いの女神、恨みの神、妬みの女神、道化の神。中々楽しい結果だな」

英雄の相が出ている。今時の人間には珍しい相だな。だが、道化の神で微妙にぶれているな。場合によっては昔のオレ達のように堕ちるな。禍の団には人間だけで構成された部隊があったはずだ。堕としようはいくらでもあるな。囲い込むか?一旦は保留にしておくか?監視に留め置くか。

一応、ソーナにも伝えておくか。警戒はしてもらわないとな。釣りを行われたらたまらない。







それは一瞬のことだった。夕麻ちゃんがオレに死んでくれとか言って、光の槍のようなものが現れた瞬間、光の槍を握る腕に苦無のようなものが大量に突き刺さり、御札が張られてる鎖分銅のようなものが夕麻ちゃんに巻き付いていき、引きずり倒す。

「堕天使レイナーレ、我らが警告を無視し、あまつさえ一般人に危害を加えようとした貴様の罪は重い」

オレの背後から漫画なんかの忍者じゃなくてちゃんと忍んでいる忍者が姿を表した。よく見れば、鎖分銅の先にも忍者達が居た。

「貴様の処分は主がお決めになる。連れて行け!!」

「「「「はっ!!」」」」

鎖分銅を持っていた忍者とともに夕麻ちゃんが一瞬で消え去る。

「な、なんなんだよアンタ達は!?」

「我らはこの地を管理する主の手足。詳しくは明日、主に直接会って聞け。お前は狙われやすい。奴はそれを狙ってお前に近づいた。それを覚えておけ」

それだけを告げてオレの背後から現れた忍者も一瞬で消えてしまった。夢だったのかと思ったが、血溜まりを見て夢じゃないとはっきり理解させられる。その日は、家に帰ってそのままベッドに倒れ込んだ。翌日も学校には登校したけど、ずっと上の空だった。そして放課後、帰ろうとした所で先生に呼び止められた。

「生徒会から呼び出しだ。調子が悪そうだが大人しく行って来い」

「分かりました」

生徒会室に向かい扉をノックする。

「どうぞ」

「失礼します」

生徒会室に入ると、生徒会長以外に学園では有名な先輩が待っていた。

リアン・グレモリー先輩。紅い長髪を三つ編みにして垂らし、物腰が柔らかく、動作の一つ一つが洗練されていながら、趣味がボードゲームやカードゲームで付き合いやすい。顔も良いし、金持ちだし、ほぼ万能な人だ。欠点らしい欠点は泥水のようなコーヒーをよく愛飲していることぐらいじゃないかと言われている。

「よく来てくれたな。昨日のことをちゃんと受け止めているようだな」

そんな先輩の口から出た言葉に背筋が凍る。

「緊張するなとは言わない。まずは座って、それから君が知りたいことを教えよう」

口調はいつもと変わらない。だけど普段の柔らかさも暖かさもない言葉にただただ静かに従う。

「さて、まずは秘匿されている常識の説明をしておこう。悪魔や天使や堕天使、龍、妖怪、神、そう言った神話なんかや昔話に出て来る存在、それらは全て実在している。まあ、話が盛られているものも数多いがな」

「えっと、新作のボードゲームのサマリーですか?」

「残念だが、今月は宇宙商人物だ。それと現実逃避は良くないな。昨日、オレの手のものが間に入らなければ死んでいたぞ」

そう言ってリアン先輩の右手に黒い靄のような物が集まり、つまみ上げた紙がボロボロに朽ち果てていく。

「見ての通り、オレもこんなことが出来る。とりあえず、事実として受け止めてくれ。話が続けられないからな」

「は、はい」

「では続ける。なぜ命を狙われたのか。それは神器が関わってくる」

「神器?」

「人間だけに備わることがある特殊能力を秘めた道具、それが神器だ。宝くじが当たったとでも思えばいい。殺してでも奪い取られる可能性がある宝くじだがな」

「……ネタですよね?」

「兵藤一誠はねんがんのアイスソードを所持していたのが発覚した」

どこからともかくフリップボードを取り出す。そこには

そう かんけいないね
=>殺してでも うばいとる
ゆずってくれ たのむ!!

「馬鹿をやっていないでちゃんと説明してあげなさい」

生徒会長にツッコミを入れられて渋々フリップボードを先程の紙のようにボロボロにして片付ける。

「一般人相手に説明って難しいんだよな。まあ、冗談でもなく真面目に神器を持つ限り命を狙われる確率が高くなる。駒王の地にいる限りはオレの手のものが護衛につける。陰ながらだがな。急に近づいてくるやつが居たら警戒しろ。初手ぐらいは躱してくれると助かる。ちなみに後2人、昨日の堕天使の仲間が居るからな」

懐から2枚の写真を取り出して見せてくれる。この季節にコートを来て帽子を被っている中年ぐらいの男と青い髪の仕事のできる女の写真だった。

「他にも居たが、昨日の様子を見ていて自首してきてな、中々肝も据わっていて期待できる逸材だった。くくっ、鯱には笑わされたぜ」

「私は何も言えなかったわよ。何よ、鯱って」

「一体何が?」

「自首してきた時にオレの手のものがロープでぐるぐる巻きにしててな、脅しながら最後の言葉ぐらいは聞いてやろうと言ったらちょっとロープを緩めろってな。そんで緩めてやったらうつ伏せの状態で足を上げて鯱ってな。笑わせてもらったよ。殺されるかもしれない雰囲気の場で一発ネタだ。後で聞けば自分が殺される可能性は低いはずで、けど、尋問で精神的に疲労してポカをするぐらいなら先に場を壊してしまえばなんとかなると思ったそうだ。見事に読みきったそいつは街から離れたよ。再就職先を紹介してな」

「就職先?」

「人外でもな、ある程度の知能があると最終的には人間とほぼ変わらない社会構成になるんだよ。更に言えば人間社会よりも厳しい。生まれで殆どが決まる。努力で何とかするやつも居るが、能力の上限を破ることは難しい。下っ端はよほどの運がなければ上には上がれない。上のやつに目を付けてもらえないとな。その一発逆転にアイスソードを」

「そのネタを引っ張るのは止めなさい」

「まあ、宝くじを賄賂に上に上がろうとしてるんだな。覚醒させていなければ遅れを取る可能性は低いから。それでめでたく狙われたってわけだ。オレの管理する土地でよかったな。他の奴の管理地なら死体が一個増えて終わりだ」

「まじですか?」

「まじ。そこだけは運が良かったな」

リアン先輩が笑っているが、目だけは笑っていない。

「さて、危機はまだ去ったわけでもないし、今後も狙われることが確定している。オレもいつまでこの土地を管理しているか分からない」

「私もですね。長くとも、2年か3年というところでしょう」

「そんな、じゃあ、オレはどうしたら」

「いくつかあるが、どれを選ぶかは任せる」

「ほとんど選択肢が無いようにも思えますが、まずは神器を覚醒させるか、させないかでしょうね」

「覚醒させるメリットは物によっては価値が上がり自力で生き残れる確率が増える。デメリットは価値が上がればそれだけ殺してでも」

「奪い取ると。覚醒させない場合は逆でいいんですか?」

「そうなるな。まあ、しょっぱい物が出れば逆に安全にもなるんだが、さっきも言ったとおりアイスソードなんだよな」

「つまり、貴重で強力だと」

「龍の気配が感じられるからな。一番しょっぱいのだと大丈夫だろうけど、覚醒前から龍の気配を感じるから最低でも五大龍の1個下か」

「それってどれぐらいすごいんですか?」

「現在確認されている龍系統の神器が32種、ランクとしては4段階あって一番上のランクの下位は確定。ランクがもう一つ下ならまだ安全だったんだがな。分かりやすく言えば、SR以上確定ガチャを回す感じだな」

「急にしょぼくなった気がするんですけど」

「分かりやすさを優先したからな。とりあえずガチャを回す時間だな」





神器ガチャにスキップ機能を搭載するための魔法陣を敷いてその中に兵藤を立たせる。

「ええっと、どうしろと?」

「準備は既に出来ている。まずは深呼吸、緊張していてもどうにもならんからな。落ち着いたら右手を上げろ。それからゆっくりと下ろす。最後に自分が最も強いと思うものを強く心に思い描け」

本来なら黒歴史も更新しなければならないのだが、術式をオレが更新したためにそこはカットできる。兵藤がオレの指示通りに動き、左腕に籠手が現れると同時に圧倒的な龍の気配に頭を抱える。

龍の籠手(トゥワイス・クリティカル)?」

「SR以上確定でHR下位なんて出るわけ無いだろうが。最悪だな、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)だ」

「よりにもよってURですか」

ソーナが頭を抱える。兵藤がオロオロしているが、こっちがしたい。アザゼルの元に白龍皇がいて戦闘狂の脳筋だと情報は来てるんだよ。こいつら二人共殺して十数年の猶予を得た方が良い気がしてきた。兵藤はまだ説得したり身内に引き込むのが楽だから良い。巨乳の女を宛てがっておけば良いんだからな。調教したレイナーレでも良いぞ。今は色々な薬の実験体になっているから人形みたいな状態で引き渡すことになるだろうが。

「ええっと、結局どういう状態なんですか?」

「アイスソード以外にアルテマウェポンとロトの剣を確定ドロップするレベル1の村人。盗むだけで済んだら一生分の運を使い切ったと言っていいな。基本的にぶんどるしか使えないやつのほうが多いから。ぶっちゃけ処分した方が楽でいいかと思い始めてる」

わざとらしく指を鳴らしながら結界を生徒会室に張る。部活動に励む生徒の声が聞こえなくなり、兵藤が慌て始める。

「言い残すことはあるか?」

右手に魔力を集中させて滅びの魔力を視認させる。急いで扉を開けて逃げようとするが鍵がかかっているように開かないことに諦めたのかオレに向き直る。

「死ぬ時は、でっかいおっぱいに包まれて死にたかった」

「ネタなのか本音なのか分からないのを遺言にするんじゃないの」

精々強めのデコピン程度の威力にまで絞った魔力を飛ばして脅しを終了する。結界は解かない。

「さて、真面目に面倒だな。兵藤、選べる道は2つだ。本当に死ぬか、それとも悪魔に転生して死んだ方がマシだと思える修行をして生き残るか」

「一択にしか聞こえないんですけど」

「ああ、じゃあ、もう一つ、悪魔に転生せずに死んだほうがマシ、むしろ殺せーと叫びたくなるような地獄を通り越した何かをして生き残るかだ。いや、待てよ。むしろショッカーもドン引きするほどの大改造もあるなぁ」

「ひいぃぃ、どんどん酷くなっていってますよ」

「う〜ん、簡単に説明すると種族差のポテンシャルの違いが原因でな。ソーナでも普通にりんごを握りつぶせると言えば分かるか。それで強いかと言われればソーナは後衛だ。後衛の中では力は強い方だが前衛に比べれば大したことではない」

「ちなみにリアン先輩は?」

「後衛寄りだが、別に前衛をやれないことはないし、斥候職もやれる。ゲームで言うと、デバフが充実している魔法剣士が一番近いか?」

「どちらかといえば呪術の使える忍者では?真正面からでも下位職の前衛ぐらいなら完封できるでしょうが。ああ、ちなみに私は攻撃系の魔術師ですよ。あとは護身用に多少ですが剣を扱える程度です。眷属には剣士、拳士、攻撃系魔術師、人狼などですね」

「オレの方はオレの下位互換、剣士、仙術使い、デバフ持ちの後衛だな。それとは別に忍者集団もいる。昨日、見たと思うが彼らだ。ちなみに人間だからな。戦国時代以前から存在している皇室直属だったんだがな。まあ、時代の流れで皇室警護から外され、同じく衰退していた伊賀とか甲賀とか日本全国のそれらが集合したのを金と評価を与えてまとめ買いした」

「まとめ買いって、一体幾らつぎ込んで?」

「うん?そうだな、ざっと3兆程を一括払いだな。安い買い物だったな」

3兆と聞いて兵藤がフラフラとしているが、安いだろう?一定水準以上の能力を持った裏の仕事が出来る組織、構成員は800人ほどで家族を合わせても2000人程の人材を高々3兆ドルで手元におけるんだから。現在も規模は拡大中だしな。

問題はその中に何故かメタトロンが混ざっていたことだ。忍者に興味があって忍者の修行をしていたそうだ。さすがにメタトロンに仕事は任せられないのが、こちらの仕事に干渉しないのを条件に忍者の修行を続けている。予算が潤沢になって修行の質が上がったことに喜んでいたな。

「えっと、悪魔って儲かるんですか?」

「個々人の才能によるな。グレーゾーンを突っ走るのは大得意だ」

伊達に10年以上傭兵旅団を率いていない。

「まあ、眷属だと結構金も地位も名声も得やすいな。力さえあれば」

「最終的には力ですか」

「人間だって変わらないだろう?金か地位かコネで殆どが決まる。野球の勝者はルール整備を行ってそれに従わせている野球協会だろう?」

「あ〜、確かに」

「重犯罪を犯そうが、金を積めば味方になってくれる弁護士がいる。奴らは詐欺師に近いぞ。それに勝つには裁判官を買収するしかない。脅迫でもいいぞ。裁判で一番力を持っているのは裁判官だからな。将を射んと欲すれば将を撃ち殺せだ」

「それって将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、じゃあ?」

「それは力のないやつの発想だ。騎馬で駆けてくる将を射れないから射やすい馬を射ることで落馬させ、そこを討ち取るんだからな。そんなことをするならマシンガンで将も馬も纏めて始末すればいいだろうが。一足飛びでどうにか出来るならどうにかする方がいいに決まっているだろう?まあ、最終的には勝てば良いんだよ。勝ち方にこだわる必要があるなら、また違う手を使うがな」

「話がまたずれてきてますよ。兵藤君、運が悪かったとは思いますが転生して死んだほうがマシだと思える修行を行うのが幸せをつかめる唯一の方法です。その他では途中で楽になりますよ」

「死んで楽になるっていうことですよね、それって!?」

「死んでもすぐなら悪魔に転生させることは出来ます。その後は再び地獄以上の何かを見るでしょうが」

「それだけ厄介だと理解しろ。お前はもうハイリスク・ハイリターンな生き方しか許されなくなった」

「リスクのヤバさは理解できたんですけど、リターンは?」

「そうだな。まず、金に困ることはなくなるだろう。リスクを跳ね除け続ける限りは幾らでも積んでやる。領地も分け与えるし、優秀な代官も用意しよう。特に指示を出さなくても利益だけが懐が入るようにしてやる。それから、ハーレムを作るのが夢だと言っていたな。悪魔の法に背かない範囲、力づくとかは許されないが、それ以外なら大抵が許されるし、強いとモテる。そこは努力次第だ。ああ、奴隷は許されていないが裏道はある。必要なら言えばいい。昨日のレイナーレ、天野夕麻だったか?アレが欲しいと言うなら処理を施した後にやってもいいぞ」

「そんな!?夕麻ちゃんを物扱いなんて!!」

「ああ、既に物ですらないぞ。書類上はもう何処にも存在していない。ドラマや映画で見たことがないか?いつの間にか主人公が死人扱いになっているっていうのを。国に歯向かうっていうのはそういうことなんだよ」

オレとアザゼルはそこまで甘い存在ではない。兄上達なら適当にお茶を濁すだけだろうが、そんなことが許されるほどの余裕はない。

「兵藤。オレは私生活では寛容だ。多少のことで怒りはしないし、適切な罰を与える程度だ。だが、公人のオレは一線を超えたなら躊躇なく排除する。警告を態々与えたのにそれを無視し、オレの治めている領内でテロ行為を行おうとしたんだ。排除一択だな。お前は今、排除か取り込むかの境目に立っている。排除した方が楽だが、その後の処理も若干面倒だなぁと感じている。別にどっちでも良いというのが本音だが、放置だけは決してない。最低でもお前たち三馬鹿相手に裁判を起こして刑務所、未成年だから院になるか、そこにぶち込んででも遠ざけたい。選ばせているのはオレの今の時点での慈悲だ。選ばないというのならサクッと殺す」

「……選択肢がないじゃないですか」

「苦労がしたくないなら死ねばいい。楽に殺してやるし、上手い具合に処理もしてやる。半端ではない苦労を背負えば、享楽にふけることが出来る。分かりやすくていいだろう?」

その日、オレは新たな眷属を得ることとなった。同時に白龍皇を殺す手段として呪具を用意する羽目になった。不意打ちで速攻で殺らねば術者が死ぬ危険な物だが何とかなるだろう。こいつ、前世だと術者殺しで有名なんだけどな。前提条件が多いし、呪殺まで時間がかかるし、有名すぎて解呪方が知られすぎてるのが欠点だが、この世界ならまだ誰にも知られていない。使う機会はそれほどないだろうが、白龍皇を殺すならぴったりだな。白いし。







「え〜、ちょっと待てよ。よし、鉢巻を巻いたワニがトラックに乳製品とメロンとパンを積んでサンタの真似事をやろうとして煙突に引っかかってレスキュー隊に救助された夢を見たような気がしないでもない」

「くっ、パーフェクトですね。よく全部を覚えた上で順番を組み替えて話を作れますね。7問正解していてパーフェクトでプラス2点ですね」

「もっと面倒な暗記物とかも得意だからな。ほい、次はイザイヤの番な」

付けていたアイマスクを外してイザイヤに渡す。

「ええ〜、さすがに僕はそこまで出来ませんよ」

「まあルールだからな。一人一回夢を見る人が回ってくる。3個ぐらいなら覚えきれるだろう」

イザイヤがアイマスクを付けた後に役のカードをシャッフルして参加者に配って役を確定させる。オレの今回の役はブギーマンか。一番面倒なものが回ってきたな。正解と不正解を均等になるように調整する役か。

全員が確認した所で砂時計をひっくり返してイザイヤから時計回りにキーワードのヒントを言っていく。途中で砂時計がエラーを起こしたために再度やり直したために記憶がこんがらがったイザイヤが頭を抱えながら解答したキーワードをつなげて夢を作ろうとするも途中でリタイアした。

「砂時計のエラーでもう無理です。その前後で自分が何を言っていたのかわからなくなりました」

「砂時計のエラーはどうしようもないな。やはり付属品ではなくマイ砂時計を使うか」

部屋の隅にあるサプライボックスから砂時計を取り出す。特注品で1分毎に10分まで計れる砂時計の中から2分用を取り出す。

「ほれ、一誠」

普通の高校生なら絶対に取れない速度で砂時計を投げつけ、それを楽々キャッチする一誠を見て安心する。

「とりあえずの基礎は出来上がったみたいだな」

「この一週間で何回死にかけたことか分からないですから」

「安心しろ。一回も死にかけてないから。あんなのは準備運動だ」

「嘘だ!!一週間でこんなことが出来るようになってる時点で絶対に嘘だ!!」

「普通に学園に通い夕食後から就寝までの間に限定して基礎を仕込んでいる最中だ。それが終わるまでは潰さないようにしてるだろうが。夏休みは冥界の方で集中的に鍛え上げる。前にも話したが、お前の対になる白龍皇は10年鍛えてきている。その10年分をこっちは1年で鍛え上げる。今は地獄の一丁目の前で整理番号を配られてるだけだ」

立ち上がったついでに専用のコーヒーメーカーから泥水をカップに入れる。その隣に置いてあるハードすぎるビスケットも手に取って口に放り込み、噛み砕く。それを見ていたメンバーが驚いている。至近距離で撃たれた拳銃の弾を受け止める硬さのビスケットをふやかさずに噛み砕いているからな。それからテーブルに倒れ込んでいる一誠に人参をぶら下げてやる。

「ああ、そうそう、今週の金曜日の夜から土曜日にかけての予定を開けておけよ。約束通り例の場所に連れて行ってやるよ」

「マジっすか!?」

「この程度のことで嘘なんか言わないさ。持ち物は特に持ってこなくていいぞ。貴重品位だな。ああ、準備運動もその時だけは免除してやる」

「ありがとうございます」

そんな話をしたのが月曜日で、現在は金曜の夜。オレは一誠を連れて冥界へと向かうオレ専用の列車で移動中だ。

「こことここにサイン、こっちにはさっき渡した判子を。サインは冥界の言語で書く必要があるからこれを真似して書いてくれ。このサインだけは練習しておくように」

「これ、何が書いてあるんですか?」

「領地の権限の移譲書。眷属になる前に言っただろう。金は幾らでも積んでやるとな。レートや物価なんかも後で教えてやる。まあ、ドルに近いからなんとか分かるはずだ。このカードのここにサインとこっちの書類のここにサインと血判」

「クレジットカード?」

「冥界の物だがな。領地からの利益が入る口座と使うためのクレジットカードだ。上限はないから好きに使え。よっぽどの買い物、それこそ他の悪魔から領地を買い取ろうとする以外なら大抵のことは出来る。裏の奴隷商館を丸ごと買い上げてみるか?」

「いえ、結構です」

一誠が恐ろしいものを見るようにクレジットカードを見ている。

「ちなみにオレの眷属は全員持っているぞ。面倒事は金で解決できることなら金で解決しろ。冥界用の携帯だ。予め必要そうな相手は入れてある。日本語に対応させてある。操作は変わらない。あと、冥界での屋敷とそれを維持管理する奴隷の契約書、ここにサインな」

「あの、何処まで奴隷ネタを引っ張るんですか?」

「ああ、言い忘れていたがオレの財源の一部は奴隷産業だからだ。まあ、奴隷と言っても幾つかの種類がある。大きく分けると借金奴隷、犯罪奴隷の2種類。借金奴隷の方は強制労働が基本だ。強制と言っても日本のブラック企業よりホワイトな職場だ。そのホワイトな企業もオレがオーナーだ。あと、借金奴隷でも冥界の労働基準法に満たないものは教育を施して専門職として育てている。奴隷と言っているが派遣会社だと思ってくれて構わない。それに対して犯罪奴隷は一誠が思っている奴隷で間違いない。主に娯楽や実験体として引き取られていく。あとは語るまでもないだろう奴隷の割合は30:1程度だな」

「随分と借金奴隷が多いですね」

「これが冥界の現状でな。一般市民が大企業に務めるにはコネが必要になる。コネと聞くと悪いイメージが強いだろうが、推薦入学と聞けば話が変わるだろう。この労働者はこれだけの能力があると私が保証しますよ、と口頭で言うのがコネだ。推薦入学だと書類などが一緒に付いてくる。悪魔でコネを持つのは貴族家に長年務める執事やメイド、御用商人ぐらいな物だ。冥界では貴族の力がなければ絶対に上には上がれない制度になっている」

「まるで中世ですね」

「中世よりはまだましだが、近代とも言い難い。それが500年ほど続いている。信じられるか、これでもマシになったほうなんだぜ」

「なんというか、なんで続いているんですか?」

「簡単だ。冥界の政治でトップは4大魔王なんだが、やる気が無い、能力が無い、政治センスが無い。表向きはどの貴族達も従っているが、実際は裏で好き勝手やっている。しかも、その4大魔王は戦闘力で選出されている。オレの兄はやる気はあるが政治センスが致命的に不足している。ソーナの姉は能力が無いとは言わないが低い。残りの二人はやる気がない。それでも500年程前に起こった大戦期より前よりはマシになっているのが現状だ。中世の暗黒時代を知っているか?アレより酷い状態だったんだぞ」

そこだけは評価できる。だが、そこからが続かない。独自の技術の発展はなく、技術は人間界からの輸入と模倣のみ。その家独自の血統魔術も混血により薄まってすらいるにも関わらずそれに気付いても居ない。むしろ、血が薄いはずの兄上の方が本家のバアル家の誰よりも力が強い時点で察せない時点で未来はない。オレは鍛え上げたから例外だ。

「独自産業もなくなんとかやって行けているのは、人間から巻き上げているからだ。だが、それもいつまで続くことやら。歴史がそれを証明しているんだがな」

「歴史が?」

「神話と言ったほうが正しいか。堕天使が産まれたのは、天使だけが持つ知識や技術を欲した人間がハニトラで堕天させたのが始まりだ。本人が言ってた」

「本人って」

「普通に生きてるぞ、堕天使アザゼル。元から研究者の資質があってな。女体の神秘に触れてそれを追求する内にな。ちなみにまだマシな方でな、SMプレイだったり、レイプだったり、スカトロだったり、結構酷いぞ。今は他にも娯楽が多いからな。ゲーセンに嵌って堕天したり、ケーキバイキングに嵌って堕天したり、競馬に嵌って堕天したり」

「落差が激しすぎませんか!?」

「あまり気にしすぎるとハゲるぞ。書類はこれでOKだな。最後に、右手を出して」

リーダーで一誠の右手を読み込んで登録を終わらせる。

「これでいつでも冥界に転移できる。一度は絶対にこういう列車で冥界に入らないといけないのが欠点なんだよな。ああ、それから、あまり女にハマりすぎるな。死ぬぞ」

最後に釘を差しておく。あまりに酷くなりそうなら地獄の調教も施す。傭兵団でも新人がたまに陥る病のようなものだ。矯正仕方は熟知している。まあ、超一流の相手だ。上手いことコントロールしてくれるだろう。そして前世からの癖で書類を仕上げた後に懐からタバコを取り出そうとして空振って苦笑する。

もう18年も吸っていないのに癖は何時までたっても抜けない。飴でも突っ込んでおこうかと思いながら代わりに逆の内ポケットから護符を取り出し、問題がないかを確認する。やはりというべきか、呪いを扱う相手はほとんど居ないのだろう。自然劣化している分以外は全く問題がない。

専門の使い手がいないことに若干寂しく思いつつ、呪い返し合戦等といった危険な行為をする機会が少なくて済むといったことに嬉しく思う。

列車が冥界のオレの領地に着いた所で書類を持って一誠と共に降りる。そこには既にマリータとその直属で手足から引き抜いたメイドと執事が揃っている。

「お待ちしておりました、リアン様」

「ご苦労。明日香、新しい眷属だ。顔を覚えさせておけ。和弘、一誠を着替えさせてくれ。浩史、書類は揃っているからあとは任せる」

メイドと執事に次々と仕事を振ってこの場から離れさせる。その仕事ぶりを正確に評価し褒美を与える。それが正しく出来る者が居なかったために手足の者たちは燻っていた。

過剰な評価や褒美は害にしかならない。情をかけてはならない。道具として扱い、道具としての評価を与え、道具として処分する。それが出来ない相手とは付き合いを持たずにストイックに生きてきた隠密集団。オレ達傭兵団と同じ生き方をしてきたからこそ扱える逸材だった。全くもって良い買い物だったと改めて思う。

「マリータ、今回は何件だ」

「3件です。材料はすべて手配済みです」

マリータから差し出された『主夫のお供~フレンチ編~』と書かれたレシピ本を速読してから滅びの魔力で消滅させる。見た目はレシピ本で中身も一見普通のレシピに見えるが、実際はこれから密会を行う貴族達の弱みが暗号で書き綴られていた。

「中々の仕事ぶりだ。次はイタリア南部の物を頼む」

これも次のターゲットを示す隠語だ。稚拙なものだが、これだけで悪魔の誰にも気づかれることもない。

「かしこまりました。それから、駒王町にシスターが入ったようです」

「いつも通りで構わないだろう」

「それが、少々厄介と申しますか、『聖女』アーシア・アルジェントなのです」

「何?あの『聖母の微笑』持ちのか?詳細は」

「分かっている時点では教会を追放されたということだけです」

「破門ではないと?」

「はい。どうも、中途半端です。調査のために現地に数人送り込みました」

「最優先で支援しろ。生まれから全てひっくり返せ。罠の危険性もある。護衛に上忍と中忍を追加で付けろ」

「手配しておきます」

出来るだけ密会を早く終わらせる必要があるな。どうしてこう厄介事が降ってくるのか。前世の行いが悪かった所為か?圧制者をよくしばき倒していたけど、その祟りか?お祓いはきっちりやってるんだけどな。ため息を付いて、一誠をVIPとしてオレが経営しているそっち系の店に放り込んでやる。酒と煙草以外は好きにして構わないと店の方には言ってある。あと、どんなプレイをしたのかをこっちに報告させるようにもな。矯正にはこれが一番効くのだ。




 
 

 
後書き
それにしてもアーシアをどうしよう。何故か色々とネタを作ってもアーシアがメインになることがないんだよね。おかしいな?

今年度中に、ナンバリングしているネタをどれか1話更新したいです。
 
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