「――ユミルッ…………お前はっ……ミストユニコーンの《ビーストテイマー》……だったのか……」
俺の引き攣った言葉に、ユミルは大きく瞳を震わせ、歯を食いしばる。
しかし、彼はユニコーンを庇いながら、細かく震える両肩で俺へと大鎌を向け、見上げる体勢のまま言葉を紡がない。
「どうしてだっ……」
俺は声を震わせる。
驚愕でいっぱいだった俺の胸の内には……今はふつふつと、怒りの念が沸いて来ていた。
「……どうして黙っていた!? どうして俺達にっ、そのユニコーンは自分の使い魔である事を話さなかったんだっ!!」
叫ぶ。
そうなのだ。元よりユミルがそう話してさえいれば、これまでの惨状が起きる事もなかったのだ。
それに俺は腹を立てていた。
「そう言ってさえいればっ……お前も、俺も、アスナ達やマーブルさんだって……誰も傷付かずに済んだんだぞ!? 誰一人としてだ!! それなのに……なぜ黙っていたんだ!!」
ユミルは荒く息を続けるだけで、答えない。
その姿がますます俺の心の業火に油を注ぐ。
「答えろユミルッ!! その事を話しても、それでも俺達がユニコーンの恩恵欲しさに、お前の使い魔を殺すとでも思っていたのか!? そんなっ……そんなにも俺達が……信じられないのかっ!?」
「――ああ信じられないねっっ!!」
ユミルはとうとう、俺の
癇癪に引火されたかのように大きく口を開けて叫んだ。
「そうしない保障がどこにあるっ!! なにが『信じられないのか』だよっ!? 信じられないに決まってるだろっ!! 人は口先じゃどうとでも言えるんだっ!!」
彼は喉を引き裂かんばかりに声を荒げ、言葉を俺達に叩きつける。それは最早人というより……獣のそれだった。
「ボクは知っている!! 人間なんて、いつも笑顔で嘘をつく……!! いつでも平気な顔で人を裏切れる……!! そして、どんな時でも醜く争っている……!! そんな……愚かで汚らわしい生き物なんだっ!!」
そして彼は、一際大きく咆哮する。
「人が信じあえる存在だなんてっ……ボクは絶対に認めない!!! 人はっ――」
――それはまるで、この世の真理のように。
「――――人はっ……傷付き、傷つけあう為に生きている!!!!」
………………
…………
……
…
――そう。……あれは、忘れもしない。
ボクと……大切だったあの子との、もう終わってしまった物語。