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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百三十三話 難しい話その八

「愚かであるが故に悲しいですね」
「読んでいて思いました」
「観てもですね」
「この前マクベス上演してましたね」 
 その歌劇場でだ。
「観ていてマクベスは愚かですが」
「夫人に唆されていって」
「多くの人を殺していって最後は自分が討たれる」
「その様子がですね」
「愚かですけれど」
 とはいってもマクベス自身権力欲があって夫人と同じ悪を共有していた、観ていてそのこともつよきう実感した。
「ですがそれでも」
「悲しい」
「人間の業なんでしょうか」
「そうだと思います、シェークスピアは人間を描いています」
 そうした作家だったというのだ。
「それも深く、業を」
「その業をですね」
「だから悲しいのです」
「そういうことですね」
「はい、そして業により罪を犯し」
「破滅するんですね」
「マクベスもオセローもリア王も」
 その愚かな者達だ。
「私もよく読んでいます」
「演じて歌うだけでなくて」
「シェークスピアには真理がありますので」
 だからこそというのだ。
「読んでいます」
「そうですか」
「勉強になります」
 裕子さんは微笑んで僕にこうも話した。
「人生の、そして人間そのものへの」
「勉強ですか」
「それになります」
「人間自体への勉強ですか」
「シェークスピアが書いたものには」
「だからよく読まれてますか」
「そうしています、中学から読んでいますが」
 随分と先からだと思った、僕は高校に入ってから読みはじめた。インテリゲンチャとかじゃなくて読んでいて深いものを感じるからだ。
「偉大な哲学でもあります」
「シェークスピアは」
「そこにあるものが人間であり」
「深く書いているからですね」
「はい、ですから」
 そうしたものだからだというのだ。
「下手な哲学書よりためになります」
「シェークスピアもまた」
「私は音楽、小説、漫画そしてです」
「シェークスピアからもですね」
「素晴しいものを学んでいます」
 そうだというのだ。
「そうしています」
「そうですか」
「やはり吉本隆明よりもです」
「シェークスピアは偉大ですか」
「読んでいてわかりやすいですね」
「凄くわかりやすいです」
 シェークスピアが書いている人間はだ、シニカルで大袈裟な独特のシェークスピア節と言っていい表現で書かれている。
「人間とは何か」
「善悪美醜共にですね」
「わかりやすいです」
「真理は常にわかりやすいものです」
「はっきりとですね」
「一読してわからない様なものはです」
 それはというと。
「真理ではないです」
「読解力がないとかでなくて」
「真理を書いていないのです」
「そういうことですね」
「はい、私はそう思います」
「真理を書いていませんか」
「もっと言えば読んで為になるものではないです」
 そうしたものに過ぎないというのだ。 
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