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DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~

作者:山神
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譲れない

「ストライク!!バッターアウト!!チェンジ!!」

2回の表のUTXの攻撃は初回に続き三者連続三振。初出場校が春の覇者を圧倒するその姿に観客たちはどよめいていた。

「ほら!!声出していくぞ!!」
「「「「「オッケー!!」」」」

静まり返っているベンチに渇を入れフィールドに向かう英玲奈。その後ろからツバサが何やらブツブツいいながらベンチを出る。

「ツバサ」

明らかに様子のおかしいエースを呼び止める。ツバサは振り向き西村の顔を見ると、彼は険しい表情でこう告げた。

「今のお前じゃ、孔明にはなれんぞ」

その言葉にイラッとしたような反応を見せた後、何事もなかったかのようにマウンドへと駆けていく。

「監督、今日のツバサならあの孔明さんだって超えれるかも知れませんよ?」
「無理だな」

まだ守備についていなかったあんじゅが脇からそう反論すると彼は即座に切り捨てる。

「今のツバサには決定的に足りていないものがある。それが補えない限り、孔明に追い付くことはできない」

あまりに真剣な表情で言うものだから彼女は何も言い返すことができなかった。審判に急かされ急いでフィールドに着いたあんじゅはマウンド上の小さな少女を見る。

(今のツバサに足りないもの?何かしら、全然想像できないわ)

厳しい表情で打者と対峙している彼女に何が足りないのか疑問を抱きつつ試合が再開される。打席には全国から4番に入った絵里。

(ここからは三年生が続く。だが、仮に塁に出ても7番の園田さんのケガは万全じゃないだろうし、南さんも小泉さんも高い打力はない。ツバサがストレートを投げたがっているなら、ここはその意思を尊重しよう)

長打もあるが一発はない。ならばとストレートを要求すると、彼女はうなずき足を上げる。

バシッ

「ストライク!!」

130kmのストレート。準決勝までより明らかに球速が上がっており、伸びが関東大会の比ではない。

(このストレートじゃホームランは難しいわね。ここは逆方向を意識していきましょう)

大振りではなくコンパクトにそう意識していたのに、ボールはバットに当たらない。

「こんなに手元で伸びてくるなんて・・・」

異常とも言える速度と伸び。それにマウンド上の敵のエースは表情を変えることなく次の投球に入る。

(上から叩きつけるイメージで!!これで当たらないなら仕方ない!!)

割り切っていくと覚悟を決めての3球目。女子野球最速をまたも更新する134kmのストレートを空振り、三振を喫した。

「にこ、手元ですごい伸びてるわよ」
「見ればわかるわ」

続いて打席に入るにこ。彼女は打席に入ると内野の位置を確認する。

(みんな比較的前めね・・・確かににこは小技が多いから、それを防ぎたいんだろうけど)

それでも突破する方法はある。にこは二塁手の方向を狙い、ツバサの足が着地すると同時にバントの構えを見せる。

(見極めて・・・転がす!!)

プッシュバント・・・相手の球威があるから芯に当てればある程度は飛ぶと予想していたが、なんとそれでさえも空振りに倒れてしまう。

(そんな・・・)

バントでも当たらないストレート。どうすることも出来ずにこも空振り三振に倒れた。

「希」
「了解やん」

希にある指示を出し彼女はそれを受けて打席に入る。

「あれ?希ちゃん?」
「なんで左打席ニャ?」

彼女は本来右打ちのはずなのに、なぜか左打席に今は入っている。

(当たってくれれば儲けもの。今はとにかく突破口がほしい)

普段とは異なる打席にUTXもすぐに気が付いたが、何を狙っているかはわからない。英玲奈はこれまで通りストレートを要求し、投球に入る。

ツバサが足を上げたと同時に希が右足を後ろに引く。それから右足と平行になった左足を前に踏み出すと、放たれたボールを押っつけるように打ちに行く。

「あ!!あかん!!」

ソフトボール特有の打ち方であるスラップ。それを駆使して内野安打を狙いにいった希だったが、ツバサの想像を越えるストレートにあえなく空振り。

「いけるかなと思ったが、無理だったか」

希は中学時代野球をやってた数少ない経験者。そんな彼女なら何とかしてくれるかとも思ったが、いきなりでは難しかったようで結局三振に終わってしまった。

(2回を終えて6三振・・・こりゃあマジで長期戦になるぞ)

両者ともいまだにヒットは愚か前に打球が飛んですらいない。会場が緊張感に包まれている中、マウンドに上がる2人の投手の快刀乱麻は止まらない。

(この回は下位打線だから、スプリット系は温存して・・・)

ストレートとスライダー、ナックル、花陽が当初から保持していた球種を駆使して組み立てる。高い制球力と球速が上がった彼女の投球に、全国屈指の強豪校UTX学園の下位打線は三者連続三振を喫した。

『驚きました!!音ノ木坂学院エース小泉!!春の大会で綺羅が建てた九者連続三振に並びました!!選手権大会では史上初の快挙です!!』

大興奮の実況の声を聞きながらグラウンドに目をやる3人。1人は口を開けて何も話すことができず、1人は目を輝かせ、1人は無表情を貫いていた。

「ダブルスプリットはここまで2球・・・このペースなら最後までいけるな」
「花陽さんにも孔明さんが教えたんですか?」
「あぁ、昨日ツバサと花陽ちゃんに色々聞かれたからな」

投手の質問以外もされたが答えられる範囲では答えたつもりだ。ただ、ここまでの力を見せるとは思っていなかったのは誰にも言わないでおくことにする。

「でもここまでは花陽ちゃんがちょっとリードかな?」
「え?なんでですか?」

正気を取り戻した雪穂が今の言葉の真意を尋ねる。それに彼はニヤッと不敵な笑みを浮かべる。

「ピッチャーの仕事は投げることだけじゃないってことさ」

シニアで投手を務める亜里沙はその言葉の意味をすぐに理解し、雪穂はそれがどういう意味なのかわからずクエスチョンマークを浮かべていた。



















バシッ

「ストライク!!バッターアウト!!スリーアウト!!チェンジ!!」
「す・・・すみません・・・」

わずか5分ほどで終わってしまった攻撃。高めのボール球を振っての三振に倒れた花陽は申し訳なさそうにベンチに帰ってくる。

「大丈夫ですよ、今は投げることに集中してください」
「うん!!ことりたちもごめんね、全然打てなくて」

この回先頭の海未もことりもツバサの速球の前に三振に倒れてしまった。これで彼女も花陽に並ぶ九者連続奪三振。試合は4回表に入っていく。

「ダブルスプリット、高速スプリット、スライダー、コーナーに決まるストレート・・・間違いなく今まで戦ってきた投手の中で一番いい投手だろう」

円陣を組んだUTX。その中心にいる西村はここまでの花陽の投球を見てそう言う。

「だがどうってことはない。ここから二順目だ。基本に立ち返ってセンター返しを心掛けろ。決して捉えられない投手じゃないぞ」
「「「「「はい!!」」」」」

円陣が解けると先頭の英玲奈が打席に向かう。彼女は打席に入り足場を慣らすと、花陽にバットを向ける。

「英玲奈、すごい集中してるわね」
「トップが出てくれなきゃ話にならないっていつも言ってるもんね」

これまで4番を担っていたため、クリンナップの前に走者が出ることがどれだけ重要かよく理解している。

(ここはどんな形でもいい、確実に塁に出る)

気合いが入っているスラッガー。穂乃果はその姿を見て初球ナックルを要求する。
これ英玲奈は打ち気を逸らされた形になり1ストライク。続くボールもナックルだがこれは抜けて1ボール1ストライクとなった。

(ダブルスプリットは多投させないことって言われてるけど・・・)

絶対的な決め球を手に入れたはいいがそれを使うまでに追い込む方法が限られてくる。次なる攻め手をどうするべきか、穂乃果の手が止まった。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
三回は多少ペースが上がった気がします。
四回は少し時間がかかるかも・・・ 
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