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ヘタリア大帝国

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88部分:TURN9 ドクツ動くその三


TURN9 ドクツ動くその三

「トリエステと。先生だ」
「先生も送るのね」
「そうだ。ポッポーランド占領と共に動いてもらう」
 レーティアはギリシアについてもだ。既に戦略計画を発動させていた。
「これで問題はない」
「本当に一気に進めることになるわね」
「しかし東欧と北欧はだ」
「ええ、序章ね」
「そうだ、序章だ」
 まさにだ。それだというレーティアだった。
「大事なのはその後だ」
「オフランスね」
「我がドクツの仇敵、あのオフランスだ」
「あの国には既に平和主義を扇動しているから攻めてはこないわね」
「しかしかなりの軍事力はある」
 これは確かだとだ。レーティアは断言した。
「伊達に大国ではない」
「それにマジノ線ね」
「そうだ。あの守りだ」
「あれがある限りオフランスは難攻不落だけれど」
「しかしだ」
「そうね。私達にはあれがあるわね」
「あの娘は今は動かさない」
 あえてそうするというレーティアだった。
「東欧、北欧ではだ」
「我がドクツの切り札だからこそ」
「切り札は最後まで取っておく」
 静かにだ。レーティアは言った。
「オフランスはそうした相手だからな」
「あの国を破ってこそだからね」
「あの国とエイリスだけは許せない」
 その蒼い目に怒りの炎が宿っていた。それがレーティアの今の目だった。
「何があろうともだ」
「同意よ。同じドクツ国民としてね」
「だが今度は違う。我々は勝つ」
「その為に生きてきたからね」
「私も総統になった」
 己の前に立つグレシアを見上げてだ。レーティアは毅然として言い切った。
「ドクツの為にだ」
「そうよ。思い出すわ」
 ここでだ。グレシアは過去を思い出した。そのことをレーティアにも話すのだった。
「三年前私はね」
「デパートの店員だったな」
「そうよ。しがないね」
「ブティックだったな」
「そうよ。とはいってもそのデパートもね」
 どうだったかとだ。グレシアは辛い目も見せて語った。
「酷い有様だったわ」
「ものがなかったな」
「何もね。なかったわ」
「ドクツには何処にも何もなかった」
「恐慌で経済は完全に破綻して爆発的なインフレーションになって」
「そして着るものにも食べるものにもこと欠く有様だった」
「私もね。何時クビになるかわからなかったわ」
 デパートもだ。閑古鳥が鳴く状態ならそうなるのも当然だった。グレシアも何時仕事を失うかわかったものではなかったのだ。三年前は。
 だがそこでだ。どうなったかというのだ。
「けれど。仕事帰りの街角でね」
「私達は出会ったな」
「あの頃の貴女は見られたものじゃなかったわ」
 少し苦笑いになってだ。グレシアはレーティアに語った。
「何よ。おさげの三つ編みで黒のジャージの上下で」
「わ、悪いか?」
「しかも猫背で丸眼鏡でノーメイクで」
「大事なのは外見ではない」
 レーティアはバツの悪い顔になってグレシアに返す。国民に見せることのない顔で。
「中身だ。違うか」
「それはその通りよ。けれどね」
「それでもか」
「あの時の貴女は論外だったわ」
「そこまで酷かったのか」
「あんな外見じゃ幾ら素晴らしいことを言っても誰にも届かないわ」
 それがだ。三年前のレーティアだったというのだ。
 
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