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シークレットガーデン~小さな箱庭~

作者:猫丸
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  遺体のない葬儀編-終- 

 料理を食べ終わった面々は、ご馳走になったお礼にと洗い終わった食器の手伝いをかってでた。
一宿一飯の恩義は大事なこと。自分達に出来る事ならばなんだってする、それがルシア流の受けた恩の返し方だ。

 楽しく雑談しながら片付ける。楽しいひと時、それはずっと続くもの――だと思っていたのに……ドカ――――――――――――ン!!

「何事!?」

 突如聞こえた僕発音、それを追いかけるように疾風と大地震が襲う。閉じていた窓の硝子は強風で粉々に砕け散り、大地震で棚が倒れ置いてあった獅子の像が崩れ落ちる。逃げようにも立っているのもやっとで思ったように動けない。

「こっちだ!」

 突然腕を掴まれ、テーブルの下へと引きずり込まれた。引っ張ったのはリアのようだ。
暫くの間テーブルの下で地震が治まるのを待った。一分、十分、一時間、経つとやっと揺れが治まり静かになった。

「よかった……ランファとシレーナはっ!?」

 慌てて過ぎて一度ゴツンとテーブルに頭をぶつけ、ルシアは立ち上がり二人を探す。

「ねえ、あれ!!」

 硝子が割れたテラスの方から興奮気味叫ぶランファの声が聞こえる。
入って行ってみるとそこにはシレーナの姿もあった。二人とも怪我などはしていないようだ。
良かった……と胸をなでおろすルシアとは裏腹に

「マジかよ……」
「リアさん?」

 そう吐き捨てると血相を変えて彼は二階にあるテラスから身を乗り出し飛び出して何処かへ向かって走り出した。
後ろから何処へ行くのかと声をかけたが振り返らなかった。一直線に何処かへ向かって行っている。

「……あそこ」

指さす方向を見るとそこは黒煙の煙をあげ轟々と燃え上がる一軒の本屋――来客の予定があるからと残ったリオンの本屋だった。



 普段は誰も近寄ろうともしない負の掃き溜め、裏通りにあるリオンの本屋には沢山の人々が集まっていた。全員面白い物見たさに集まった野次馬たちだ。
雪白の騎士達が鎮火作業に忙しく走り回っていり、目撃者達から何があったのかを聞いたり調査しているようだ。

「放しやがれって!!」

 野次馬や雪白の騎士の声に混じって聞こえてきた声。野次馬の間をくぐって前へ地進んでみると、燃え盛る本屋に突入しそうな勢いで怒鳴り、数名の屈強な雪白の騎士達に取り押さえられているリアの姿だった。

「放せって言っているだろ、クソッ垂れ!!」

 毒づくリアだがその声はドカ――――――――――――ン!! 二度目の爆発音によりかき消されてしまった。

「リオンンンンンンンンンンンンンンン!!!」

 叫ばれた青年の嘆きの声。

 二度目の爆発は集まった野次馬達を大勢巻き込み、多くの重傷者を出したという。マスコミはこぞって押し寄せ我先にとスクープを狙いシャッターを切った。

【海の国で爆破事件発生! 薄汚れ本屋が爆破されたもよう。これは事件か・事故か、ドラゴンネレイド達からの爆破テロか!?】

面白可笑しく着色し事実とはかけ離れた内容が真実として世界中に発信されたそうだ。





                      †


 忌まわしき事件から三日経った。事件を調査していた雪白の騎士団から幼馴染であり家族同然の存在であるリアに事実が突き付けられた。

 真っ暗になる目の前。溢れ止まらない涙。まともに立っている事も出来ない脚は膝を付き崩れ落ちた。

――リオンが死んだ。

 雪白の騎士団が出した答え。今日は仲間内だけでやる厳かな葬式。リオンが帰って来ていないのに葬式を行う。
 鎮火した後、本屋の中に入って見たがそこにあるのは大量にいた猫たちの死骸と、黒猫のケットシーの死骸だけだったという。

 リオンの死体はおろか、彼が集めていた世界各国の著書もまた姿を消していたらしい。
それなのに雪白の騎士達は碌に調べずに病魔に侵され痕が短いと知ったリオンは自らの意思で終わらせようと、爆弾を手に入れ愛する猫たちと心中したのだとリア達に告げた。

 ルシア達がどんなにそんなことありえない、リオンさんは誰かと会う約束をしていたと伝えたのだが

「五月蠅いぞ蠅虫共(はえむしども)が」

 その一言で切り捨てられ相手にもされなかった。
遺体の無い葬式は着々と進みんでゆく、仲間達の声にならない叫びと共に。
何処へ向けるわけでもない怒りと悲しみを抱えたまま遺体の無い葬式は終わりを告げた。






                                    -遺体のない葬儀編-終
 
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