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悪戦苦闘

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第三章

「商いはどうしても」
「ううむ、ではこうするか」
「どうされますか」
「銭が駄目なら他のものをやる」
「そうしてですか」
「獣を狩ってくれたらやるとしてな」
 銭以外のものをというのだ。
「あの者達に狩らせるか」
「そうされますか」
「そう考えたがどうじゃ」
「そうですな、銭が駄目でも人は何かが必要ですね」
「銭以外のものをやってな」
「獣を狩ってもらいますか」
「そうしようぞ」
 こう家臣に言った、それで実際に義重は山に詳しい者を山にやって山の民達に彼の考えを話して畑を荒らす獣達を狩らせようとした、だが。
 その山に詳しい家臣がだ、義重のところに戻って困った顔で話した。
「言葉が通じませぬ」
「言葉がか」
「はい、あの者達は我等とまた言葉が違いまする」
「そうであったか」
「ですから拙者では」
「話が出来なかったか」
「左様でした」 
 こう義重に話すのだった。
「これが」
「ではあの者達の言葉がわかる者を探してか」
「それで話をさせるしかないかと」
「何と、異朝の者達と同じであったとは」
 言葉が違うとはとだ、義重は驚きを隠せない顔で述べた。
「思いも寄らなかったわ」
「拙者もです」
 山に詳しい家臣もそこまでは知らず失態と感じて述べた。
「まさか。ですが」
「山の民の言葉がわかる者達を探してか」
「その者を使えばいいかと」
「わかった、では探せ」
 こうして今度は山の民の言葉がわかる者を探すことになった、そうした者が本当にいるかと思われたが幸い山で暮らすことが多い修験者なり山伏なりでわかり喋られる者達がいて彼等を行かせた。そうして米等の食らうものや刃等暮らしで使うものを狩ってきた獣と交換で渡すということで話がついてだった。
 山の民達は増え過ぎた獣達を狩ってそうして畑を荒らす彼等を減らされることになった。その間に狼を山に入れて自然と獣の数も減らすことにしていったが。
 ここでだ、家臣がまた義重に言ってきた。
「狩った獣ですが」
「あの連中がどうした」
「ただ埋めるだけにしますか」
 山の民達が狩った証拠として引き渡してくるそれをというのだ。
「そうされますか」
「それしかなかろう」
「どうもそれだけでは勿体ないのではということを言う者もいまして」
「そういえばな」
 そう言われてだ、義重も言った。
「かつて武士は狸や猿も食っておった」
「熊や鹿にしても」
「鎌倉幕府の頃はな」
「そうでしたな」
「干したり鍋にしてな」
 そうして食べていたというのだ。
「そして毛皮もな」
「使いますし」
「何なりとな」
「ですから屍をそのまま埋めるだけでは」
「勿体ないか」
「そう言われていますが」
「なら食えばよい」
 義重はこのことについてはこれまで以上にすぐに決めた。
「山の民達が狩ってきたそれをな」
「そうしますか」
「村の百姓達にも食わせろ」
「狸鍋等にしてですな」
「そうじゃ、かちかち山の童話の様にじゃ」
 義重は笑ってこの御伽噺も出した。
「そうしてな」
「食っていきますか」
「そうだ、あの話では老婆が食われたが」
 狸が老婆を殴り殺しその夫である老人に食わせたのだ、そしてこのことの報いとして狸は兎に執拗に騙され攻められ嬲り殺しにされる。 
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