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ワイン漬け

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第二章

「起きている限り」
「今みたいにだね」
「そう、僕はワインに全てを捧げるよ」
「キリストの血にかい」
「赤ワインはキリストの血、そして」
 その赤ワインを飲みっつうこう言った。
「白ワインはキリストの涙」
「その両方を愛していく」
「そして飲んでいくよ」
「そうしてだね」
「生きていくよ、ワイン漬けならそれでいい」
「溺れてもかい」
「君がそう思うならいい、僕は飲むだけさ」
 ここでワインと共に自分の傍に置いていたチョコレートを食べる、甘く味付けされたほろ苦いそれは菓子であるが彼は菓子を楽しむ時も飲むのはワインなのだ。
「こうしてね」
「酒は毒にもなるがね」
 ワインも酒である。
「過ぎれば」
「それでもだよ」
「飲んでいくのかい」
「ワインで死ねるなら本望さ」
「そこまで言うならいいか」
 クレスパンも友の言葉そして考えを受けて述べた。
「君の人生だ、では君のそのワインとの日々を友として見せてもらおう」
「最後の最後まで」
「是非な、それが幸せであることを願っている」
「安心してくれ、僕はワインさえ飲めればだ」
「幸せなのだな」
「如何にも」
 飲みつつ笑って友に答えた。
「今もな」
「そこまで言うのならいいがな」
 クレスパンも彼のワインへの想いは知っていたのでこれ以上は言わなかった、そしてルクランはワインを飲み続けた。
 そうして彼の務めも果たしていたがある日だった、彼の屋敷で夕食後もワインを飲みながら書を読んでいる時にだ。
 不意に倒れそのまま動けなくなった。それで家族も呼ばれクレスパンも駆け付けたが彼は床の中で言った。
「どうやら僕はだ」
「これでだね」
「そうだ、神の御前に向かう」
 死ぬというのだ。
「そうなるだろう」
「まだそう思うのは早いと思うが」
「いや、自分の身体のことだ」
 床の中で言うのだった。
「自分が一番よくわかる」
「だからか」
「そうだ、だから言うのだよ」
「間もなくか」
「神の御前に、それでだが」
「まさかと思うが」
「その時までな」
 まさにというのだ。
「飲もう」
「こうした時もか」
 死の床にあってもとだ、クレスパンはルクランに呆れて返した。クレスパンと共にいるルクランの家族達も同じだった。
「飲むというのか」
「言った筈だ、私はだ」
「ワインを愛している」
「そうだ、君は溺れていると言ったが」
「そう言われてもだな」
「私はワインを飲む」
 そうするというのだ。
「今もな」
「そうか、ではな」
「最後の最後まで飲もう」
 こう言ってその死の床でもだ、ルクランは飲み続けた。赤も白も飲んでいた。その勢いは止まらなかった。
 そして遂にだ、彼は死んだ。その葬儀はつつがなく行われクレスパンは友としてその葬儀に参加した。だが。
 葬儀から暫く経ってだ、彼はルクラン夫人からあることを言われた。 
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