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ヘタリア大帝国

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6部分:TURN1 殿軍その六


TURN1 殿軍その六

「これは生まれつきだ。そもそもこうなったのも司令が」
「参謀、禿げには若布がいいぜ」
 田中はナチュラルにそれを勧めた。
「海草がな」
「だから私は禿げでは」
「あの、それでなのですが」
 またここで言う日本だった。話が進まないので出て来たのだ。
「東郷さんはどりらに」
「あっ、そうでした」
 言われてはっとなる秋山だった。彼もようやく思い出したのだ。
「司令ですね。今お呼びします」
「はい、それではお願いします」
「それでは」
 秋山が日本の言葉に応えて呼ぼうとしたその時にだ。金髪のやや短く刈った髪に微かに顎鬚がある。
 整った若々しい顔に鳶色の見事な輝きを放つ目をしている。口元には余裕のある微笑みがある。
 白い軍服の前から長い紅のマフラーを出している。その彼が出て来て言うのだった。
「ああ、祖国さん何だい?」
「あっ、東郷さん」
「俺に何か用かな」
 その第四艦隊司令官東郷毅が日本に応える。彼こそその東郷なのだ。
「通信を入れてくれるなんて」
「はい、今どうしておられるかと思いまして」
 それで通信を入れたと答える日本だった。
「御元気そうですね」
「ああ、相変わらずさ」
「そうですか。それで御聞きになられたと思いますが」
「我が第四艦隊は予備戦力だな」
「はい、そうなります」
「三個艦隊で攻めてその時が来ればか」
「貴方の第四艦隊が投入されます」
 作戦のことを話してだ。そのうえでだ。
 日本は東郷にだ。こう曇った顔で話したのだった。
「私としては貴方も最初から戦線に出てもらいたいのですが」
「いや、俺はそれでいいと思う」
「予備戦力でいることにですか」
「俺が出ると予備戦力になるのは第三艦隊になるな」
「そうですね。おそらくは」
「第一艦隊は当然としてな」
 戦線に出る。それならばだというのだ。
「祖国さんの第二艦隊は人材も揃ってるしな」
「最初から前線に出るのは必然ですか」
「それじゃあ残るのは第三艦隊しかない」
「ですがあの艦隊は」
「俺も樋口提督のことは知ってるさ」
 東郷はここで眉を顰めさせる。モニターの向こうにいる日本達もそれを見た。
「あまり信用の置ける奴じゃない」
「そうですね。今回の出撃も何か引っ掛かります」
「だからな。あいつを後ろに置くよりはな」
「前線に置いた方がですか」
「いいと思う。それなら予備戦力はだ」
「貴方の第四艦隊ですか」
「そうなる。じゃあ祖国さん達は前線で頑張ってくれ」
 東郷はこう日本にエールを送った。
「俺は然るべき時に参戦するからな」
「わかりました。それでは」
「ああ。またな」
 こうしてだ。東郷は日本に暫しの別れの言葉を告げてだ。そのうえでモニターを切った。するとその瞬間にだ。
 秋山が咎める顔でだ。東郷に言ってきたのだった。
「あの、司令」
「んっ、何だ?」
「祖国様にあの様な口調は」
「ははは、口調の問題じゃないさ」
「そうではないというのですか」
「そう、俺はこう見ても祖国さんは大事に思ってるんだ」
 表情は変わらない。だがそれでもだ。
 その目の輝きは真面目なものでだ。その目でこう言うのだった。
「祖国を愛さない奴はそれだけで何かおかしいだろ」
「他ならない自分の祖国ですからね」
「最近いるな。共有主義者な」
「はい、ソビエトに影響された」
「あの連中は危険だ」
「祖国様も帝も不要と言っていますね」
「貧富の差をなくす、一見して素晴らしい思想だ」
 だがそれでもだとだ。東郷は言うのである。
 
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