とある3年4組の卑怯者
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64 日曜練習
前書き
体育館でバレーボールの練習を行うことになった4組の女子。しかし、前田の強引で怒るのみの態度に皆が反発して喧嘩になり、練習は破綻してしまった!!
設定変更としてリリィのまる子への呼び名を「まる子さん」から「まるちゃん」にします。親しみ深くなったということで・・・。
翌日、藤木は昇降口で笹山と出会った。
「あ、藤木君、おはよう!」
「笹山さん、おはよう」
「昨日の練習どうだった?」
「うん、僕ゴールキーパーやってるんだけど、ケン太君にみっちり特訓してもらったお陰でシュートが取れるようになったんだ」
「へえ、長谷川君サッカー得意だもんね。藤木君も長谷川君に教わればきっと上手くなれるよ」
「あ、ありがとう・・・」
「それに藤木君は背が高いからキーパーに向いてるかもね」
「う、うん!」
藤木は笹山から言われてますますやる気を起こした。
「そうだ、バレーはどうだい?」
「う・・・、こっちは前田さんが怒ってばかりで練習にならなくて・・・」
笹山は暗い表情だった。藤木は嫌なこと思い出させたようで申し訳なく思った。
「ご、ごめん、嫌な思いにさせちゃったかな?」
「え、大丈夫よ。気にしないで」
その時、リリィがまる子、たまえと現れた。
「おはよう、笹山さん、藤木君」
「リリィ、おはよう・・・」
「あ、そうだ笹山さん、私、昨日ママから排球用の球買ってもらったの。今日これで練習しましょうよ!あと日曜に私やまるちゃん達と自主練習しない?」
リリィは網袋に入った新品のボールを笹山に見せた。リリィの母が彼女の為に買ってきた物とはバレーボール用のボールだったのだ。
「え?いいわね!」
「これなら前田さんなしで練習できるねえ!」
まる子が精々するように言った。
「ちょっとまるちゃん・・・」
たまえが嗜めるように言った。
「藤木君も蹴球頑張ってね!」
「え?う、うん、ありがとう・・・」
藤木はリリィに頑張ってねと言われてその場で顔を赤くした。
藤木は教室に入ると、杉山に呼び掛けられた。
「あ、藤木!今ケン太や大野と話し合っていたんだけど、次の日曜に公園でサッカーの練習する事になったんだけどお前もどうだ?」
「練習か・・・」
藤木は参加するかどうか迷った。毎日の練習で体は疲れてはいたものの、リリィや笹山に頑張れと言われたことで活躍したいという気もある。
(もしここで休んだら、練習サボったから卑怯とか言われるよな。こうなったら出よう!)
「うん、参加するよ!」
「よし、お前キーパーとして頼りにしてるぜ!」
杉山はそう言って他の男子にも日曜の練習を促しに行った。
(杉山君も僕を頼りにしてくれているんだ!よし頑張るぞ!!)
藤木は自分の為にも皆の為にも練習を絶対にサボらないと己に誓った。
休み時間、女子の皆はリリィのボールで紅白戦をやっていた。しかし、前田はその場にいなかった。昨日の事での傷が癒えていないのだろうか、教室の窓からその様子を見ていた。なおリリィは前田を誘うつもりだったが、城ヶ崎に止められたため、無視した。
(ふん、何よ、私を仲間外れにして!)
前田は窓から練習の様子を眺めながら理不尽に怒りを表していた。
日曜になり、藤木は杉山に言われた公園に向かった。既にケン太や大野、杉山らがボールの奪い合いの練習をしていた。
「おーい、みんな!」
「やあ、藤木君!君もウォーミングアップ始めてくれよ!」
「うん!」
ケン太に言われて藤木はウォーミングアップをした。やがて、山根や永沢などもやって来た。
「やあ、藤木君。今日も頑張ろう!」
「うん、そうだね!」
「藤木君、君やけにやる気満々だね」
永沢が藤木に驚いていた。
「そりゃ、僕だって大事なキーパーなんだ!練習して上達しないと、皆に迷惑かけてしまうからね!」
「ふうん・・・」
永沢は何かあるなと思っていた。
「それにしても花輪クン遅いなあ」
山根が花輪が気になった。その時、ヒデじいの車が来て、花輪が車から降りてきた。
「Hey、遅くなってすまない、everyone」
「は、花輪・・・!?」
大野は花輪を見て驚いた花輪はサッカーのユニフォームのような服を着ていた。
「ああ、これかい?これはブラジルのsoccer teamのuniformなのさ」
「すげーぜ!」
男子が皆興奮した。そしてサッカー選手になったつもりで練習しようとするのだった。
その頃、別の公園で、女子達がバレーボールの自主練習のために集合していた。その場には、ほぼ女子全員いたが、前田はすぐ怒り、それを指摘されると泣くという面倒な事になってしまうために誰も誘わなかった。その為、この中には前田はいなかった。
「みぎわさん、みぎわさんが学級委員だから皆に指示してもいいかしら?」
リリィがみぎわに指揮を頼んだ。
「え?わかったわ」
みぎわは皆を集合させた。
「これから練習を始めるわよ!まずは輪になってレシーブやトスをしあいましょう!」
みぎわの意見に皆は賛成した。体育館裏ではないので、広々と動くことができ、誰かが失敗しても、前田のように怒らず、「ドンマイ!」と励まし合うので、皆はのびのびとやることができた。一定の時間が経過した後、紅白戦を行い、試合に出ない者は外でボール拾いを行い、時々試合している者とみぎわによって交代した。
サッカーの練習をしている男子は、フォワードはシュートをし、ゴールキーパーはそれをキャッチする練習を、ミッドフィルダーはセンタリングで遠くへパスをし、ディフェンダーがそれをカットするという練習を行っていた。
「いくぜ!」
中島がシュートを放つ。藤木は思いきりジャンプしてボールを止めた。次の内藤のシュートも止めた。しかし、大野の勢いのあるシュートに顔面をぶつけてしまった。
「藤木!大丈夫か!?」
皆が心配して藤木の周りに集まった。藤木は額に手を当てて「だ、大丈夫さ」と言った。
「よし、来い!」
藤木は立ち上がって言った。
「よし、次のシュートで小杉君に替わろう!」
ケン太はそう言って、シュートをした。藤木は右側に突き抜けるボールに渾身で手を伸ばした。しかし、ボールはゴールに突き刺さった。
「ああ・・・」
藤木は最後は止めて終わりたかったのだが、それは叶わず、小杉とキーパーを交代した。
練習が終わり、藤木はケン太に呼ばれた。
「藤木君、君すごく上手くなってるよ!」
「ありがとう。でも最後の君のシュートを取れなかったことが悔しいよ。これじゃあ本郷君のシュート、止められるか心配だよ」
「大丈夫さ、大野君のシュートを顔で止めた程上達しているんだから、また練習を続ければきっとどんなシュートも止められるよ!じゃあな!」
「うん、ありがとう!」
バレーボールの練習をしている女子はみぎわと号令で練習を終わらせたところだった。
「リリィさん、ボールありがとう」
みぎわはボールをリリィに返した。
「うん、そうだ、そろそろ朝練もやりましょうよ」
「そうね。皆、明日から朝練もやろうと思うけどいいかしら?」
皆は賛成した。こうして解散した。
「リリィさんのアタック、凄かったわ」
笹山がリリィのスパイクを賞賛していた。
「そうかな?ありがとう」
「リリィさん、いいアタッカーになれるわよ」
「え?う、うん・・・」
リリィは笹山に褒められてやや照れた。笹山は褒めるのが本当上手だなと心の中で思った。
後書き
次回:「決別」
猛練習のお陰でキーパーとしての腕を上達させてきた藤木。一方、たまえは5組の橿田ひろ子と決別した過去を思い出す・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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