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足のある幽霊

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第二章

「それ位はもう運か看板かな」
「看板といいますと」
「うん、例えば何かがあるとか」
「お店にですか」
「それがあるならいいけれどね、近くに名所があるとか」
「私のお店の周りは」
 千尋は難しい顔で上司に答えた。
「駅前の住宅街で」
「看板は駅だね」
「それを有効に使っているつもりですが」
「もっとね、例えばドームとか」
「京セラドームですか」
「そういうのがあればね」
 それでというのだ。
「君の目標に達するよ、君は前は難波店の店長だったね」
「はい、そうでした」
 前に店長をしていた頃はだ。
「その頃の実績からも考えた目標ですが」
「難波は人が多いから」
 梅田と並ぶ大阪屈指の繁華街だからだ、その為難波はまさに二十四時間人が途絶えることがないのだ。
「あそこ自体が看板だけれどね」
「私の今のお店はですね」
「駅だからね」 
 住宅街にある、だ。
「コンスタントでね」
「目標まではですか」
「そこまではやっぱりね」
 上司の見たところではだ。
「いかないよ」
「そうですか」
「これで充分だよ」
 上司は千尋に確かな声で語った。
「もうね」
「では」
「これでスタッフに負担をかけていないのはいいけれど」 
 営業はあくまでホワイトの千尋だった、自分に対して以外は。
「これでいいよ」
「そうですか」
「あと君自身よく休むことだね」
 抱え込む千尋の気質を知っての言葉だ。
「責任感が強く目標が高いのはいいことだけれど」
「それでもですか」
「よく休むこと、いいね」
「では残業も」
「出来る限りしないことだよ、家でもゆっくりと休んだ」
 こう言って千尋を無理にでも休ませた、千尋も上司が定期健診の診断まで出して過労気味だとまで言われたので従うしかなかった、それで休みも多く取る様にしたが。
 店の売り上げを自分の目標通りしたいとは考えていた、それで自分が深夜勤務に入っている時にアルバイトの大学生の子にこんな話を聞いた。
「何か心霊スポットの近くって人が多いんですよね」
「それ幽霊に身に来てよね」 
 千尋は何故そうした場所に人が多いのかすぐにわかった、深夜で客も殆どおらず今は店も落ち着いている。
「だからよね」
「はい、そのせいで」
「幽霊を見たくて」
「そうでしょうね」
「幽霊なんか見ても」
 こう言った千尋だった。
「仕方ないでしょ、私幽霊は否定しないけれど」
「好き好んで見に行くものじゃないですか」
「それが怨霊だったらどうするのよ」
 見に行く幽霊がというのだ。
「憑かれたりしたら」
「それこそですか」
「大変なことになるわよ」
 取り憑かれてというのだ。
「それこそね」
「そうなったら大変だからですか」
「そうよ、そうした話結構あるでしょ」
「そういえば俺地元福井なんですけれど」 
 大学生は彼の地元の話をしてきた。 
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