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シークレットガーデン~小さな箱庭~

作者:猫丸
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遺体のない葬儀編-1-

夜が明け、朝日が昇ると同時の事だった。

「おっきろーーー!!」
「うわああっ!?」

セットしていた目覚まし時計が無駄となった大きな声で起こされたのは。
耳元で叫ばれたその声に驚き飛び上がるようにして起き上がったルシアは挙動不審に何が起きたのかと右、左、と辺りを見回す。

「にししっ」

すると目の前には悪戯が成功して大喜びしている大きな子供がニヤリと笑みを浮かべていた。

「……ランファ」

諦めた感ある欠伸混じりの声でルシアは犯人の名前を呼んだ。
時計を見ればセットした時間よりも大分早い、とゆうより早すぎると思う。
だがお年寄りとお子様は早起きな生き物なのでしょうがない。

きっと街を見て回るのが楽しみ過ぎて眠れなかったのだろう。
だから普段は起こしに行っても中々起きないくせに、こんな時ばかりルシアを起こしにきたのだろう。そう解釈することにした。

予定していた時間よりも大分早いがもう一度寝る気にもなれないので仕方なく恋しいベットから出て、顔を洗い服を着替え寝室から出ることに。
その間ランファは何が楽しいのか、ずっとニコニコしたままルシアの朝の支度を傍観していた。

寝室を出て皆のリビングルーム的な部屋に来ると

「…………」

まだ日が昇ったばかりだというのに、窓辺近くにある椅子に座り日光の光で静かに読書を楽しんでいるシレーナの姿がそこにはあった。

「おはよう。早いねシレーナ」

そう声をかけると本から一緒だけ視線は外しこくんと頷いた。そしてまた本へと視線は戻った。

シレーナは大の本好きであり読書家だ。
隣町にあるシレーナの部屋には本棚に入りきらない程の本があり、山積みなった本の山が崩れ生き埋めになったことも一度や二度ではない。
その度にジェームズ爺さんに怒られたは本馬鹿は死んでも治らないと言う、何度怒られても本は減るどころか増えて行く一方で、遊びに来たルシアは生き埋めにあい生死を彷徨うのはもういつもの事となって慣れてしまった。
……慣れとは恐ろしいものだ。

「シレーナさんときたら、起きてからずぅーとあんな感じでねっ。
 何をしても話しかけても、全然相手にしてくれなくてつまんなーい!!」

ぷくーと頬を河豚のように膨らんませて怒っている。
そうか相手をしなければいいのか、となんだが納得……とうんうん頷いていると

「ルシアは違うよね!? ね!?」

必死そうに懇願してくる圧に押し負け

「う……うん」

答え頷いてしまった。気付いたも後の祭り。
向日葵が咲いたような嬉しそうな笑顔を見せるランファにやっぱりごめんなどとは言えない。出来るとしたら彼女の頭を優しく撫でてあげるだけか。

助けてよー、気持ちを込めてシレーナの方を見るが

「…………」

読書に夢中の彼女にその心の声は伝わらない。
ああこんな時に意思疎通ができるアイテムなどあったら便利なのに!! なんて思ってみたが此処にはそんな便利アイテムを出してくれる人もロボットもいない。
そもそもそんなアイテムすら存在しない。

とほほ……とため息をつきはしゃぐランファの遊び相手をしていると不意に

「あと……もう少し」

シレーナがぼそりと呟いた。

「本当!?」

嬉しくなってシレーナの方を見るが彼女はまだ本を見つめたまま。
それでもいいや。一人で大きな子供のランファの相手をするよりかはずっと良い。
ランファのことは別に嫌いでも苦手でもないが、インドア派のルシアにはアウトドア派のテンションにただただついていけない、それだけの事でありそれ以上に大事な事。

「まっち、まっち、街探索ー」

よっぽど楽しみなのかルシアの腕を掴み左右に揺らしながらランファは即興ソング[街探索の歌]を楽しそうに歌っている。
なんでルシアの腕を掴んで歌っているのかは分からない。苦笑いしか出来ない。

「あ」

どうせ街探索するならと

「大きな街なんだからきっと、隣町にはなかった大きな本屋さんとかあるんじゃないかな?」

百貨店やら専門店とか……と付け加えて。

「新作との出会い?」

ずっと本に夢中だったシレーナがやっと本から視線を外し、しっかりとルシア達を見た。
その目は爛々(らんらん)とし

「……すぐに犯人……逮捕する」

と、言ってまた本へと視線をうつした。
なんの本を読んでいるのかと少し思っていたが、どうやら刑事か探偵が主人公の推理小説だったようだ。

本屋なんてつまらないとはぶてるランファとまた他愛のない話をしていると、コンコンと軽くドアをノックする音が鳴った。

「えっと。お……おはようございます。朝食がご用意出来ましたのでお持ちした……そうです」

ドアの向こう側から聞こえてくるのはぎこちなきく、そして語尾が変なムラクモの声だ。
普通はいるかどうか聞いてから持ってくるはずの食事を聞く前に持ってきてしまった事への罪悪感と、そもそも持って来たのは自分ではなくおそらく宿の従業員なのに自分が持って来たことにされどう言えばいいのか分からない困惑した気持ちが混じりあった結果の言葉だったのだろう。

「はーい。今開けますね」

ドアを開けてあげるとなこれを僕達が食べても良いんですか? と、聞きたくなる豪華絢爛お食事をのせた台車を押してムラクモが部屋の中へと入って来た。
その顔は浮かない。

「うっひょーい」

先程まで本屋はつまらないから嫌だとかなんだとか散々文句を言っていたランファは目の前に現れた豪勢な朝御飯に舌なめずり。

「いっただきまーす」

止める間もなく席着く間もなく、勢いよく食べ始めたその姿に思わず

「現金な子だなあ」

と、呟くルシアだった。

ランファの事は無視してルシアとシレーナはちゃんとテーブルに食事を並べ席に着いてから美味しく頂いた。
ルシア達が食べている間ムラクモは傍から見ているだけだったが彼女はもう朝御飯を食べてしまったのだろうか? 

じゅるりと(よだれ)を飲み込む音が聞こえるような気がするがそれは気のせいなのだろうか?
やせ我慢をしているようにしか見えないのだが……。

「食べます?」
「い、いえっ私はもう頂いているのでお気になさらず」

軽く断られてしまった。
本当は一緒に食べたかったな、と思ったがきっと彼女にも色々事情があるのだとうと、自分を納得させルシアは初めて見る料理に一喜一憂しながら食事を楽しんだ。


 
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