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白き竜の少年 リメイク前

作者:刃牙
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光の中の闇

ハルマとシリュウの拳がぶつかり合う。二人の力に耐えきれなくなったせいか、拳がぶつかり合う度に砦に亀裂が入る

「大した力です。これは私も出し惜しみしていられない」

シリュウの言葉にアサヒを守りながら体力とチャクラの回復を図っていたレツがカナに指示を出す

「‼︎カナ。あいつの動きを見ていてくれ!」

焦った様子のレツを訝しむカナだったが、素直に従い白眼でシリュウの動きを凝視する

「?分かったわ」

印を結ぶシリュウ。何故かは分からないがハルマは嫌な感覚がした。城に行った時のような邪悪なチャクラが。止めなくては感じ、シリュウに接近しようと試みるが黒い奔流によって先へ行くのを阻害される

「禁呪・邪鬼転身!」

シリュウの上半身の服が裂け、肉体は黒く変色する。頭に生えた一対の禍々しいツノ。今までとは比べ物にならない量と禍々しいチャクラに三人は戦慄を禁じえない

「何・・・・あれ・・・・・・」

カナが絞り出した言葉は皆、思っている事だった。レツの額からは汗が垂れ、ハルマは夜桜を仕舞ってクナイを取り出す。三人の警戒心は最高潮に達している

「あれだ。あれにオレもやられたんだ」

「まずはこんなボロ屋ではない場所に移動しましょうか?」

シリュウが背を向けて、砦の後方に広がる森へ向かう。勿論彼を放っておく筈がない。ハルマとレツはシリュウを追いかけていく

「カナ!お前は姫様を守ってろ!」

「行くぜ‼︎ハルマ!」

「ああ!」

手裏剣とクナイが飛び交う中、三人の戦場は森の中でも拓いた場所に移動しようとしていた

ハルマは印を結び、雷遁を形態変化して生み出した十体の獣を具現化させる。生み出された雷獣たちはシリュウに牙を剥き、迫る

「雷遁・雷獣の宴‼︎」

そしてレツは自身の身体程の大きさがある炎の槍を精製し、放つ

「炎舞・火炎の槍‼︎」

術を使う暇がない程の速さで放たれた二つの術はシリュウに直撃する。爆発を巻き起こし、周囲一帯に広がる煙。木々は爆発の余波で消し飛び、それと同時にレツが爆発に乗じてその場を離れる

煙が晴れ、彼らの攻撃を受けたにも関わらず、傷一つついていなかったシリュウがその場にいた

「鉄の鎧を着ているみたいな硬さだな」

二人の眼が一瞬、交錯した後、シリュウが動き出す

「中々楽しめましたよ。しかし・・・・・・私にはもう勝てない」

シリュウがチャクラを練って何らかの術を使おうとしている事に気付いたハルマが行動を起こそうとした時、身体が凄まじい勢いで吹き飛ばされる。身体は木に衝突したもののダメージは少ない様子だ。ハルマを力で圧倒していくシリュウはその後も追撃を続ける。高等忍術と呼ばれる術がシリュウによって放たれる度、ハルマはそれに匹敵するレベルの術を放ち、相殺しようとするが、中には相殺出来ずくらってしまうものもあった。それでも彼は気後れする事なく立ち向かっていく

「っ・・・・まさかここまで」

夜桜を左手に持つ。接近するとそれに雷遁を纏わせ振り下ろした。シリュウの身体は雷遁でたった数秒の時間だけだが、身体が痺れ、動きを取れなくなった

「痺れさせたところで私には・・・・・・」

「それはどうだろうな?」

幾つかの印を結ぶ。と同時に左手にチャクラが収束し、放電が起きる。チッチッチッという鳥の鳴き声にも似た音を出している

「この技なら効くだろ。カカシさんから教わったとっておきの術だ。暗殺用のな」

「千鳥」

最早、視認することさえ容易にはいかない。常人では千鳥を躱せる速度で動く事も、防ぎきる事も不可能だ

「ぐっ・・・・⁉︎」

動き自体はただの突き。しかし雷の性質変化によって左手は何ものをも貫く名刀と化し、その攻撃を躱すには距離が近過ぎる。高速で迫るハルマを躱す術は今のシリュウには皆無。成す術なく腹部を貫かれるのみだ

「貴様ぁぁあ‼︎」

激昂するシリュウは元の姿に戻る。腹部から溢れ出る夥しい量の血。後退り、よろめくシリュウだが、彼にはまだ立ち上がるだけの力が残っている。術もいくらか使えるかもしれない。

一方でハルマは力を使い果たしたのか地面に倒れ込む。ハルマ自身はチャクラも残り少なく、写輪眼とハクアの衣も消えた。更にシリュウが放った高等忍術をいくつもくらっていてダメージは大きいだろう。不利な状況どころか先程よりも劣勢。しかし、それでもまだハルマは勝利を疑っていないようだ。ただ一点。自身の遥か後方に意識を向けていた

「この私に傷を負わせるとはね。下忍如きにやられたこの屈辱。貴方の死をもって償ってもらいますよ!」

激情のままに口を開くシリュウに、ハルマが小さく笑い声をこぼす

「何がおかしい?」

「切り札晒す時は奥の手くらい隠しておくもんだろ?」

「この状況で一体何を・・・・⁉︎」

そこでシリュウは気付いた。風に乗って僅かに伝わる熱気

「もう遅い・・・・」

そして少し離れた場所で巨大な炎の弓矢を形成し、構えるレツの姿を

「当たる筈がない!あんな距離からなど」

「ただの弓矢ならな・・・・・・だが、あいつは炎を自在に操る。チャクラが切れない限りあれは追いかけて来るぜ?」

この傷ではあれを防ぐだけの力を出せない。シリュウはそう判断したのか、レツがいる地点とは逆の方向に足を向けようとしたその瞬間。冷気が周囲を支配する。腰から下が氷に包まれ、動かせない

「くっ!氷だと⁉︎」

「お前はハクアの氷を破壊して逃げる事は出来ない。そしてあの矢はチャクラを使い過ぎたお前には防げない」

地面に座り込み、そう言うハルマはまるでこの結果を知っていたかのようだ

「まるでこうなる事が分かっていたかのような言い方ですね」

皮肉を込めてそう言ってもハルマは眉ひとつ動かさず、淡々と一つのネタをばらした

この戦いの勝敗を分けた布石。ハルマだからこそ行えたその方法を

「眼を合わせた時、俺はあんたにこう暗示を掛けた。チャクラ切れを起こすまで術を使えと」

写輪眼の力を正確に把握出来ていれば違ったかもしれないが、結果的にハルマがこの戦いを操っていた。あの時。一瞬でもハルマと眼があってしまった時点で勝敗は決していたのだ

「全て俺達の思惑通りだ」

そして、炎の矢がシリュウを焼いた


皮膚が爛れ、地面に這い蹲るシリュウは笑う。レツの放った炎の矢ならシリュウを焼き切る事さえ出来た筈なのにそれをしなかった。二人の甘さをシリュウは感じていた

レツが戻って来る。やりきった表情を見せるレツにハルマは立ち上がり、彼の手を叩く事で応える。

「はは・・・・・・甘いですね・・・・殺さないとは」

「俺達はあくまであんたに勝てれば良かったからな」

「ですが、それではこの世界を生き残れない・・・・この世界は黒く、醜い。綺麗事だけで生きられる程甘くはない」

ハルマはその言葉の意味を理解している。人柱力として人一倍悪意や憎しみといった負の感情を向けられてきたから。だから甘さを捨てなければならない時が来れば、人を殺すだろう。忍として避けては通れぬ道を行く事に迷いはない。だが、ハルマは自分達だけがその甘さを捨て切れていないとは思えなかった。目の前にいるこの男もまた自分達と同じだと、そう思えてならない

「分かってる・・・・けど、それはあんたもだろ?」

「オレ達を殺そうとは思ってなかったんじゃねーの?」

無言を貫くシリュウにハルマは更に問いを続ける

「あんたはどうして、国を恨むんだ?光の国の大名を殺そうとしたのはあんただろ?」

「・・・・・・貴方達に言う必要は無いでしょう。ただ、光の中に潜む闇は強大でそれが私から全てを奪った」

「調べれば色々出て来るでしょうね。ははは」

シリュウの言葉でハルマはこれらの事件は光の国への復讐心によって起きたものなのだと悟った

「あんたも被害者・・・・なのかもな」

それでもシリュウがやった事が許される訳ではない。死人を愚弄する事も、仲間を捨て駒扱いした事も全て許してはならない事だ。しかし、その気持ちをハルマはまるで未来の自分であるような錯覚をする程に分かってしまう

「今回は私の負けです。このままならまた会うでしょう。次も敵として」

最後の力を振り絞り、消えたシリュウと入れ替わるようにしてカナとアサヒがやって来る。彼女達は二人の姿を見ると安堵の表情を浮かべた

「ハル!レツ!」

「敵は?」

「逃げられた。ダイゴは?」

「あっちは捕縛しといたわ」

続けて今頃は上忍が連れて行ってるんじゃないと言うカナにハルマはそうかと一言だけ呟く。ダイゴの持つ写輪眼をどうにかしたいが、自分では話を取り合ってくれないだろう

「(後でリン先生に相談するか)・・・・姫も、無事みたいだな」

「あら?私がいたのにそんな不安だった?」

カナが目を吊り上げて言う。これを肯定したら彼女からの突きが待っていると瞬時に理解したハルマは慌てて首を横に振る。しかしレツは気付く事なくあっさりと地雷を踏む

「そりゃあな!何やらかすか分かんねえし」

「馬鹿だ」

腹部を突かれ、悶絶するレツを呆れた様子で見るハルマにアサヒが礼を述べる

「ありがとうございます」

「ん?」

「私は新しい一歩を踏み出す事が出来ました」

アサヒの言葉にハルマは首を振って否定する。自分達は何もしていないからと

「俺達は何もしてないさ。それは姫自身の力だ」

「そういやよ。光の国のことはどうすんだ?」

「さあな。そんなのは上に任せとけばいい。俺達が出る幕じゃない」

自分達が出来る事はない。そう言うとレツも神妙な顔で頷く

「だな。まっ!とりあえずは帰ろうぜ!」 
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